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「君の名は。」〜姉が子猫を保護した話〜

ちょうどひと月前のこと、姉がうちのマンションの駐輪場で生後2ヵ月の小さな小さな子猫を保護した。近づいても逃げないほど衰弱していて片目は開いておらず。最後の力を振り絞るように姉を見上げて懸命に鳴く姿を見て、とても放っておけなかったらしい。

すぐにかかりつけの動物病院へ。体重はわずか500グラムで体温も36度台。振り返るととけっこうきわどいラインだったが、診察台で差し出したエナジーペーストにがっつく姿には、「生きようとする力がある!」と感じられたそうだ。

うちにも姉のところにも先住猫がいる。子猫にはノミがおり検査も必要なので、私と姉の家から徒歩圏内にある実家の別宅で子猫を保護することにした。

適切な治療(ノミやお腹の虫の駆除)と栄養たっぷりのご飯で子猫はみるみる元気になった。1週間で体重は1.5倍に増え、おもちゃでも遊ぶようになった。私と姉は子猫を「しおちゃん」と名付けた。

しおちゃんはタキシード柄(黒ベースに白い靴下)の女の子でとっても人なつこく甘えん坊。常にゴロゴロ言っている。トイレはしつけいらずで完璧にできたし、猫ベッドもすぐに使いこなしてくれる頭のよい子。検査結果も陰性だったと聞き、私は胸を撫で下ろした。

姉のところはすでにマンションの飼育頭数上限いっぱい(2匹)。私はというと、春に長年連れ添った愛猫を病気で亡くしており、今は1匹なので飼おうと思えばマンションの規約上は飼える。もし、もらい手が見つからなければ、しおちゃんを我が家で引き取ろうかなと思っていた。

目もぱっちり開いて、ますますかわいくなってきたときに、「子猫をぜひ引き取りたい」という方が現れた。姉の知り合いのご家族で中学に上がる一人娘さんのお友達にと保護猫を探していたらしい。すぐに見学に来られて気に入っていただき、トントン拍子に引き取りが決まった。

これ以上ないほど素敵なご家族で、娘さんの年齢的にも子猫を迎えるのには、自分の経験からベストタイミングと思われた。10代の成長期から大人になるまでの時間を一緒に過ごす猫は特別な存在になるだろう。しかもなんと、かかりつけの動物病院も同じ。しおちゃんを元気にしてくれた優しい先生に引き続き診てもらえるのはとても安心だ。これが「ご縁」というものなのだろうなと思った。

お迎えの夜には私も立ち会って、しおちゃんにさよならを言った。お迎え先のお家の娘さんが新しい(正式の)名前を考えてくれていた。なんとそれは春に亡くなった愛猫と同じ名前だった。

偶然?それとも奇跡の続きなのか。2週間ちょっとで、しおちゃんは健康な体と素敵なお家、そしてこの先溺愛されること間違いない名前を手に入れた。

同じ名前ということは私の心の中だけにとどめておいた。

もしかすると、春に亡くなったあの子がしおちゃんを助けて、素敵なご縁へと導いてくれたのかもしれない。颯爽と現れて彗星のように去っていたしおちゃん。ご家族の愛情を受けて元気に育ちますように。


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