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吹き出物

二週間程前に、
私の顎の下に小さな吹き出物が出来た。

最初の頃は赤く腫れ上がり、痛みを帯びていたが、最近では乾燥して痛みは無くなり、代わりと言ってはなんだが、愛着が湧いてきている。

無意識のうちに、これを触り、どこか落ち着いている自分さえいる。

早く治れと思っていた当初の自分の気持ちをたまに憎く思うことがある。
消えないでほしいとさえ思う。

学生時代に一緒に馬鹿をした友人が立派な社会人になり、父親になっていくような気持ち。

久しぶりに会った両親に皺が増え、老人になっていくような気持ち。

昔遊んだゲーム機が使えず、ただのガラクタになっていくような気持ち。

全て違うようで全てがどこか似ている。

時間が流れるとは、そういうことなのかも知れない。だとすればそれは残酷そのものだ。

私はこれを書きながらも、顎下に出来た吹き出物に触れている。

きっと消えるその瞬間まで浸るに違いない。

取り残されるとはそういうことだ。

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