1分小説 『無敵な連携プレイ』 #シロクマ文芸部
「走らないで!」
という悲痛な叫びに団地内の公園にいた大人達が一斉に振り返る。
「どうしたの?」
「何かあった?」
「大丈夫ですか?」
駆け寄った人達が心配そうに問いかける。
「長男と次男が左右に走っていって……
ねえ、どうしたらいいの?!」
半ばパニックに陥っているママさんは、もう一人女の子を抱えていた。
「その子は預かるから次男を追いかけて!」
一人が言うと
「長男くんは私が捜すわ!」
「僕はここに残って、他の子ども達を見てますね」
と、瞬時に役割分担が決まったことで、ママさんは正気を取り戻したように走り出す。
数十分後……
なんとか次男を見つけたママさんが公園に戻ると、長男も無事に見つかったようでほっとする。助けてくれた人達に頭を下げ、末の娘を引き取る。
「え、本当ですか?」
と、今度は公園の子どもの見守り役を買って出たパパさんがスマホを片手に叫ぶ。
「どうしたの?」
「何かあった?」
「大丈夫ですか?」
と、通話を終えたのを見計らって、また同じような言葉が飛び交う。
「つ、妻が職場で倒れたみたいで……
どうしたらいいんですか?!」
青ざめた表情で慌てるパパさんに
「とりあえず奥さんのところに向かって!」
一人が言うと
「お宅のお子さんはどこ?」
「お礼にうちで預かりますよ」
他のママさん達が声を上げる。
「うちの息子と娘です」
と、不測の事態に気づいた兄妹がパパさんの元に駆け寄り、両脇にピタリと張り付く。
「息子さんはうちの子と年齢も近そうだし、一緒に見た方が良さそうね」
と、先ほど助けてもらったママさんが言う。
「なら、あなたの娘さんは私が預かりますよ。うちは年が離れてて上の子は小学生だから、下の子と娘さんの面倒見るのを手伝ってくれると思うわ」
「じゃあ、パパさんの娘さんはうちで見るわね。双子の娘と気が合いそうだし」
そうして役割分担が決まり、少し平静を取り戻したパパさんが我が子に
「絶対に迎えに行くから、いい子にして待ってるんだよ」
と、言い聞かせて走り出す。
奥さんの体調不良が妊娠によるものだったとわかったのは、その数時間後のこと。
母から聞いた平成初期の都会の宿舎暮らしでの話を基に、令和風にアレンジしてみました。乳飲み子だった私は全く記憶にないけれど、二人の兄弟が左右に散ってパニクッた話や、ママ友が熱中症で自宅で倒れていたのに気付き、同じ棟の人達と分担して預かった話を聞いて
今の私より若いのに咄嗟の判断力・行動力・連携プレイがすごすぎる……!
と敬服しました。母曰く三、四人の男児を預かり(乳飲み子の私は別のお宅に預けられていたそう。たぶん食う寝る欲さえ満たされていたら👌タイプで、人見知りをする月齢でもなかったのかと。)
「みんな顔見知りやったし、夏で暑かったから、とりあえず水浴び兼ねてシャワー浴びさせて、そうめん食べさせて寝かしつけただけやで」
とサラッと言うけれど、その人数を見るのは保育士でも大変やのに……やっぱり母は強し! と思いました。
育児に積極的なパパさんも増えているので盛り込んでみたのですが、この場合は
「何友になるんだろう?」
というのが個人的素朴な疑問です。
パマ友? マパ友? パマパマ?
親友は親友とも読めるし……
ひらがなで、おや友なんでしょうか?
モボ・モガどころか未だにDK・JKと性別で名称を決めるのも、もはや時代錯誤な感じもしますね🤔(なんとなくこういう略語は、良くも悪くも女性の方が浸透している感じもある……)
なんでや🤔 人類みんな友達ちゃうんか🤔?
となると、人友になるの……かな?
もうひとつの作品もよかったらどうぞ~
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