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XRマネキンの可能性

■新時代の「マネキン」

言うまでもなくマネキンは、アパレル店舗で製品のコーディネートをディスプレイする際に欠かせないアイテムである。最近では抽象的でデザイン的にアレンジされたディスプレイも目に付くが、マネキンを置かないショップはほぼ存在しないと言っても過言ではないだろう。このマネキンをデジタルデータによる3D映像に置き換える試みが始まっている。大型のデジタルサイネージ、特に、タッチパネル式端末に動きを含めた3DCGデータを搭載し、立体的なインタラクティブコンテンツ(※注1)として表示することができる。大手通信会社のアパレルファッション業界向けSaaS(注2)ビジネスの一環でFMBも開発協力を行っている試みである。
 
 現在のアパレル店舗の店頭でマネキンはアイキャッチとして欠かせないことは否めないが、ヘッドやポーズによって商品のデザインとのマッチングが難しい場合もある。そこで、先般コラムで紹介した多目的インタラクティブミラーサイネージの大型モデルへの実装では、一枚のサイネージに多くのコーディネートや多種多様なモデルを等身大に近い形で表示し、3D自由視点で動くマネキンとして展示する施策を行っている。直近ではゴルフブランドPINGの展示会で2m40㎝もの大きさのインタラクティブサイネージ10台に数十種類のデジタルマネキンを表示したものを、MRグラスやモバイル端末によるXRファッションショーと共に展示した。
 

■XRマネキンの種類

 XRマネキンには技術的に大きく分けて3つのランクがある。最もランクの高いものは、影や質感などを環境に応じて反映できる高精細なタイプ。その次が、周囲の環境光の影響は反映しないものの、汎用ブラウザーによるWEB上で比較的安価に運用可能な「アークトラス」や「4D-VIEW」などのビューワーによるタイプ。そして最後にダウンロードして端末で稼働する軽量タイプ等がある。これらのシステムはMR・AR・VRデバイスにも対応する。
 
 3DCG制作には、主に既存の人やモノを撮影する実写キャプチャー型と、3DCGソフト上でモデリングを行うモデリング型の2種類がある。実写キャプチャー型は「ボリュメトリックビデオ(注3)」「フォトグラメトリ(注4)とモーションキャプチャー(注5)の組み合わせ」などがあり、モデリング型は既存のCGアバターにポージングやウォーキングなどのモーションをつけたものや、最近話題のバーチャルヒューマンといったフルスクラッチ(注6)がある。また、汎用CGソフトや3DCADデータでのシミュレーションでマネキンを非表示にして商品サンプルだけを動かすといった事も出来る。「XRマネキン」はいずれもポリゴン化されモーションデータやリアルな質感を付けた3DCGデータを、リアルタイムレンダリングエンジンでインタラクティブに稼働できる状態にした物を高速通信でデバイス表示するシステムである。
 
 今後、小規模店舗や、サンプルだけを展示し、実商品を配送販売するショールーム的な店舗では大いに期待できる販売ツールとなり得る。

注一覧

注1:ユーザーがただ視聴するのみならず、タッチしたりクリックしたりできるコンテンツ。
注2:Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略。ベンダーが提供するクラウド上に置いたソフトウェアをインターネット経由でユーザーが必要な分だけ利用できるサービスで、パソコンにソフトウェアをダウンロードする必要がない。
注3:立体映像技術の一つ。人物などの動きや位置も含めて三次元デジタルデータで撮影することによって3D映像データを生成できる技術。
注4:対象物を様々な角度から撮影した写真を合成することにより3DCGモデルを生成する技術。
注5:人物や物体の動きを記録し、3DCG上で使用できるデジタルデータとして記録する技術。
注6:既存のデータなどを流用せず、何もない状態から自前で製作すること


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