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私の学生作品とインターンシップ(作品追加)

こんにちは、もけけです。ちょっと寄り道を経て、メーカーでプロダクトデザインの仕事をしています。

前2回で、自己紹介と美大で学んだことを書きました。しかし、実際にどんなことをやったのかはよくわからないと思います。そこで、今回は学生時代のポートフォリオ(作品集)の一部お見せします。

アウトプットの詰めの甘さとか写真の甘さとか、いろいろありますが、そのままの方がリアリティがあるので、当時(10年くらい前)のままでお見せします。

1、ハンディクリーナー

家電メーカーの採用実習に応募する時の事前課題。3年生後期、年末年始辺り。

プラモデルなどを作っている時、作った後、卓上で使うための掃除機のデザインです。ノズルだけ作って掃除機に繋げ、使えるか検証していましたが、密閉が悪くて微妙でした。

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2、花を長く生けられる花器

3年生後期の自由課題。当時の私は造形力を付けたくて、極力シンプルな機能のアイテムをデザインしたいと考えて花器をテーマにしました。

花は生けていると茎の切り口が腐ってきますが、茎を切ること(水切り)で長持ちさせることができます。

ただ、そうすると茎の長さがどんどん短くなって、普通の花器には生けにくくなるので、茎が短くなっても生けられる、深さ違いの溝がある花器を作りました。

回転体形状で歪みが分かり易いのでモデルを作るのにかなり苦労しました。冬で寒かったので、湯船に浸かりながら硬質ウレタン(目の細かい発砲スチロールのようなもの)を削っていたら、体についた粉が取れなくなって大変でした。

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3、振動ペン

大学4年生の前期、任意のテーマについて、実験や考察を行い、その成果を発表すると言う自由研究、あるいは基礎研究のような課題です。

私の研究テーマは「振動」で、そこから生まれたデザインです。偏心した重りをモーターで回すことで、ペンが振動、それによって面白い線が引けます。

手が麻痺した症状でも、手に刺激を与え続けることで症状を改善することができるそうですが、ちょっとこじつけです。

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当時はまだまだ3D CADは一般的ではありませんでした。私はライノセラスを使っていましたが、これに慣れると実務でレベルの高いの3D CAD(CATIA、NX)を使う時に苦労します。新しくCADを覚えるなら、Fusionの方が良いように思います(これもクセがありますが)。

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*ここから写真のみです

4、視覚障碍者用の触覚時計

3年生前期の「ときをはかるプロダクト」と言う課題。

「とき」「はかる」をそれぞれに解釈して、それをデザインに落とし込みます。

その時の私は、あまりデザインに力の入っていないものをデザインしたいと思っていました。一般的に、たくさん売れるものほどコストがかけられるので、結果的にデザイン(単純な見た目という意味ではなく、使い勝手も含めて)もそれなりのレベルにすることが可能ですが、数が売れないもの、単価の安いものではそれが難しいです。その一つが障碍者向けの商品です。

たくさんの素晴らしいデザインの商品がある一方で、誰もが目を背けているような商品ジャンルがあることに違和感を感じていました。市場原理から言うと仕方のないことではあるのですが。

デザインに当たっては、視覚障碍者と一緒にランニングするサークルに参加して、いろいろお話を伺ってアイデアを出しました。本当は他にもできることはあったと思いますが、課題テーマである「ときをはかるプロダクト」に落とし込みました。

視覚障碍者が腕時計を使う際、音声読み上げタイプか、針を直接触って時間を判別するものを使います。
ただ、そういったものはデザインが一様で、あまり素敵なものはなかったので、首から下げてアクセサリのように身に付けられる、触覚式時計をデザインしました。

上の輪っかが短針、下の輪っかが長針の役割を持っています。健常者からも興味を持ってもらえる(会話のきっかけになる)ことも狙っています。
モデルは手触りの良い紫檀+レーザーで撃ち抜いたアルミ板で作ってあります。硬さの異なる素材を同一曲面で合わせるのにかなり苦労しました。

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5、飲みながら温まれる器

確か2年生前期の課題。「酒器」

お酒を飲むシーンを想定しつつ、美しい酒器を作りなさいという課題だったと思います。あまりお酒を飲む習慣がなかったこともあり、無駄に反抗してお酒用ではない器をデザインしました。

手で心地よく包み込める形状を追求した結果、500ml以上の飲み物が入る巨大なマグカップができました。モデル制作のためにエアブラシとコンプレッサーを購入した頃で、調色塗装にハマっていました。

この他に緑とピンクも作りましたが、カラバリが俗っぽい(洗練されてない)と講評されました。

今は実家でペン立てとして使われています。

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6、コルクスクリュー

図面を描いて、それをクラスメイトに作ってもらうという課題。確か3年生の時。

人が読み解ける図面を描く、図面を読み解いてモデルを作ることがテーマです。

引き続きエアブラシ塗装にハマっていて、キャンディ塗装(シルバーの上にカラークリアー塗装をする)とそれが映える造形をテーマにデザインしました。

使用性は考慮されておらず、栓を抜こうとすると角が手に食い込み、痛いです。

鞘の部分の合わせが難しい & カラバリのために3セット(シリコンで型を作成、樹脂を流し込んで注型することで複製します)の制作をお願いしたので、モデル制作担当の子には苦労をかけました。

