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「山城屋茶舗」のロゴができるまで

こんにちは。flowです。
このアカウントでは、今までの制作実績の制作過程をお伝えする、と言いつつなかなか更新できていませんでしたが、今回初めて記事を書きたいと思います。

先日、福知山の唯一にして老舗のお茶屋さんである、「山城屋茶舗」のロゴを制作させていただきました。

お店の改装に合わせてリニューアルされたこのロゴは、ありがたいことにご好評をいただいているようです。
今回はこのロゴが出来るまでの制作過程について書こうと思います。

最初のロゴができるまで

お店の改装に合わせて、ロゴを刷新したいというご相談をいただいたのが去年のお話でした。
山城屋茶舗さんとは、山城屋さんが販売されているカタログギフト 「ふくさん」のロゴデザインを制作させていただいたことでお付き合いがあり、そこから店舗のロゴのお話をいただくことになるとは思っていなかったので、とても嬉しくて舞い上がっていたのを覚えています。
「福知山の歴史あるお店のロゴを作らせていただけるのだから、絶対に良いものを作ろう!」と、その時から決心していました。


福知山の良品を集めたカタログギフト「ふくさん」

そして、お店の改装時期が近づいてきたということで打ち合わせを行わせていただき、本格的に制作に取り掛かったのが今年の3月。
山城屋茶舗さんとのヒアリングの内容をざっくりと箇条書きにすると、以下のようなものでした。

  • ガチガチの専門店感ではない

  • 街のお茶屋さん的

  • 親近感・親しみやすさ

  • 小洒落感が強すぎない

  • ポップさはない柔らかさ

  • 毎日をちょっと楽しく

他にも、ご共有いただいた参考資料や、お話した内容からこちらでキーワードを抽出したものなどを参考に、ラフスケッチを描いていくことにしました。
他の仕事と並行しつつだったので、短期集中で進めるというよりは、毎日少しずつ案を出していく形で作業を進めていきました。

そして、4月の頭に初回のデザイン案が完成しました。
それがこちらの案です。

今回の最終的なロゴとは違い、どこか家紋を彷彿とさせるような、いわゆる「老舗の日本茶専門店」のイメージを意識したロゴでした。
「お茶屋さんといえばお茶の葉」という個人的なイメージや、福知山の豊かな自然を強調したデザインで、現在のロゴとはかなり異なるものでした。

形や由来に関しては気に入っていたのですが、このロゴを印刷したり、山城屋さんの写真と合わせた時、どこかしっくり来ないような、不思議な違和感がありました。
その違和感の理由に自分では気づけていなかったのですが、後ほど山城屋さんからのフィードバックをいただいた時に気づくことになります。

「山城屋茶舗」らしさを表現する

初回のロゴをご提案した際、山城屋茶舗さんからはビジュアルに関してお褒めの言葉をいただいたのですが、それと同時に「山城屋茶舗らしさを感じられない」「どこかのお茶屋さんにありそうなロゴ」という2点が気になっている、といった旨のフィードバックをいただきました。
自分でも気づけていなかった違和感の理由はそれか!と、ずばり言い当てていただいたような気持ちになりました。

そして、今こうして改めて見ると思うのですが、初回のロゴは参考資料のトーンに引っ張られてしまい、ヒアリングさせていただいた内容のものとはどちらかというと逆のトーンになってしまっていました。
参考資料を参考にしすぎるあまり、客観性を失うことが度々あるのですが、それに気づけていなかったことも原因の一つだと思います。

違和感が明確になったことで、「まだ突き詰められるのではないか?」という、具体的な意欲も湧いてきました。
そこで、こちらから「もう1案をご提案していいですか?」とご相談をさせていただき、再びスケッチを走らせました。
山城屋茶舗さんのフィードバックがヒントになり、自分でも感じていた違和感の正体に気づくことができたので、そこから次の案に繋がるまではとても早かったです。

そして、翌日に再びロゴ案のご提案を行いました。
その際のプレゼンテーションの資料に添えた文章を、下記に原文のまま掲載します。


はじめに

前提として、前回制作したロゴデザイン案をお見せした際のフィードバックを踏まえて、このロゴをデザインしています。

前回のデザインは「創業110年を迎える福知山の歴史のある老舗茶舗」という部分を前面に押し出していました。
ただ、豊島さんからいただいたフィードバックの通り、「山城屋茶舗らしさを感じられない」「どこかのお茶屋さんにありそうなロゴ」という違和感は自分の中でもあり、現在の山城屋茶舗のSNSやホームページに当てはめてみても、どこかしっくり来ない違和感があったのも事実でした。

それを踏まえて、今回は「現在の山城屋茶舗に当てはめて違和感がない」「誰でもお茶に興味を持ってもらえるような親しみのあるデザイン」を意識してデザイン制作を行いました。

今回のデザイン

コンセプトは「暮らしの中に、お茶がある。」

このコンセプトは、ロゴのラフスケッチを行っている際に一番最初に頭の中に浮かんだものです。
山城屋茶舗さんのInstagramやSNSなどを見ていて思ったのが、「お茶が主役」なのではなく、「良い意味で日々の暮らしを感じさせる生活感があり、その中にごく当たり前にお茶が存在している」ということ。
そして、Instagramで使われている「日本茶で毎日の生活をちょっと豊かに」というキャッチフレーズ。
その近づきやすさこそが、山城屋茶舗さんを体現しているものだと考えました。

