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スポーツ嫌いが「SLAM DUNK」を読みました①

この記事はネタバレを含みます。
今さらではありますが…(^▽^;)

「SLAM DUNK」読み終わりました。
「少年ジャンプ」の連載が始まったのが90年ですから、30年遅れです(笑)。
きっかけはありまさの常連さんから
「本当に読んでないんですか? アニメも? 映画も見てない?!
それは…頼むから読んで下さい。画期的に面白いんです。なんならここに全巻持ってきます」

と言われ、この男性は以前から好きな映画のお話などをすると私達と好みも近く、年代も近く、
そんな方がそこまでおっしゃるなら…と重い腰を上げたのです。

大切なもの貸して頂くのは申し訳ないので(万が一汚したりしても…)、
まずは図書館で借りることにしました。

そのお客様は帰りがけに、
「あ、言い忘れましたが…ラブコメは好きですか?」
それほど好物ではありませんが…。
「でしたら冒頭はそれほど面白くないかもしれません。スラムダンクは、はじめの数巻で挫折する人がけっこういるんです。試合が始まってからはノンストップで読めるんですが…。
とにかくはじめは期待しない。あるいは飛ばしてもいいです。3巻目くらいから読みはじめて、あとで1巻に戻るとか。
大人はそれでいいと思います」

了解です。
私達はこのお客様を全面的に信頼し、図書館で 3巻から借りることにしました。

結論から言うと…
私はバスケットボールに興味が無いのに、もっと言えばスポーツにほとんど無関心なのに、全31巻、最後まですごく面白かったです。
作者の井上雄彦、すごいなあ!!
この作品が世界的にヒットしたのはとにもかくにもキャラクターの魅力だと思いますが、先の見えないストーリー展開、名セリフの多さ、少年漫画だけれど大人もきちんと描かれていて組織論としても考えさせられる…など
いろいろな角度から楽しめるのに驚きます。
お話が進むうちにどんどん絵が洗練されて、描線やこま割りが独自性を獲得していく様子にも感動しました。

私はとにかく体育とか運動とかスポーツが苦手で、スポーツ漫画は小学生時代に読んだ「キャプテン翼」のみ(静岡県民でしたので)。
バスケットのルールもうっすらとしか知りません。
ですが「SLAM DUNK」には本当に引き込まれて、今も何回も読み返していて(笑)、諸々思うところがあったのでそれを書いておきたいと思います。

この作品に関しては関連書も多数出ていますし、世界で(特にアジアで)大人気ですし、すでに 語り尽くされていますよね…。
今さら蕎麦屋のおばさんが何か言ったところで二番煎じ三番煎じとは思いますが、当店はふだん一番だししか使わないということに免じて(……)、感想の「それ聞いた」「どっかで見た」感についてはご容赦下さい。

あと回しになった1巻。
主人公・桜木花道の髪型に懐かしい90年代の香りがします。
新装版では省略されていますが、こちら☝のジャンプコミックスでは読める
「一話ごとに差しはさまれる一コマ漫画」が大好きです♡

感動ポイントは沢山ありましたが…
まずは主人公の桜木花道が「大好きなこと」「大好きな人」に出会う喜びが余すところなく描かれていること。
勉強ができない、女の子にモテない、多分家庭的にも恵まれていない高校生が、好みの女の子に誘われてバスケ部に入ることに…。
もともと身長が高く、手が大きく、身体能力が高い。そして根拠のない自己肯定感を備えているというアドバンテージはありますが、とはいえ全くのバスケ初心者。
ルールは知らないし、興味がないから当初は練習にも熱心ではありませんでした。が、そんな彼がチームに迎えられ、チームメイトに揉まれ、監督にしごかれ、試合を体験するうちにどんどんバスケットの面白さに目覚める…。
上達することで、周囲から必要とされる喜びも知る。
ただのハッタリだった自称天才が、努力をすることで本当に一目置かれるようになる…。
自分が成長できる場、尊敬できる師や仲間を見つけた人の生命の喜びが充満した漫画です。
ラストシーンの花道は大怪我をして過酷なリハビリ中ですが、まだまだしんどい治療が続くようですが、やるべきことが明確なのですっきりした顔をしています。
打ち込めることがあるって、無敵…。
何かを本気で目指すって、こんなにも楽しい…。

つまり、これはバスケットというスポーツがモチーフですが、試合の勝ち負けというよりは人間の再生のお話なのです。
多くのひとは人生で「怪我」をしていて、つまり上手くいかなくて、そこをどう切り抜けるのか、どうやって立ち直るのかを模索する七転八倒の日々を送っています。
だからこそ欠点だらけで不器用なキャラクター達に共感し、ともに戦っている気持ちになり、生き方のヒントをもらったり大きな励ましを得ることが出来るのですね。

そもそもこの「SLAM DUNK」は、スポーツ漫画ですがそれほど「勝ち」にこだわっていません。
勝利への意志、あきらめないことの大切さが丁寧に描かれていますが、明らかに「試合で勝つこと」よりも「自分に克つ」ことが大事にされていて、実際作者は花道の所属する湘北高校に県大会でも全国大会(インターハイ・IH)でも優勝させていません。
IHの3回戦は花道が出られなかったでしょうから、もはやチームの深層心理にとって勝つことはそれほど意味がなかったのだと思います。
2回戦の山王戦で、花道も、流川も、赤木も、三井も、宮城も、そして監督も、それぞれの人生のリベンジを果たしているのです。
仲間とともに、仲間がいたから、運命の借りを返せた。
精神がバージョンアップして自分を認めることが出来た。
だから次のステージに進める。
トーナメントには負けたけれど、それまでどうしても開かなかった心の扉を開け、自分の限界を突破することができた…そういう「勝利」が大切なんだ…というふうにも読めます。

山王工業に勝っても
ケガは治るか分からないし、(次で負けたから)大学の推薦はなくなるし、身長のハンデどうしようもない、
ライバルは沢山いるし、体力はないままだし…
それぞれ問題はあるけれど、最終的にいろいろなことが解決しないままなのは、すっきりしないようでいてそこに「課題」があり、目標があるから。
つまりそれぞれの、生きる目的がある。
そしてそれに挑戦できることが、嬉しい。
だからおのおの面倒くさいことを抱えて道半ばだけれど、全員に爽やかな納得があるのだと思います。
(ちなみにこの作品は相手チームについてもきちんと描かれていて、この手ごわい相手がいたからこそ湘北は真の成長を遂げられたんだ…ということが読者に伝わってきます。県大会でもそうですが、毎回の対戦相手が単なるかませ犬や悪者として描かれないところも素敵です)。

そして己の人生にリベンジしたい人達の爆発力とは別に、マネージャーの彩ちゃん、木暮という情緒の安定したしっかり者の存在もきちんと描かれていて、彼らが地味に湘北を支え続けていたんですよね…。
木暮は肝心のところで3Pを決めたり、安西先生からもねぎらわれていますが、彩ちゃんはもっと褒められてもいいと思います。リョータの欲望に曇った(そこが可愛いけど…)視線だけでなく、みんなもっと彩ちゃんに感謝のまなざしを向けてね…。

書き出したらなんだか長くなってきましたが、しかしまだ何点か言いたいことがありまして、この記事続きます。

(つづく)

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