古都春めく現代アート巡り~ARTISTS' FAIR KYOTO 2024~
1. 序文
「もうすぐ桜の季節……」
3月の花見スケジュールが気になり始めた頃。
「この機会にブログを書いて見たら?」と、
一週間後に京都で開催されるアートフェアのお誘いを受ける。
それはぐずついた心にはっぱを掛ける
天の恵みのように感じた。
数か月経つだろうか……
noteをしばらく更新できずにいたのだから。
そして
友人のご縁でいただいたチケットで、急遽、古都の旅へ。
その内容を聞いただけでも心踊る!
が……その前に難題があった。
1つは、「開催期間が短い」こと。
週末は、パブリックビュー3日間(金~日)のみ。
予定の調整ができたのは1日で、
やむなく「日帰り」で行くことに。
もう1つは、
「会場が京都市内の各所に点在する」こと。
すべてを観ようとしたら、数日はかかってしまう。
それでも、沸き起こる好奇心。
じっくり鑑賞したい!
多くの作品を観たい!
観光だってしたい!
京都らしい美味しいものも食べたい!etc.
うぅ……と悩んだ末。
タイムパフォーマンスを最大にするための周遊ルートを考えることに。
(有難いことに、プランはすべて委ねられる)
そして、苦業?を乗りこえた先には快晴の空と貫禄の古都、
冬眠中の心も春めく現代アートが待ち受けていた。
この記事では、アート鑑賞+京都市内観光の一日をリポート。
その様子を、桜より一足早い梅の絶景も添えてお届けします!
2. 京都タワーの借景で浄化【渉成園】
平日のように賑わう週末の京都駅に降り立ち、
徒歩で最初の目的地、渉成園へ。
でも、朝9時開園のはずが、
門の前にはアートフェアらしき看板もない。
チケットを見せると受付の方は首をかしげる……。
(アートでなく、他のイベント(ハンドメイド作品展示)が
朝10時から開催されるとのこと)
結局のところ、渉成園は展示会場ではなかった😿
(HPに過去の会場として掲載されていたのを、
今年と勘違いしてしまったらしい)
ここは、真宗大谷派の本山・真宗本廟の飛地境内地という
由緒ある庭園。そこにハンドメイドとは面白い組み合わせ。
後ろ髪引かれつつも、軌道修正をと
拝観料を払い、庭園散策へ。
〜ひと騒ぎして千載一遇の光射し込む〜
Calla
イベント開始前で、園内にはわずか数組の人々。
視界を遮るものもなく、自然で長閑な景色を鑑賞できた。
わびさびと文人的雅な精神が宿る建物。
日々の喧騒を忘れる 朝の清々しい景色‥‥
寝ぼけ眼冴え渡り、心も浄化される。
新鮮な空気を吸い込んで、
エネルギーチャージできたところで、いざ出陣!
次の目的地へ行くバス停に向かう途中に、
「Kaikado Café(開化堂カフェ)」を横切る。※まだClose中
3. 創造と革新のアート【京都国立博物館 明治古都館】
このアートフェアでは国内外で活躍のアーティストや
その推薦や公募で選ばれた新進気鋭のアーティストが出展している。
この会場では33名程のアーティストが作品を展示。
個人的に嬉しかったのは、
アーティストに直接お話を伺える機会があったこと。
ギャラリーを通さないスタイルで作品を直接購入できるとともに、
その作品への想いを直接聞くことができる。
制作した本人が語る言葉との相乗効果によって
作品がより魅力的に感じられた。
(会場内写真撮影可。以下、許可を得た上で撮影)
身近なものからアートは生まれる。
↓ 何が隠されてるでしょう?