山城屋茶舗さんのInstagram

上記のコンセプトに沿って、改めてロゴマークについて考えてみました。
前回のロゴは「茶葉」「福知山の自然豊かな土地の魅力」を造形に落とし込んだものでしたが、豊島さんに再度ロゴのご希望についてお伺いしたところ、その中で「うちが茶園を持って茶葉を育てているわけではなく、農家から仕入れた茶葉を自店舗で焙煎やブレンドをしています。」というご回答をいただきました。
このことが大きなヒントとなり、一般的な「お茶」と聞いて思い浮かべる茶葉ではなく、お茶を注ぐ道具である急須をメインのモチーフに置くことを考えました。
急須は、以前の山城屋茶舗さんのロゴにも使われていて、発信される写真の中にもよく登場していることもあり、メインに配置することに違和感はないと考えました。

以前まで使われていた山城屋茶舗のロゴ

そして、ラフスケッチの当初から必ず配置したいと思っていたのが、「福知山城」を思わせる屋根のようなライン。
福知山城の存在は山城屋茶舗さんをイメージする上で欠かせないものであり、「福知山城の近くにお茶屋さんがある」ことこそが、山城屋さんの一つの魅力になっていると考えています。
また「福知山市」自体も「福知山城」があることによる観光的な側面は大きく、福知山という都市をイメージする際も、必ず誰もが福知山城を思い浮かべる、いわゆるシンボルマーク的な存在です。

その二つを組み合わせることに自分の中で違和感はなく、何度かスケッチを描いていくうちに自然と二つが一つになるようなマッチ感が出てきました。屋根を思わせるラインの下に急須を置くことで、「お城の下でお茶を飲む」≒「城下町のお茶屋さん」というイメージも暗に表現できるのではないかと思っています。
(余談ですが、遠目から見ると「暮らし」の「暮」の文字に見えることもあります)

書体の調整

シンボルマーク以外にも労力を費やしたのが、ロゴタイプに使用する書体です。
「山城屋茶舗」という文字を並べた時にしっくりと来る書体が意外に少なく、前回のロゴの際も書体の調整にかなり時間をかけていました。
その際に思ったのが、「老舗のお茶屋さんだから明朝体、というイメージを捨てる」ということでした。
明朝体に限ってしまうとどうしても使える書体の数が少なくなってしまいますが、ゴシック体も視野に入れることで、使える書体の数は大きく増えます。

手元にある書体で検討を繰り返した結果、「筑紫オールドゴシック」が山城屋茶舗の字面を表現するのに一番適していると考え、明朝体ではなくあえてこのゴシック体を採用することになりました。
この書体は「金属活字時代に存在していたかのようなゴシック体をイメージ」して作られており、その古めかしさが山城屋さんの佇まいともマッチすると考えています。

総括として

改めて山城屋茶舗さんの特徴や魅力、ロゴを通して伝えたいものを考え、今回デザインをさせていただきました。
前回、自分の中でも造形に落とし込みきれておらず、モヤモヤしていたものが、今回のデザインでは落とし込めたような感覚を持っています。
今回のデザインをご覧いただき、ご検討をしていただけますと幸いです。


この文章を書いている時、内心かなりドキドキしていたのですが、作り終えた時に「もうこれ以上ないと思えるくらい、やりきった!」という達成感と満足感があり、その感覚を信じようと思いました。
そして、そのままご提案をさせていただきました。

その後、素早いご返信をいただき、「すごくワクワクするデザインで、これで行きたいなと思ってます!」という嬉しいお言葉をいただきました。
その時の安堵感と、じわじわこみ上げてくる嬉しさは、言葉になりませんでした。

そして、晴れて5月1日に山城屋茶舗さんのSNSを通して、新ロゴがお披露目となりました
110年の歴史を持つお店のロゴの刷新の瞬間を目の当たりにし、受け入れていただけるか内心不安でしたが、リアクションが増えていくのを見るにつれ、だんだんと心が落ち着いていきました。

Instagramでのロゴのご紹介の最後に、下記のようなお言葉をいただきました。

「このロゴとともに、新たな100年を歩んで
いけたらと思ってます。」

山城屋茶舗さんの、新たな100年という大きな節目にこのロゴが寄り添えること。
制作した身として、これ以上なく嬉しいお言葉でした。

今のところ、デジタル上で展開されているこのロゴですが、今後、お店のカフェオープンに伴い、暖簾や食器など、展開される機会が増えていくとのことです。
そのイメージを想像しては、動悸が止まらない今日この頃ですが、新しい山城屋茶舗さんのチャレンジに伴えるよう、産んだ子を応援する親の気持ちになっています。
このロゴが今後、末永く山城屋茶舗さんの歴史に寄り添えるよう、心から願っています。

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今回、このような機会をご一緒させていただくことができ、とても幸せでした。
これからも、flowにご相談をいただいた全ての機会を大事に、制作を続けていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

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