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12月21日(木):認知症には非薬物療法としての運動も大事!

昨日に製薬大手エーザイの認知症薬「レカネマブ」が発売となったことを受けて、この数日はそれに付随したことに触れていますが、その続きをもう少しばかり。

レカネマブは保険適用になったものの、投与の対象がアルツハイマー病に限られ、かつ「軽度認知障害」と「軽度の認知症」の方に規定されているので、実質的な対象者は認知症患者全体の1割未満といわれています。

また昨日にも記したように製薬会社の治験結果によれば、およそ10人に1人の割合で脳がむくんだ状態になることや脳内でわずかな出血が起きる副作用のリスクがあるほか、一度治療を始めると患者は2週間に1度、原則1年半の間、点滴を受ける必要が出てくるなど通院負担も小さくありません。

そのため社会課題となっている認知症に対しては薬物療法だけに頼るのではなく、セットで考えるべきは非薬物療法だろうと思います。

そんな非薬物療法は運動やアート、対話など幾つかの選択肢がありますが、現状でもっとも効果が実証されているのが運動でしょう。

認知や記憶に関して例えば昨年にベストセラーになった書籍「運動脳」をはじめ、10年以上の前の書籍である「脳を鍛えるには運動しかない」でも「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質に言及しながら、その効果について説明をしています。

BDNFは脳細胞が有害な物質などによって傷ついたり死んだりしないように保護するほか、脳の細胞間のつながりを強化して学習や記憶の力を高めたり、脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる働きがあります。

そんなBDNFを増やす自然な方法が運動であり、心拍数がある段階まで増えるとBDNFが大量に生成される仕組みになっているといいます。

なお心拍数を高めるという意味では有酸素運動が有効ですが、記憶の種類を含めたトータルでいえば、やはり有酸素運動と筋力トレーニングの両方を取り入れるのが一番良いと提示されています。

単純な暗記能力はランニングによって高まる一方、顔と名前を一致させるような「連想記憶」は、筋力トレーニングで高まる面があるからです。

また自信や不安などのメンタルヘルスに関しては神経伝達物質であるセロトニン(悩みや不安を和らげる鎮静作用)、ノルアドレナリン(やる気や集中力を促す)、ドーパミン(意欲や活力の作用)の観点から説明がなされています。

これらの物質は運動によって分泌が増えるだけでなく、定期的に運動を重ねていくことで徐々に分泌される量が増えていく良さもあります。

非薬物療法である運動の良さは副作用などのリスクがないことと、特定の医療機関へ通わずとも日常のなかでそれができることです。

またレカネマブの価格は患者1人あたり年間およそ298万円と設定されており、保険適用になったとはいえ相応の自己負担が伴います。

それに比べればフィットネスクラブに通って、しっかりサポートをしてもらっても月に1万円程度ですから、そのほうがはるかに建設的な自己防衛だろうと思います。

認知症の非薬物療法でいえば、運動はその効用の大きさと付随する副産物も多々あることを考えると最右翼といえそうです。

明日も関連の話を続けます。

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