↓ カーペット?のような風合いに、一瞬で目を奪われる。
遠目だと「お洒落なゴブラン生地」のよう。
近寄ると「隠し絵」が浮きでてくるかのよう。
↓ 北斎の鳥瞰図のような古典絵画のように見えるけれど、
現代アートの精神を感じる社会風刺と
今話題の伝説の怪獣が隠されていた。
【西垣 肇也樹さん】
ズームアップすると、享楽的に酒を飲みかわす人々が見えてくる。
これは、危機がせまりながら、のうのうとしている現代の日本人を
象徴しているとのこと。
手前には、近代化の象徴として、天高くそびえるNY高層ビルが建つ。
時代ごとにゴジラが違うように、どの時代が良い悪いというのはない。
現代の世相を俯瞰した自身の考えを、風刺というユーモラスな形で、
古典絵画のオマージュを取り入れて描写しているとのお話もあった。
他にも、この絵の中には、様々な社会問題、その意味が込められている。
作品とのつながりを語るご本人の雰囲気やその言葉、表現の世界観、
すべてが相まって、創造と革新のエネルギーがみなぎっていた。
今回の展示作品を(頭の中での構想は別として)
2週間程度で描きあげたというのも驚く。
視覚的な絵画としての魅力もさることながら、
そこに込められた意味が明かされることで、
作品のパワーや面白さが次々と湧きだしてくるようだった。
ブログを書きたいとお伺いを立てると、
「全部晒してください!」とのお言葉をいただき、
ページを割くことに。今後のご活躍にも期待!
噴水の向こうで待つ送迎車に乗り込み、次の目的地へ。
4. 古刹×現代アートの大作【音羽山 清水寺】
清水寺に西門に着くなり、飛び込んできた大作。
(この会場では、第一線で活躍のアーティストの作品が展示)
「古刹×現代アート」だけに
1000年以上の時を経た古刹にも引けを取らないほどの
存在感あるアートと、そのコラボレーションの情趣を味わう。
↓ 黒猫のアートの前に、
写真撮影を待つ人が次から次へと集まってきて……。
↓ お寺の前に横たわる巨大な伝統こけし
モアイ像?のような人形と目が合う……。
空気はひんやり、陽射しは温かいこの日
快晴の空には、かすかに舞う粉雪が。
(そんな素敵な一瞬をスマホで映し撮れず😿)
↓ 次に、普段は非公開の「成就院」へ。
「月の庭」とも称される名庭と書院に展示された現代アートを鑑賞。
(作品以外(庭や建物)の撮影は不可)
伊達靖子「Untitled 2023-06」(左)
水の流れや木漏れ日輝く情景を描いた作品 鶴田憲次
「-niwa-2023 水「天川村 川迫川」」(右)
清水寺を後にして、
多くの人が賑わう清水坂〜五条坂を下り、清水五城駅へと歩く。
(この時期、混んではいても身動き取れないほどではない)
駅から2分の鴨川沿いにある「川間食堂」へ。
天気も良いので、テイクアウトでもよかったが、
窓際の席がちょうど空いていてラッキー。
店内の壁には、いくつか目を引くアートが飾られていて、
小さなカフェのようにリラックスできる。
実際もカフェだけど、店名からは想像できなかった。
時計を見ると、午後1時を経過。
電車で次の会場へと急ぐ。
5. 時と場が重なりゆくアート【蔦屋書店 アートウォール】
わぁ~!と一瞬で心掴まれる。
統一感あるインテリアに、書棚が整然と配置されていて、
様々なスペースにアート作品が飾られている。
フロア内のギャラリーでは個展も開催されていた。
アートと文化の「伝統と最先端」が共振する場として
2023年10月オープンした「京都 蔦屋書店」
時代にあわせて、本屋さんも新化してきている。
個展 constancy of space @蔦屋アートウォール
【前田紗希さん】
幾重にも重なりあう三角形と青の色彩。
どこか潔さのある作品を目の前に、神秘的なパワーを感じる。
なぜ三角形なのか?その理由も気になり、
作品の背景を伺う。
作品は、コンセプトやモチーフを意識するのではなく
その時その場で自分の内側から出てくる
