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東アジアとその飲食店における新型コロナウイルス対策の状況を簡単にまとめました

こんにちは、FOODITO TOKYO実行委員会/株式会社トレタの中山です。

私たちのチームでは、国内外の新型コロナウイルスの影響などを継続的に観測・調査しているのですが、今回はその中でも東アジアの状況や飲食店における感染拡大対策について、簡単にまとめてみたいと思います。

なお、あくまで観測範囲および実数や報道ベースでの記載となりますので、実際の現地の肌感覚とずれていましたらコメントにてご指摘下さい。また本記事は7月末〜8月当初での状況をベースに記載しています。

東アジアの全体的な概要

東アジア全体として、5月にいったん新規感染が落ち着いたことを受け、多くの国で店内飲食の緩和や規制の解除が行われました。それを前後して、これも多くの国で入店記録やアプリの義務化などが推進されました。

一方で一部の国では厳しい罰則の実施などが導入され、感染の抑制が継続される状況がありました。欧米諸国に比べて屋外型の飲食店が多く、また全体的に平均年齢が若いこともあって、死亡者数が少ないことが特徴です(ただし日本を除く)。

そんな中、東アジアで現在もっとも状況が悪いと考えられるのは香港です。香港では新規感染者数が過去最多で急増しており、先日は外食そのものが禁止されるという厳しい措置も発表されていました(結果的に影響が大きすぎたため2日間で撤回)。また、反政府デモが激ƒ化しており、逮捕者も出るなど、情勢不安が状況の悪さに拍車をかけています。

続いて厳しい状況となっているのは、ご存じの通り日本です。東京を中心とした感染者の増加は止まらず、明らかな第二波に飲み込まれている状況で、現在の感染者数/死亡者数だけでいえば東アジアで最も悪い状態と言えます。

感染者数が増えるにつれ人々のポリシーや行動に端を発する社会の分断が起きてきており、社会情勢としても悪化しはじめているのが懸念されています。

一方で他の東アジア地域では、第二波はあっても微増程度で、大きな感染拡大には達していません。

では、各国状況の時間的推移と、主に飲食店における感染対策についてを見ていきましょう。

香港:状況が悪化。一時はレストランでの飲食を全面禁止

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香港は平均年齢が45歳を超えていることもあり、高齢者の多い地域です。そのため、様々な規制を敷くことで感染者数を抑えてきましたが、平行して5月頃から反政府デモが再開。その内容が激化するのと比例するように、新規感染者数が右肩上がりで伸びていき、過去最多を記録するまでになりました。

この際にレストランでの外食が全面禁止される措置も発表されましたが、労働者を中心として飲食難民が多数発生したことを受け、2日で撤回されました。

なお状況として飲食店の2,000〜3,000店が倒産の危機と言われています。これは17,000店ほどといわれている飲食店全体の10〜17%ほどにあたります。

香港における主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。日本の外食産業でも取り入れられそうなものはあるでしょうか。

・1テーブルごとの人数を4人までに制限
・1テーブルごとの間隔を1.5m以上に規制
・収容人数の50%を超えないよう人数に規制
・規制や制限に違反した場合は罰金および禁固の対象
・公共交通機関でのマスク未着用は最大5,000香港ドルの罰金
・バーやナイトクラブ、カラオケやパーティールームを閉鎖

参考:(下記規制は年末まで延長されています)

ベトナム:厳格な管理。感染者が出ると政府が街ごと措置

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ベトナムではコロナを社会問題と認定しており、政府が厳格な措置を行って封じ込めを行っています。具体的には、少数でも感染者が発生した場合、街レベルでロックダウンが実施されています。

そのかいもあって長らく死者ゼロで推移してきましたが、7月31日に初の死者が確認され、現在は追跡アプリのインストールを国を挙げて推しているところです。

飲食店の経営状態ですが、主にロックダウンされた都市部で状況が悪化しており、またホーチミンのような大都市でも空き家が目立つようになってきているそう。

ベトナムにおける主な感染拡大防止のための施策は以下の通りです。日本の外食産業でも取り入れられそうなものはあるでしょうか。

・大人数での集まりを禁止
・手指の消毒、外出時のマスクを必須化
・祭りや宗教儀式、イベントや競技などを一律禁止
・娯楽施設は休業措置

参考:


シンガポール:店内飲食は可、時間や人数に規制あり

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感染者数の増加を抑えつつ、ウィズコロナとしてうまくコントロールしている印象なのがシンガポールです。5月上旬には入退場記録システムを義務化して、人々の動きをチェックしつつ、緩やかに規制を解除しつつあります。死亡者数は30人を前に止まっており、8月11日現在も27人のままであるようです。これには平均年齢の低さや医療水準の高さなど諸説ありますが、なにより政府が毅然とした対策を行っていることが理由であるようにも思えます。

外食については、サーキットブレーカーと呼ばれる行動制限が発令されて以降、厳しい状態に陥っており、閉店が多く発生したという。ただしシンガポールの飲食店の閉店率は日本よりは低いものの1年で28%、5年で40%と高い水準にあるようで、コロナウイルスがどれくらい影響を与えたかは現段階の調査では不明でした。

シンガポールにおける主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。日本の外食産業でも取り入れられそうなものはあるでしょうか。

・1テーブルは5人まで
・集まりの人数も5人まで
・入店時に個人情報記録と体温チェック(義務)
・営業時間は22時まで
・高齢者に在宅を強く推奨
・外出時にマスクを着用していないと罰金

参考:

