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『アナログ巌流島』 #毎週ショートショートnote【時代錯誤編】

どうしてこうも物覚えが悪いの?

自分の使った食器を洗う。
自分の脱いだ服を洗濯して干して畳む。
自分の使ったトイレや風呂場を掃除する。

たったこれだけのことを手取り足取り教えても次の日には…いや数分後には忘れている。単身赴任の間この人はどうやって生きてきたのだろうとたまに本気で思う。


 食器を洗い終え、入浴を済ませて戻ると、赤ワインで染まったグラスが食卓にポツンと置かれていた。

「しつこく言いたくないんだけど、自分のことくらい自分でしてくれない?」

書斎のソファでスマホをいじる夫に言ってもどこ吹く風。

「貴方が原始人ならまだ許す。でも貴方は、アナログ時代からパソコンの使い方を独学で覚えて昇進してきたんでしょ?」

今日耳日曜ってか!時代錯誤も甚だしい。

「じゃ私、今から貴方のことアナログ巌流島って呼ぶから」

この無反応頑固野郎め!

 翌朝、食卓には牛乳の膜が張ったグラスが置かれていた。

やっぱりあの人、原始時代に単身赴任してたのかしら?


 娘から見た実話です。長年、単身赴任していた父と暮らしてモヤモヤしまくったことをそのまんま書きました。娘が言うとまだ動いてくれるのですが、母がいるとまあ何もしない! たまに「この人は原始時代からタイムトラベルした人なんかな……?」と思うと、ちょっとだけ受け入れられる気が……(この考え方は、自分とどうにも気が合わない人と接する時にも役立つよ~!)

 実際、あだ名効果もまれにあり、他の記事にも書いたのですが、入浴後にいつも洗面器に水を張ったままの父のことを「洗面器伏せんあきらとしばらく呼んだら、改善したこともあります。(※実在する人物とは関係ありません。)

こちらの実験や「患者“様”」と呼ぶことで患者の態度が横柄になった話などを聞くと、あだ名や肩書き効果も使い様によるのかなあ…とも思ってみたり。ぼちぼち父も退職して肩書きがなくなりしょぼくれてしまっても困るので、なんかこうポジティブかつ謙虚な肩書きをつけてあげたいな、と思いつつ……いざとなると思いつかないんだな、これが!(ちなみに私は毎日耳ホリデーです🙉えへへ🙊)


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