感覚的、抽象的なものをペインティングナイフのみで削り、
何十層も油絵具を塗り重ね、
「時間の堆積と境界」を表現しているのだそう。
(境界線は、マスキングテープを使用)
~三角形について~
極限まで削ぎ落として最後に残るのが三角形。
多角形の中では最小単位で、普遍的なものだと言う。
↓ 青のグラデーションが目を惹く
色は、物が光を反射した色が見えているだけで、
その見え方は変化するもの。だから、色より形。
極限までシンプルにした三角形が重要だという。
一方で、絵をどう解釈するか、その印象をどう感じとるかは、
ある程度鑑賞者に委ねられるものだと話す。
三角という丸みのない鋭い形、寒色系の色の重なりは、
機械的、人工的な印象を与えそうなのに、
自然の中にいるような安らぎを感じる不思議。
個人的には、青とモノトーンという配色が
生命の源、地球や海に。
近づくと、ラピスラズリの原石のようにも見えてくる。
縦の皺は白樺の木肌のようでもあり、
表面の光沢感は、反射する光の揺らぎのように。
それは、カオスに覆われて見過ごされている
極限の中で宿るエッセンシャルな存在を可視化するようで、
そこに大きなロマンを感じた。
リモートとリアルで人の印象が変わるように
この感動は、二次元でなくリアルで
目の前で見て肌で感じられるものだと思う。
「説明することで整理されるんですよ」と、
謙虚に答えるご本人の言葉と、
日々、真摯に作品に向きあい、制作に励む姿が重なった。
自然体で親しみある雰囲気にも癒されながら作品を鑑賞。
帰りがけ、
祇園四条駅前の「nikiniki」でお土産を買い
(伝統的八ッ橋の新しい楽しみ方を提供しているお店)
電車で次の会場へ
6. アーティストスタジオを見学【A.S.K-Atelier Share Kyoto+Alt Space Post】
アーティストの作品制作現場に潜入できる
オープンスタジオプログラム「OPEN ARTIST'S STUDIO 2024」
6つのスタジオからその一つ
「A.S.K-Atelier Share Kyoto+Alt Space Post」へと向かう。
話に花が咲き、乗り越しUターンした末、西京極駅に到着。
時間が押してきたため、タクシーを貸切ることに。
若木さんの展覧会案内はがきの
洒落たコピーとユーモア溢れるテーマも気になった。
他にも、海底に沈む貿易船から発掘された
様々な国の陶器の破片の絵柄を版画で再現したアートなど……
数名のアーティストの作品や制作の様子を見学。
タクシーで次の会場へ。
7. 小粋な町屋に和むアート【Artist-in-Residence 賀茂なす】
町屋造りの小粋な喫茶Bar
店内はムード一杯🥂、和みの空間に心安らぐ。
今回の展示は、アーティストがそれぞれの表現を通して
交流を行う場面を動画化するという試験的アーカイブをスタートする
お披露目の機会も兼ねたグループ展。
ネットワークの活性化、新しい文化のあり方を目指しているとのこと。
(会場では、アーティストが作品について語る動画が上映されていた)
靴を脱いで2階へ
午後4時20分を経過!
ここまで駆け足することなく鑑賞してきたが、
ついにピンチを迎える。次の会場は17時まで。
ダッシュでバスに駆け乗り込み、烏丸五城駅へ。
そこから東西線で丸太町へ向かう。
8. コンセプチュアルなアート【京都新聞ビル→Cafe.S】
16時50分に滑り込み到着。
残り10分!
昭和の香り漂うソファーや通路を抜け
階段で地下1階の会場へ。
そこは、お化け屋敷のように
あのゾクゾク、ワクワクした懐かしい感覚が蘇る。
暗闇にネオンが光り、機械音が鳴り響く。
コンセプチュアルなアートだけに
掲示された作品の解説を読まないと理解するのは困難。
結局、それを読む間もなく、終了のメロディーが流れる。
ぐるりと一周してその雰囲気を味わい、次の会場へ。
18時までだから、時間は十分ある!
