学校事務職員とは、

 みなさん、学校事務職員を知っていますか?

 僕は、この職に就いて6年目になろうかという年になりましたが、あんまり知られていない気がするので、紹介しようと思います。

 簡単に言うと、先生方が学校でやっていること以外の仕事を担当しています。具体的な「標準的職務」と呼ばれる業務について説明します。
 ①庶務に関すること
 ②学務に関すること
 ③人事に関すること
 ④給与・旅費に関すること
 ⑤福利厚生に関すること
 ⑥経理に関すること
 ⑦管財に関すること
実はもっとあるのですが、大まかにはこんな感じです。

①庶務に関すること
 例えば証明書の発行や文書管理、調査に関わるようなことが当てはまります。特に「文書」は、最重要事項だと考えています。当たり前ですが、文科省や県・市等からの通達や連絡事項のほとんどが「文書」になります。そのため、少しでも担当者へ届くのが遅いと、学校全体の業務が遅くなってしまいます。そうならないためにも、届いた文書をいち早くチェックすることを心がけています。主に注意していることは、「日付」と「内容」です。「日付」とは、「締切」や「文書発行日」のことです。民間よりも「締切」は、短いことが多いです。ゴールが文科省の場合、長い道のりを覚悟しなければなりませんからね。「文書発行日」を見るのは、最新の内容かどうかです。ある事務処理の取り扱いが変更になる場合、「文書発行日」の順番によって、チェックしなければなりません。令和3年5月に新しい文書が出ているのに、令和2年4月の文書のとおり事務処理をしていては、正しい仕事はできません。だからこそ、「文書」は最重要事項なのです。実感として、文書管理をスピーディーに熟せるようになるには、非常に時間がかかりました。自分だけでなく、誰がどんな仕事を担当しているかを分かっているかどうかで、スピーディーさは変わっていくからです。人間ですので、色んな性格の方が職場にはいます。この人にはこう伝えた方が、あの人にはああ伝えた方が、、、というのが結構あるのです。メモで伝えた方が伝わりやすかったり、口頭の方が伝わりやすかったり、何も言わなくても勝手にやってたり。正直、学校事務をやっていると、職員一人一人の性格や細かい癖に敏感になります。最初は、「あの先生めんどくさいなー」と心の中で思っていましたが、段々、要領を得てきたのか、そのことが楽に物事を運んでくれる要因になっていきました。つまり、僕が思ったように、彼らが動いてくれるような行動や言動を取れるようになってきたのです。おそらくこのことを「根回し」や「配慮」と呼ぶのでしょう。以前の学校では、先生が100人近くいましたが、100人が僕の掌で動いてくれるのを俯瞰して視れるのは、壮観でした(笑)

②学務に関すること
 「就学援助」に関わることや「教科書」に関わることが主になります。「就学援助」では、県や市によって取り扱いが変わってくるので、なかなか中身を説明することは難しいですね。要は、子どもが学校で勉強する環境を整えるために、経済的に県や市がサポートしてくれるサービスです。僕らの市町では、就学援助の申請から請求までを担当しています。実際の支払いは市がやっています。そのため、市との連携が大切になってきます。ただ、一番重要なのは、保護者の方への説明責任や歩み寄りだと思っています。正直、就学援助の内容は難しいです。一つ一つ説明しても保護者になかなか伝わらないこともあります。優しく噛み砕いて説明する必要があります。また、保護者の経済的状況の把握も少なからず必要かなと思っています。結局のところ、子どもが満足して教育を受けられているか、です。そこが上手くいっていなければ、就学援助のようなサポートを受けるべきだと思います。そのことを保護者とよく話し合うことが大事なのです。僕は、今まで何十人の保護者様とお話させていただきまして、子どもの状況や保護者の思いに関して、相談を受けてきました。中には、保護者の私利私欲(パチンコ等)のために、子どもへの教育的費用が不十分な家庭も数件ありました。家庭のことなので、あまり踏み込むべきではないのかもしれませんが、一言二言述べさせていただいたこともありました。そうすると、「お前は子どもがいないから気持ちが分からないだろ」などといった暴言を吐かれたこともありました。確かに、まだ僕は保護者の気持ちが分からないのかもしれません。しかし、そういった保護者には、必ず「子どもの顔を見てあげてください」と言っていました。僕の言葉より、子どもの目や態度の方が伝わると思ったからです。なかなか効果のある殺し文句のようで、改めてくれる方が何人かいました。「教科書」については、文科省および県・市から指定されたものを子どもたちに、滞りなく支給しています。一冊でも足りないと大問題です。だからこそ、半年以上かけて翌年の教科書支給の準備をしています。転校などが発生すると、その都度相手校の教科書支給の状況と比べて、ちゃんと次の学校で教育が行えるように、細心の注意を払わなければなりません。僕は、子どもの頃、こんなに大変な仕事がなされていることを知らず、平気で教科書を破ったり、汚したりしていました。学校現場で働くようになって、教科書一冊に物凄く慎重に取り扱っていることを知り、大きな感謝を覚え、同時に申し訳ない気持ちになりました。「学務」では、学校事務では数少ない、直接子どもの教育に関わる業務となります。他の業務も大切ですが、特に気を付けて対処しなければ、子どもの学びに穴を空けてしまいかねない業務となります。

