第8話⑦犬の混合ワクチン、毎年の接種が過剰接種と言われる理由。そして必要以上の接種は愛犬のためにならないという話。

 これまで日本国内では犬の混合ワクチン接種は長年の慣習によって行われてきました。生後半年までに3回接種を行った後、年に1回(毎年)の接種が生涯続けられていました。
 しかし現在ではエビデンス(科学的根拠)に基づいた新しいワクチン接種プログラムが、世界小動物獣医師会(WSAVA)から公表されています。
それによると、重症化しやすいいくつかの病原体に対しては、その抗体が犬の体内に数年以上持続することが分かっており、ワクチンは毎年接種の必要がないと判断されています。少なくとも3年は接種間隔をあけることが推奨されています。つまり毎年の接種はやりすぎ、過剰接種という評価がなされています。

実際、体内に十分な抗体があるにもかかわらず、ワクチン刺激を与え続けることは異常な免疫応答につながり自己免疫疾患(※)を誘発させる可能性が指摘されています。これはワクチン接種後のアナフィラキシーショックなどの重篤な症状と比較しても非常に大きな問題と言えます。
(※:自分の免疫力で自分の細胞を攻撃してしまう病気)

 また、別の視点で考えてみます。
2020年、新型コロナウイルスが蔓延した影響により、世界中で多くの人々がワクチン接種を経験されました。
 その時、皆さんの初めての注射後の感想は?「痛い!」ではなかったでしょうか?それも接種時だけでなく数時間後からはっきりと感じ始め、時には数日間続きませんでしたか?中には頭痛や食欲不振などの症状も。私も含め周りの人たちは、なかなか大きな声で「痛い!痛い!」と騒いでおりました。
 果たして犬たちは混合ワクチン接種後、それらの症状を訴えることがあったでしょうか?たとえ不快感を感じたとしても人のよう声を大にして発信することはできません。
 今後愛犬がワクチン接種をされることがもしあれば、よく観察してあげてください。多くの症状に気が付けるかもしれません。

WSAVAがエビデンスに基づいた接種プログラムを示しているように、混合ワクチン接種は必要以上にすべきではないのです。繰り返しますが、十分な抗体が残っている動物へのワクチン接種は害になる可能性もあり、そもそも不必要ということ。そして長期間抗体が残ることがすでに分かっている病原体に対しては、抗体検査を利用して愛犬の生涯における接種回数を減らしてあげましょうということです。

今回はここまで。
次回は愛犬と過ごせる施設の利用規約、特にワクチン接種と抗体検査証明書の扱い方についてお話します。


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