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心理的安全性と喧嘩上等

前回までエンゲージメントの【5C】のうち【コミュニケーション】に関連して、一番エンゲージメントと相関が高い施策として1on1を紹介しました。

コミュニケーションというと、仲がいいとか、一緒にいて揉め事が少ない、みたいなことを連想される方もいると思いますが、実はその考え方は全くの真逆です。

今日はエンゲージメントを上げるために、チームは揉めることが大切ということをお伝えします。

Googleが仕掛けた「効果的なチーム」の研究

Googleが実際に行った研究で”プロジェクトアリストテレス”という研究をご存知でしょうか。

2012年に行われた研究で、生産性が高く効果的なチーム、1+1が2ではなく3や4などのパフォーマンスを発揮できるチームについてGoogleが大規模に行った有名な調査です。

Googleはご存知の通り、データを扱うのが最も得意な会社でもあります。

彼らの研究によるとチームの会話量、物理的な距離、リソース、能力、など、事前にチームに影響を与えると想定された項目は、「効果的なチームに」は大きな影響がありませんでした。

最も効果があったのは意外な結果

一番大きな影響があった項目こそ、今HR業界で注目されている「心理的安全性」です。

「心理的安全性」とは、そのチームに所属するメンバーが安心して自己表現や意見が言える雰囲気や安心感がチームにある状態を指します。

心理的安全性が高いチームの特徴と率いるリーダーの特徴

心理的安全性が高いチームには弱みや失敗が責められない、自分の不利にならない、からかわれない、拒絶されないなどの信頼がチームにあるため、ミスが迅速に報告されたり、自由闊達なアイデアが役職に関わらず活発に交わされたり、といった特徴があります。

心理的安全性をチームにもたらすには、そのチームのリーダーの言動や姿勢が大きな影響を与えることがわかっており、心理的安全性をもたらすにリーダーは率直に自身の弱みや失敗を見せることがわかっています。

リーダー自身が自身の失敗を報告することにためらいがなく、他人の失敗に寛容で改善に前向きな姿勢をとると、メンバーも自分の失敗を隠さなくなるという影響があるのでしょう。

毎回テストで悪い点を取るたびにお母さんが怒鳴ると、子供はテストがあったことを隠すようになります。寛容さが大事ということですね。

弱いリーダーが人を惹きつける理由

ところで、なぜ、弱みを見せるリーダーに、メンバーはついていくのでしょう。一般的にリーダーは強くなければいけないと言われています。

実は、多くの研究で人間は「能力」と「温かみ」の2つで他人を査定することがわかっていて、知らない人に対して、まず温かみがある人かどうかを吟味し、次に能力がある人どうか、という順番で他人を判断します。

リーダーが弱みを見せるリスクを取ることでチームに温かみが生まれるということです。

あたたかみは安心感や信頼につながり、チームは心理的安全性に満たされます。


人は強みで尊敬され、弱みで愛されるものです。


つけ入る隙のない強い人よりも、適度に強みを見せ、適度に弱みも見せる、両面を隠さず生きる人に人は惹かれるのです。

心理的安全性の誤解と落とし穴

この心理的安全性ですが、多くの人が、特に人事部の方やHRDのコンサルタントなどの専門家ですら頻繁に勘違いしている最大の誤解があるのですが、心理的安全性があるチームとは、揉めないチームと同義ではないということです。

もめないのではなく、もめても仕返しがないので議論や批判に恐れがないということです。

対人関係の不安が少ないだけで、必ずしもみんなが仲良しということではありません。

仲良しになれないメンバーとも心理的安全性は築けるのか?

「インターハイ優勝!!」という夢で結びついていれば、弱虫ペダルの今泉と鳴子よろしく、仲が悪いメンバーでも、協力はできます。(ラディッツに襲撃された時の悟空とピッコロの方がわかりやすいですか?)

【5C】でいうコミュニケーションも、目標達成のための率直なコミュニケーションを意味していますので、そうできる人間関係であるかどうかが重要です。

仲良くなれればラッキーだが、そうならなくても気にしなくて良い

日本人にはイメージしにくいですが、中国の友人に聞くと、アリババなんかはものすごく激しい議論をしてムチャクチャにぶつかるけど、行動は驚くほど早いそうです。

なんとなく中国はそんなお国柄がイメージできますよね。

もちろん相手と仲良くなり、信頼を得るからこそ、きついことを言えるし、聞ける、ということもありますので、そんな関係を社内で持つことができれば、最高だし、とても幸せですよね。

でも、そんな最高の関係まで至れない相手でも、もっというと相手を好きになれなくても、目標のために率直に話をして協力することはできます。

心理的安全性や【5C】のコミュニケーションは、そんなイメージで捉えてもらえるとわかりやすいと思います。

コミュニケーションに関しては伝えたいことがたくさんあるのですが、とんでもなく長くなるので、一旦これくらいにして、次回からはエンゲージメントのコモンパーパスとコネクトについてお伝えします。

(機会があれば、相手のタイプに合わせてどのようにコミュニケーションを変えるとよいか、初対面の相手と関係をどう築くか、なども私の専門になりますので、そういったスキルのお話も別でさせていただければと思います。)

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