『友情の総重量』 #毎週ショートショートnote
「友情の総重量ってもんは始めから決まってんだってな」
「なんてー?」
自転車を漕ぐ彼の言葉は向かい風に流され、聞こえない。私も私でスカートがチェーンに絡まないかヒヤヒヤしていた。生徒指導員に咎められるよりも同級生に見つかるよりも、ずっと。
「…別にたいしたことじゃねぇよ」
とぼやく彼にもたれかかる。少し湿ったカッターシャツ。甘くて、ほんのりとスパイシーな香りが鼻腔をくすぐる。
「おまえ太ったろ?」
「はあ?」
「やっぱ聞こえてんじゃん」
それは背中の振動から伝わってきたからだよ、なんて言えない。
「さっきの総重量の話だけど」
「もしかして、試合に向けて体重増やせとか言われてんの?」
捲り上げた袖から覗く腕は骨張っているものの筋肉質とは言いがたい。
「ちげぇよ」
「じゃあ何よ」
「友情の重量が越えたら何になんのかなって」
「それは…」
風にそよぐ髪の隙間から赤くなった彼の耳を見て私はいつからか広く感じるようになった背中に、そっと指を走らせた。
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※毎週ショートショートnoteのタグをつけ忘れていてすみません🙏💦
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