急いでタクシーに乗り込み「Cafe.S」へ。
この敷地内には、3つの会場がある。
Cafe.Sに入る前に、隣の「MtK Contemporary Art gallery」を鑑賞。
Cafe.Sの2階、離れの会場へ
「浮遊感」
異国の地から空港に着陸したばかりのとき(入国に至るまで)に経験する、
まだ現実とは思えないようなぼんやり曖昧な感覚を表現しているとのこと。
(理解できそうで理解し難い、ありそうでも曖昧に思える
抽象的な感覚を表現しようと力を注ぐ現代アートの世界)
ここで、あの「Arrival」のサインの意味に気づく。
飛行機から降りた後に経験するであろう「浮遊感」の中、
空港内を歩くシチュエーションを演出しているのでは?と。
↓ 最後に、Cafe.Sの店内へ。
カフェのインテリアアートのように展示された作品。
「mtk+vol.18/川村摩耶」
【川村摩耶さん】
9. 南禅寺エリア→梅鑑賞(北野天満宮)
Cafe.Sからほど近い南禅寺エリアへ。
夕食の予約をしたお店の向いに、
素敵すぎるブルーボトルコーヒーが。
「料庭 八千代」で美味しい湯豆腐を!
お腹を満たしたところで、
タクシーで梅の名所 北野天満宮へ
北風が吹く暗い参道を歩くうちに
豆腐で温まったはずの身体が一気に冷え込む。
梅花の歌で有名な学問の神様
菅原道真を祀る全国天満宮の総本社
連歌師の松永貞徳が作庭したという「雪月花の三庭苑」の一つで、
約50種1500本もの梅の木がライトアップされる「花の庭」が公開。
タイムパフォーマンスとの闘いを終え、
フィナーレを飾るのは梅の庭園✿
入口から幽玄な世界が広がる。
この後、さすが京都と思える演出の数々に感動することに。
庭園入口では、老松の和菓子「菅公梅」と梅昆布茶が
1人1人に手渡しで配られる。
入苑料に込みだとしても、嬉しい茶菓子のおもてなし。
海外の方を殆ど見かけなかった……何故だろう。
桜より梅の方が、もっと古風な日本を感じられるのに。
10. まとめ
朝9時~夜9時頃まで1日かけて巡った
「ARTISTS' FAIR KYOTO 2024」+(市内観光)
一般的な美術館での鑑賞スタイルとは異なり、
京都市内を歩きながら巡るので、
ちょっとした観光も楽しめる。
(気づけば1万7千歩!……いいエクササイズに)
その土地柄、それぞれの会場の特徴によって、
展示スタイルも工夫され、そのコンセプトにも
バリュエーションがあるところが面白かった。
短い開催期間なので、作品の全てを観尽くすなら、
せめて2日+事前にプランニングをしておきたい。
今回のルートは、京都新聞ビルでは短時間で涙を呑むも、
梅シーズンの京都を味わい尽くすことができた。
AIやDXなどの文明の利器を活かしながらも
一方で、近代化に抗うように
長い歴史の伝統や風格を今も大切に守り続けている京都。
梅のライトアップ一つにも、アナログな演出で人々の心を動かす。
現代アートも一つのアナログな世界と言えるだろう。
(AIもデジタルアートも人の創造力の賜物)
ときに、多くの人々が理解し難く封印をしているような
抽象概念や社会風刺を表現しようと力を注ぐ。
それは、AIやデジタルの便利さで新しい時代を切り開くだけでは、
制御できないもの、失われる大切なものを補うように、
人が創造力で生み出すエネルギーの結晶でもある。
自分もChatGPTに負けないように
……と、悦に浸りながら、
帰りの新幹線は、いつの間にか深い眠りに落ちていた。
いつか、春爛漫な心でアートを身近に過ごしてみたい……
そんな浮遊感を味わいながら。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?