マレーシア:厳格な活動制限で破れば閉店も

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マレーシアは平均年齢が45.6歳と高いためか、死亡者も韓国に次いで124人(7末)となっています。入店時のQRコードが義務化されており、こちらもシンガポールと同様に利用者の記録が進んでいます。

4月のロックダウンの後は条件付き活動制限令(CMCO=The Conditional Movement Control Order)が発令され、飲食店は決められた義務を守らない限り開店することができなくなりました。

さらに最近では回復のための活動制限令(RMCO=Recovery Movement Control Order)というものに置き換わり、国内移動が緩和されつつも、一部のスポーツやイベントは規制されたままの状態です。

飲食店ですが、行動制限の影響により10%ほどが休業要請のまま閉店したとのデータがあるようです。

マレーシアにおける飲食店などでの主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。

・テーブルごと2m以上の間隔を開けること
・入店時の個人情報の記録および体温チェック(義務)
・活動制限の違反者には罰金や禁固刑

参考:

タイ:コントロールできているが飲酒に関して厳格な措置

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タイは他のアジア地区と同じく、入店記録を取りつつ、以前から厳しかったアルコールの規制をより厳しくすることで、実質的に感染拡大をコントロールしています。また非常事態宣言が8月末まで延長されることも発表されていて、いまだに強い制限下にあると言えそうです。この強い制限があってか、タイではすでに2ヶ月以上新規感染者を出していません。

飲食店の状況はあまりよくわからなかったのですが、観光都市の一部ではバーやパブなどのうち3割が閉店したというニュースもありました。

タイにおける飲食店などでの主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。

・1テーブルごと2名までの規制
・入店時の個人情報記録、体温チェック
・夜間外出禁止、違反すると罰金や禁固刑(すでに解除)

参考:

台湾:コントロールできている代表例に

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台湾は東アジアでも最もコロナウイルス感染症に対するコントロールができている地域のひとつです。死亡者数は7名、生活上の規制もほぼ緩和されており、また情報公開が進んでいることで、市民が不安少なく生活することができています。マスクの在庫を政府の作ったシステムで追うことができたのを知っている方も多いのでは。

飲食店においては、4月ごろからの規制で閉店を余儀なくされた店舗がありつつも、6月7日という比較的はやい段階から生活がほぼ正常化しており、大量閉店したようなニュースは見つかりませんでした。

台湾における主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。

・屋内に入る際の検温
・公共交通機関利用時のマスク・検温義務(違反すると罰金)
・接触者の追跡システムの早期導入

参考:

韓国:クラスターは出ている印象だが死亡者数は抑制

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韓国では、感染拡大がはやかったこともあり、3月の時点で感染者の情報を共有するアプリが導入されています。その後クラスターの発生などを受け、無期限の外出自粛要請が出されており、感染者数・死亡者数ともにその後は低水準で推移しています。実際、死亡者数も300人弱で留められていて、現在はある程度のコントロール下にあると言えそうです。

現在発生している主な感染者は、国外からの入国者が多いようで、毅然と隔離するなど、韓国としてはむしろそこを注視しているようです。

ちなみに韓国では一般的な飲食店に対して休業や時短営業の自粛要請はなされませんでした。そのため、外出自体の自粛要請で客足こそ減っているようですが基本的に多くの飲食店は通常営業のままです。ただし、客足減の影響が大きかった大都市では閉店した店舗も少なくないようでした。

韓国における主な感染拡大防止のための主な施策は以下の通りです。日本の外食産業でも取り入れられそうなものはあるでしょうか。

・指定施設での個人情報記録
・規制に対する違反で罰金・禁固刑
・入国者は2週間の隔離を義務(違反で起訴)
・飲食時以外はマスク着用を推奨

参考:

日本:強い規制もなく、他のアジア諸国に比べると緩い

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このように東アジア各国の状況を見てくると、日本は規制も少なく同時に罰則などもないため、感染のコントロールについてはとても緩い状況であることがわかります。平均年齢が高いとはいえ、死亡者数も東アジア諸国では圧倒的で、他国と比較をすると若干心配になるレベルです。

特に気になるのは、日本においては店舗の利用者の記録などが自主に任されていて、感染者の足取りを追いにくい構造になっていることです。他国ではこの点を厳格に管理していていて、たとえクラスターが発生したとしても足取りをしっかりと追い、封じ込めることに成功している例が大半に思えます。接触感染アプリ「COCOA」もありますが、ある程度の経済活動の自由を認めるなら、こういった利用者記録は導入してほしいと個人的に感じます。

あとがき

今回は、FOODIT TOKYO 運営事務局として、東アジアの状況を概要だけでも伝えるべくなるべく簡単にまとめてみました。それぞれの国では独自の細かい規制やポリシーを適用していることが多く、もし興味があれば参考リンク等から読み込んでみてください。

日本と香港を除く各国で共通しているのが、政府を主導とした「感染拡大をコントロールする」という意識です。対して香港はデモなどアンコントローラブルな状況が、日本でははっきりしない政府の方針が今後心配の種になってきそうな印象を受けました。

飲食店に限っていえば、やはりリモート勤務の影響を受ける大都市圏や、インバウンド客の多かった観光都市などでは影響が大きかったようで、どの国でも飲食店の閉店を報じるニュースが見られました。ただし国によっては早々に家賃などの保証を発表したケースもあり、先の見えない状態に対していかに経営者の心が折れないよう支援するか、が求められているのは間違い無さそうです。

なお、あくまで日々の情報収集の延長線上としてまとめましたので、認識違いや誤解、間違いもあるかもしれません。何かあれば、コメントなどでご指摘いただければありがたいです。

全体的な数値引用元:


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