12月25日(月):認知症ケアのための「話し方」
先週に製薬大手エーザイの認知症薬「レカネマブ」が発売となったことを受けて、最近はそれに付随したことに触れていますが、その続きをもう少しばかり。
レカネマブは保険適用になったものの、実質的な投与対象者は認知症患者全体の1割未満といわれており、かつ副作用のリスクや通院負担を考慮すると、社会課題となっている認知症に対しては薬物療法だけに頼るのではなく、非薬物療法でのアプローチも不可欠です。
そのなかで非薬物療法としての運動やアート、対話がもたらす認知や記憶についての効能に順に触れてきましたが、本日はこの対話についての補足になります。
認知症の方をケアするための対話でポイントになるのが「話し方」だといいます。
適切な話し方で対話をすれば認知症の進行を抑制できる一方で、誤った話し方を重ねていくことで認知症がさらに悪化をしてしまったり、介護をより難しくしてしまうことがあるから要注意です。
例えば書籍「認知症が進まない話し方があった」には、高齢者病棟で25年以上勤務をされた医師の方がまとめた話し方のポイントが記載されています。
詳細は本書に譲りますが、そのなかで認知機能を上げるための話し方としてキーワードに挙げられているのが「情動」と「肯定」です。
簡単に説明をすると情動は一時的かつ急激な感情のことを指し、怒り、喜び、悲しみ、恐怖、不安などの激しい感情の動きにあたります。
認知症は脳の機能が低下をして、これまでできていた記憶や認識、行為などが難しくなっていきますが、それでも感情はそのまま残っています。
だから嬉しい、楽しいといった良い情動を体験することで認知症の方の困った行動が少なくなり、症状の進行が抑制される点が説明されていました。
こうした良い情動とあわせて大事なのが前述した肯定です。
認知症の方に起こる例として、つい先ほど食事をしたばかりなのにそれを忘れてしまい、食事の催促や確認をしてしまうといったケースはよく聞かれます。
この時、認知症の方にとっては記憶がないので、実際に食事が胃の中に納まっていたとしても、本人にとっては「食事をしていない」状態です。
その認識の違いに対して周囲が強く否定をしてしまうと、本人にとっては「正しいことを嘘だと言われている」のと同じなので、相手に対する不信になります。
前述したような否定が繰り返されていくと認知症の本人はコミュニケーションに絶望感を抱くこともあり、その結果としてコミュニケーション自体を避けるようになるといいます。
これによって他者とのコミュニケーションや行動をともにすることが少なくなり、認知機能のさらなる衰えに拍車をかける悪循環に陥る点を指摘していました。
それゆえ否定ではなく肯定から入ることが、相手との関係性を結ぶ入口であり、ベースだと説いています。
ここまでに触れた「情動」+「肯定」による対話ができると、認知症をケアする非薬物療法に寄与する面が大きいので、話し方のポイントを押さえていくのも大事だと思います。
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