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雲とネコとおいしい物を愛する翻訳/執筆家。 賛美歌アーティストKaori E.としても…

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雲とネコとおいしい物を愛する翻訳/執筆家。 賛美歌アーティストKaori E.としても活動中。 オリジナル英語曲: https://youtu.be/Eyh3FC088Vc 日本語版: https://youtu.be/IjHImrd0PM4

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空の雲フーの幸せレシピ 第1話

フーは北の空で生まれた若い雲です。最近やっと大人になりました。 フーは子どもの頃、ほかの雲の子と同じように雨雲学校に通っていました。 2年生の担任だった入道雲先生からは、雨の降らせ方を教えてもらいました。 でも、なかなかうまくできなくて、がっかりしていた時期もありました。 ある時などは、学校を抜け出して、荒っぽいカミナリや北風と一緒に嵐を起こしたこともありましたっけ。 人間の子どもも、嫌なことがあったら逃げ出したくなりますよね? 雲の子だって同じなのです。 そんなフ

    • 空の雲フーの幸せレシピ 第6話

      「本当に?うれしい!じゃあ言うね」 エミリはフーに、スープの説明を始めました。 「ママの作るスープはね、いつも野菜が入ってるよ。玉ねぎとトマト、それに、鶏肉。 いつも同じじゃないけど、いつも美味しいの。」 フーは聞き漏らさないように、目を閉じて聞いていました。 「フムフム、野菜と肉ね。これが入ると美味しいスープができるんだ。」 「それからお塩とコショウを少しずつ。」 「塩とコショウね!わかったよ!」 「入れるのは、ふつうの塩じゃないのよ。うちのお塩は特別な塩。料

      • 空の雲フーの幸せレシピ 第8話(最終話)

        次の日、お母さんはお鍋に残っていたスープを飲んで、すっかり元気になりました。 その日はクリスマスでした。でも町には人から人へ移る病気が流行していたので、大勢で集まってお祝いすることができません。 それでクリスマスのお祝いは、それぞれのお家でこじんまりとすることになりました。 この町では、クリスマスにおいしい料理を食べ、イエスさまのお誕生の話を聞いて、最後にクリスマスの讃美歌を歌います。 エミリはクリスマスの讃美歌「きよしこのよる」を歌うが大好きでした。 やさしいメロ

        • 空の雲フーの幸せレシピ 第7話

          「エミリ、エミリ、起きなさい。風邪を引いてしまうよ」お父さんの声で、エミリは目を覚ましました。 エミリは火を身ながら眠っていたのです。眠い目をこすりながらエミリはお鍋に目をやりました。 「あ!スープはどうなった?!」 「エミリ、ひとりで火を使っちゃだめだと言ってあっただろう?危ないじゃないか」 お父さんは眉をひそめて言いました。 「ひとりじゃなかったの。雲のフーが一緒だったよ。それにララだっていたし。」 「雲のフー?一体なんのことだい?」 お父さんは不思議そうな

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        空の雲フーの幸せレシピ 第1話

          空の雲フーの幸せレシピ 第6話

          「本当に?うれしい!じゃあ言うね」 エミリはフーに、スープの説明を始めました。 「ママの作るスープはね、いつも野菜が入ってるよ。玉ねぎとトマト、それに、鶏肉。 いつも同じじゃないけど、いつも美味しいの。」 フーは聞き漏らさないように、目を閉じて聞いていました。 「フムフム、野菜と肉ね。これが入ると美味しいスープができるんだ。」 「それからお塩とコショウを少しずつ。」 「塩とコショウね!わかったよ!」 「入れるのは、ふつうの塩じゃないのよ。うちのお塩は特別な塩。料

          空の雲フーの幸せレシピ 第6話

          空の雲フーの幸せレシピ 第5話

          フーは、窓の外から部屋の中を見回しました。そこはキッチンで、窓に面して流しと作業台が並んでいます。 流し台の横にはストーブがあって、中では火が赤々と燃えています。 部屋の真ん中には丸いテーブルがあって、赤と白のチェック柄のテーブルクロスがかかっています。 食器が入った木の棚の上には、ろうそくが4本立てられるロウソク立てと、赤いろうそくが差してあります。 そのうちの3本が順々に短くなっていて、4本目はまだ火がつけられていないようで長いままです。 そこは、山あいにあるキ

          空の雲フーの幸せレシピ 第5話

          空の雲のフーの幸せレシピ 第4話

          その建物はチャペルでした。 建物の壁は白く、赤い屋根の上には細長い塔が突き出ています。 そして塔の先に、フーの目にとまった白い十字架がついていました。 チャペルの向こう側に目をやると、すぐ隣に別の建物がたっています。 それは丸太でできた山小屋で、大きな木の扉と、大きなガラス窓がついています。 その小屋の屋根からは、細いえんとつが一本出ていて、一筋の煙が出ています。 煙はもくもくと、フーの近くまで登ってきました。 煙は白と灰色で、フワフワと浮いているところが雲と少

          空の雲のフーの幸せレシピ 第4話

          空の雲フーの幸せレシピ 第3話

          伝書バトのコルムは、フーの横でバタバタと羽ばたいています。 その音を聞きながら、フーは北風に引っ張られて、ひゅるるーと北に向かって進みました。 しばらくは、フーとコルムの下には、ただ海が広がっているだけでした。 フーは退屈しのぎに、コルムが前もって教えてくれた、若い雲が楽しめる場所の特徴をブツブツと唱えはじめました。 (山があって、川があって、原っぱがあるところ・・・。) やがて遠くに陸が見えてきました。近づくと海の水が流れ込む川も見えてきました。その両側には、人間

          空の雲フーの幸せレシピ 第3話

          空の雲フーの幸せレシピ 第2話

          フーは地上への旅について、もの思いにふけっていました。 すぐそばでは、虹の川学校の仲間の雲たちが、早めの夕食を食べています。 今日も南風のナナさんの料理はすばらしく、みんなが幸せな気分になりました。 フーは、少し離れたところに目をやりました。 すると、学校の外を、見知らぬ雲たちが集団になって、東風に乗って流されているのが見えました。 その中で年上らしい、一番体の大きな雲のかけ声が聞こえてきます。 「ほら、列を乱すんじゃない!前の雲にくっついて離れないようにするんだ

          空の雲フーの幸せレシピ 第2話