③人事に関すること
 教育関係職員の採用・退職・転出入・服務に関わることになります。正規職員に関しては、直接採用しているわけではありませんが、異動になる場合の様々な事務処理を担われています。また、非正規職員に関しては、校長や教頭の判断に従って、採用等の事務処理をしていかなければなりません。「人事」が上手く処理されないと、自分も含めすべての職員が安心して、職場で仕事することができません。「人事」と一口に言っても、単純なものではありません。採用している県や市との連携が大切だからです。僕らが良くても、県や市がダメであれば、事務処理が滞ってしまいます。そのため、大抵学校事務職員の3月4月は、超繁忙期となります。運が悪いと、かつてないほどの残業月となってしまいます。実は、先月・先々月の僕がそうでした(笑)基本的な業務はマクロ等で自動化が可能なのですが、こういった「人事」に関わることは、突発的で自動化しづらい分野にもなるので、なかなか読めず大変なのです。

④給与・旅費に関すること
 これは想像しやすいかもしれませんね。給料や諸手当、年末調整や住民税、出張費用の清算に関わることが主となります。僕らがしっかり職員の給料等をチェックしないと、間違った支給をしてしまうことになるため、とても慎重にならなければなりません。貰い過ぎも、貰わな過ぎもいけません。すべて国民の「税金」だからです。③「人事」の「服務」でも同様なことを感じているのですが、特に先生方は、自分の権利に気付かないことが多い印象です。やはり子どもを一番に考えている方が非常に多く、年次休暇等の「休むことができる権利」や「申請することができるはずの諸手当」に無頓着な方が多いです。初めのうちは、自業自得だと僕は思っていました。しかし、段々先生方の子どもへの思いを知るうちに、これは仕方のないことなんだと思うようになってきました。むしろ、僕がこの先生方をサポートしていかなければと考えるようになったのです。僕は、先生一人一人の家庭事情から細かい性格等まで知っています(笑)だからこそ、必要だと思うことを提案することで、先生のサポートをしていこうと思ったのです。このサポートを積み重ねることで、相乗的に子どもにもさらに良い影響を与えられると思うからです。単純ですが、先生の顔に余裕があればあるほど、子どもも安心して教育を受けられると思うんですよね。先生の辛そうな顔を子どもが見たら、それって悪影響じゃないですか。だから専門的知識のある学校事務がこういったサポートをしていくことで、先生を元気にしていって、子どもの元気やモチベーションに繋がっていってほしいなと思っています。

⑤福利厚生に関すること
 こちらも前述の給与や諸手当等に関する先生へのサポートと同じですね。少しでもプラスになるようなことを提案して、その先の子どもの元気を想像しています。特にこの分野は、なかなか先生方も解らないことが多く、大変損をしやすいものになっています。逆に、色々知っていれば、非常にお得なので、職場全体への共有や個人への提案を定期的に行って、すべての職員が、充実した福利厚生を享受できるよう努めています。

⑥経理に関すること
 簡単に言うと、「学校のお金」の管理ですね。僕的には、一番大好きな業務です。なぜなら、少ない予算の中で、いかに子どもに最大の還元ができるかを考えながら執行していくことができるからです。ただの数字のにらめっこは嫌いなのですが、その奥に学校の施設や子どもたちの状況が視えてくると、俄然面白いんです。狭い箱の中にパズルをはめていくような楽しさがあります。子どもの声、先生の声、保護者の声、地域の人の声、業者の人の声、学校の施設の至る所の状況の把握、、、それらを統合して、お金を使っていく。まるで推理小説のようでもあって、非常にワクワクします。本当のことを言うと、もっとお金が必要なんです。修繕するところや、必要な教材なんかがいっぱいあるので。しかし、それは今の市町の状況、果ては日本の状況を鑑みると、仕方のないことなので、あるものでなんとかしなければなりません。ただ、それが面白いのです(笑)

⑦管財に関すること
 主に学校の施設の管理です。新しい学校、古い学校、色んな学校があります。新しい学校には、新しい学校ならではの悩みがあります。古い学校には、古い学校ならではの悩みがあります。そういったものを管理するのも、学校事務の業務となります。新しい学校では、「こんなつもりじゃなかったー」的な問題がよくあります。例えば、事務職員の事務室を無理して作ったことによって、先生との情報交換の時間が減少してしまったり、そのために部屋が一つ無くなってしまったり。作ってしまった後なので、なかなか直せないんですよね。もちろんメリットも多いんですが、デメリットが致命的だったりして、悩んでいる事務さんがいました。デメリットもしっかり考えることが必要だと実感しました。古い学校では、電球(LEDではない)を変えても全く点かなかったり、至るところで機械が壊れかけていたり。正直多すぎて、年間予算ではなかなか直せなかったり、新しいのが買えなかったりするんですよね。市に訴えることもありますが、なかなか通らないのが常です。だからといって、子どもにとって危険な状態があるのであれば、取り除いていかなければなりません。優先順位をしっかりつけて、やっていくしかありません。


といった感じで、ざっくりと学校事務の仕事を書いてみました。「学校事務」は思ったより、多種多様な仕事・業務を行っています。否が応でも、全体を俯瞰して視えるようになります。そんな全体を視る「目」と先生方への「根回し」がこの5年間で培われてきて、学校事務がとっても面白くなってきたところであります。特に「根回し」は、コーチング的な会話も多く、現場でコーチングが大活躍しています。

 「学校事務」は業務だけみると、仕事さえできればという風に見えるかもしれません。しかし、今の子どもに即した対処をしていかなければならない状況で、ただPCとにらめっこしているだけでは、効率的な仕事とはなりません。どうせ定型的な仕事は、AIなんかが自動化してくれることでしょう。だったら、僕ら専門的知識を持っている学校事務にしか視えない「目」で、現状を捉え、的確な業務を他の職員たちとの対話の中で生み出していけるような働き方をしていくべきではないでしょうか。少なくとも、僕はそんな風に学校事務を考え、仕事をしております。

 長文を読んでいただきありがとうございました。今回は、「学校事務」の仕事について書いていきました。次回は、「事務職員は、事務をつかさどる」ということについて、突っ込んで書いていきたいと思っております。

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