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ツルツル

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7、桐のサンダル


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確か、3年生の秋の課題だったと思います。

桐の特性を活かしてデザインしなさい、みたいな課題だったと思います。

桐を知るために、みんなでバスに乗って桐の産地、桐生に見学に行きました。

この課題は2段階になっていて、

1、桐を知るために下駄を作る

2、任意のデザインを行う

というものでした。ここでも(無駄に反抗して)、下駄ではみんなと同じものができてでつまらないと思い、一人だけサンダルを作りました。革のベルトは、一点だけで留まっていて、輪っか状になっています。当時、trippenの靴に感銘を受けていたので、見た目は奇抜でも、履き心地の良いものを作りたいと思っていました。

三次曲面の形状を手で削って左右対象に作るのは難しかったですが、履き心地も良く満足でした。

第2段階では、光の透過するデスクランプを作りましたが、そちらはビミョーでした。

今思えば、第2段階でも引き続き履き物を作れば良かったです。

桐は空気を多く含んでいるので、軽くて熱伝導率が低いので、履き物に適した素材なので(だから桐の下駄で作られている)。


ポートフォリオについて

ポートフォリオは、企業の募集要綱によって規定が異なり、返却されないこともあるので、同じような内容で何冊か作ることになります。お金はかかりますが、一度出力すると改善点が見つかるので、その都度ブラッシュアップしていきます。

今回お見せしたのは、4年生の夏頃、外資系企業の採用とは関係のないインターンに応募する時に使った簡易版です(メインのポートフォリオはA3縦で、デザインプロセスのパートがさらに多いです)

余談ですが、私は年齢(6浪相当)と職歴(職歴があると新卒応募できないケースが多い)ハンデによる就職への不安感から、応募できるインターンには片っ端から応募&参加していました。それこそ先生に「受け過ぎ!」と怒られるくらいに。

インターンの建前は社会貢献ですが、実際には企業の重要な採用活動の一部です。言い換えると、全く採用する気のない学生をインターンに呼ぶはずはなく、そこに呼んでもらえると言うことは、採用のチャンスがあることだと捉えていました。

だから、先生に怒られても、興味のある会社のインターンは日程の許す限り応募するようにしていました。もちろん、2回目の大学生活だったので、チャンスがあれば学外でも可能な限り勉強したいと思っていたのも本音です。いかに多摩美の環境が良くても、外に出て他大学の学生を知って初めて見つかった、自分の強み、弱みもありました。

美術学部と工学部のスキルの違い

例えば、千葉大学の院生とポートフォリオを比較すると、私のポートフォリオのリサーチとその考察プロセスは、全く彼らに歯が立ちませんでした。

多摩美の中では、私はリサーチに力を入れているつもりでしたが、とてもそこで勝負しようとは思えませんでした。

そもそも学部生一人の課題と、大学院生チームの産学連携プロジェクト(が多い)の比較になるので、内容に差があって当たり前なのですが、そんなことを言っていても始まりません。

自分と彼らのポートフォリオを見比べた時、自分のスキルの中で武器になると思えたものはスケッチと写真でした。このため、メインのポートフォリオでは、言葉は極力少なく、スケッチの物量と、大きく見栄えのする写真を使うことで勝負することにしました。
A3横開きのポートフォリオは、プロセスを時系列で見せやすいのですが、スケッチや写真が小さくなってしまう弱点があったので、私はそれらが大きく見せられるA3縦開きにしていました。

細かい説明を読まなくても、見ればわかる。スケッチと写真を活かして、そんなポートフォリオを作り続けた結果、ポートフォリオ選考で落ちることはありませんでした。

【ここからは、自分がそれぞれの大学の学生から見聞きしてまとめた情報です。現在の当事者達からすると違うこともあるかも知れません】

工学部系のプロダクトデザイン専攻では、入学してからデッサンなどの実技を学ぶケースが多く、学部3年までに採用実習で使えるスケッチ力を身に着けることが美大に比べて難しいです。

京都工芸繊維大学や千葉大学の優秀な大学院生も、学部生時代の企業実習ではうまくいかなかったという話を何度か聞きました。

実際、インターンシップで出会う工学部系の学生はほとんどが大学院生でした。

もちろん工学部学部卒の学生もインターンにいますし、内定ももらってます!
入社後も活躍されている方がとても多いです。

一方で、工学部系のデザイン専攻の中では、デザイナー志望ではない学生も多いそうです。

企業インターンシップについて

就職に対する不安と足掻きから、私は応募したインターンには全て受かって、4年間のうちに家電系2社、車系3社のインターンに参加することができました。

4年間でこんなにインターンに行った学生は、学内はもちろん学外にもいなかったと思います。

車系のインターンに3回も行っているのは、入学前には車やバイクのデザインがしたかったからです。ただ、在学中様々なジャンルのデザインの講義を聞いて、3年生のタイミングまで迷い、結局は家電系の会社に進路を定めました。これもインターンに行かなければなかなか決めきれませんでした。

インターンは良いことづくめのようですが、リスクもあります。

それは、インターンを受けた時の印象がイマイチだと、採用実習に応募しても選ばれないということです。インターンには参加した方が絶対良いですが、その期間を全力で乗り切ることが必須です。実習やプレゼンに自信がなければ、受けないことも選択肢に入れたほうが良いと思います。

インターンに関するさらに細かなお話はまたの機会に。






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