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2分小説 『月めくりのうら』 #シロクマ文芸部

「月めくりをしたら、そのうらには何があるの?」

 来年には小学生になる娘が私を見上げて、不思議そうに訊いてきた。

「何で?」「どうして?」とよく聞いてくる年頃とはいえ、何とも斜め上な問いだ。


 つい最近、見事な満月を見たばかりだからだろうか。それとも、敬老の日にいとこ達と初めて神経衰弱で遊んだからだろうか。

両方の可能性も大いにありる。


それにしてもタイミングが悪い。
なぜ今ここで、その質問をするのか。


スーパーのレジに並んだ、ちょうどその前列にスキンヘッドのおじさまがいる、この状況で……店内の照明を一身に受け、それはもう見事な輝きを放っている。

いや、娘もそれを見たから疑問を抱いたのかもしれない。月にたとえているのは娘なりの思いやりなのだ、きっと。


そう自分に言い聞かせていたら、なんとおじさまが振り返った。ヤバい。娘の声が聞こえて不愉快な思いをさせてしまったかもしれない……と冷や汗が流れ出した、そのとき

「おおっと、危ない。牛乳を買い忘れてた。あ、良かったら前へどうぞ」

とおじさまは前列を譲ってくれた。
人が好さそうな笑みを満面にたたえて。


「ママ」
「ん?」
「月めくりのうらの答えがわかったよ」
「なあに?」
「月には、うらもおもてもなくて、どこから見てもキレイってこと……だよね?」
「そうね、そういうことだとママも思う」

やっぱり同じことを思い浮かべていたのか、と苦笑いする。


「なんで坊主めくりって呼ぶんだろう?」

と、幼い頃に疑問を抱いていた私の血を確実に受け継いでいながらも、露骨に表現しなかったのは、きっと夫譲りだろうなと思うと、たまらなく愛しさが込み上げてきて娘の頭を撫で回さずにはいられなくなった。


 もうひとつの作品がちょっと重めだったので軽く楽しめるものを書いてみました。本当は違う話を考えていたのですが、毎度のことながら、気がついたらこんな感じに……

今やルールも忘れてしまったけれど、「坊主めくり」だけは、やたらと強かったのをふと思い出しまして……トランプでするいっきゅうさんや七五三なども得意でした🤭

(遊び方はだいたいこんな感じです>🙆
🐷<ブタのしっぽと混乱するのよね……)


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