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空の雲のフーの幸せレシピ 第4話

その建物はチャペルでした。

建物の壁は白く、赤い屋根の上には細長い塔が突き出ています。

そして塔の先に、フーの目にとまった白い十字架がついていました。

チャペルの向こう側に目をやると、すぐ隣に別の建物がたっています。

それは丸太でできた山小屋で、大きな木の扉と、大きなガラス窓がついています。

その小屋の屋根からは、細いえんとつが一本出ていて、一筋の煙が出ています。

煙はもくもくと、フーの近くまで登ってきました。

煙は白と灰色で、フワフワと浮いているところが雲と少し似ています。

でもおかしなことに、フーが今まで見たことのある煙とは別のにおいがしました。

それは、かいでいると頭がクラクラしてきそうな変なにおいです。

すると、その煙の中から声が聞こえてきました。

モクモク モクモク
おれたちは、燃える火から生まれたよ。
モクモク モクモク
ストーブに、おいしいスープが煮えている。
グツグツ グツグツ
煮立ってる、スープはいつもおいしそう!

おいしそう!という言葉を聞いたフーは、いてもたってもいられませんでした。

「あの、すみません、それって本当ですか?」
フーは思い切って聞いてみました。

でも、煙は返事をする代わりにすぐに消えて、声もそのまま聞こえなくなってしまいました。

ストーブのそばには、おいしいスープというものがある!

それを聞いたフーは、すぐに行動に出ました。

フーは、煙の変なにおいが気になりましたが、その言葉がウソだとは思えませんでした。

それで、煙がやってきた、えんとつのある山小屋に向かって降りていくことにしました。

フーは建物の横にあるガラス窓までやってきました。

すると、上からチラチラと大粒の雪が降ってきました。雪はひとつ、またひとつと、窓ガラスにくっつきました。

雪の結晶はとても美しく、フーにはそれぞれが完璧な形をしているように見えました。

(こんなにきれいな雪を降らせるなんて。よっぽど雪降らせが上手な雲が、この仕事をしているんだろうな。)

フーは、どんどん空から落ちてくる雪の迫力に圧倒されながら、雪を見つめ続けました。

しばらくしてからフーは、どんな雲が雪を降らせているのか知りたくなって、空を見上げました。

上空には若い灰色の雲の一軍が見えます。

注意ぶかく見ると、濃い灰色の雲の中に、小さな白っぽい雲がひとつ混ざっているのが見えました

(あ、あれは、もしかして、昔いっしょに空のゲームをした、ムムちゃんじゃないか?)

もう一度よく見ると、それはやっぱり同じ雨雲学校に通っていたムムです。

(なつかしいなぁ。ムムちゃん、ゲームが上手にできなくて、いつも悩んでたっけ。今では、こんなにりっぱな雪を降らせる仕事をしているんだ。びっくり!)

フーは、それを見て、自分が地上に来ていることについて考えはじめました。

(ぼく、他の雲みたいに雨や雪を上手に降らせる勉強をしないで、地上に来ていていいのかな?)

でも次の瞬間、この旅を一番応援してくれているナナさんのことが思い浮かびました。

(他の雲は、他の雲。ぼくはぼく。ぼくは、自分のいい所を使って働くんだ!)

フーはそう自分に言い聞かせると、ひとつ大きな深呼吸をしてから、山小屋のガラス窓をのぞきこみました。

つづく

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