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出不精旅日記 台湾3日目 くたくたで下山しつつ春樹を語る


光があるということが、こんなに人の心を明るくしてくれるなんて、温めてくれるなんて…
お日様ありがとう…

私達は日の出にしみじみ感動し、体全体に陽の光をあびて幸福を堪能していましたが、若者たちは
「あー、今回もいい感じだったね。じゃ、帰ろう!」
とあっさり帰宅モード。
夫に
「歩ける?」
と聞くと、よっこらしょと立ち上がり
「多分大丈夫…かもしれないね…」
とのこと。多分というのは大丈夫を1とすると0.7くらいで、かもしれないは0.5くらいかな。掛け算すると0.35くらいの確率か。最後の「ね」も気になるところですが、もう一回掛け算すると確実に不安になるのでやめておきましょう。

とりあえず立ち上がって、生きて朝日を見た記念に二人で写真をとって…。
あ、近くに寄ったら夫の心の声が私の中に浸食してきました…

「さっきから気になってるんだけど、またバスに乗るのかな(恐)?」

こころの声が聞こえてくる

Jちゃんが明るく手を振っています。
「二人に阿里山森林鉄道に乗ってほしいの、駅まで歩きましょう~」

バスじゃなくて鉄道、帰りは電車の本数が多いから急がなくていいそうです。まずはゆっくり歩けばいいのね。良かった!

てくてく。徒歩で下山

私は田舎育ちなので、山の植物とか、どんな鳥がいるのかしらとか気になるのですが、そういえば鳥の声がしませんね。
標高が高いからかしら?
ここは2500メートルくらいかな?

Jちゃんに鳥がいないね…と言うと
「気づきませんでした。確かに静かですが、朝だからでは? それより寧子は村上春樹を知っていますか? 私は春樹が日本の小説家で一番好きです」

現在台湾で売れている日本の二大小説家は「春樹&ばなな」と聞いていましたが、やはり春樹さんは大人気なのですね。もちろん日本の作家と言っても、ここ台湾で翻訳されているものに限定されるわけですが…。

「作品はほぼすべて読んでますよ。映画『DRIVE MY CAR』も見たし、彼の初期作品「納屋を焼く」を韓国のイ・チャンドン監督が『BURNING』という映画にしたけど、それも見ましたよ」
と言うと、Jちゃんは嬉しそうに
「私もそれらの映画を観ました。面白かった! 春樹の小説は最近のものが良いと思うんです」
とのこと。

私は
「初期作もすごくいいですよ。若いころの小説には現在の作品の鍵になる要素がかなり詰め込まれているような気がするんだけど…」
とか、
「河合隼雄先生との対談はすごく重要だと思う」
とか、
「『朝日堂』を知っているかしら? 」
と聞いたけれど、それらはよく分からないようでした。
エッセイや対談は翻訳されていないのかも?
安西水丸についても話したかったのですが、私の英語力ではイラストと文章のコラボの魅力について上手く説明できず(涙)ひたすら彼女の「女のいない男たち」の感想を聞いていました。

そんなに春樹が好きなら、Jちゃんが来日したら早稲田の春樹記念館に案内するね、と言うと「ぜひ!」とのこと。
「実は私も行ったことがないから、帰国したら下見しなきゃ」

と言うと、
「私は春樹作品をもっと読んでおきます!」
私も改めて読み返したい作品がいろいろあります。読んでおこう。

しかし…二大人気作家が「春樹&ばなな」というのが、台湾という国の若さと勢いを象徴している気もします。
台湾は誠品書店をはじめとして本屋さんが多く、そしてそこにいつも人が群がっているのも、すごくいいなと思います。
本屋さんに行くと床とか階段にしゃがんで本読んでいる人達もいて、お行儀のことはとにかく、書き手と読み手の幸福な関係を絵にしたような風景で私はその様子を見ているのがすごく好きです。
これは89年まで戒厳令が敷かれていて、それ以降に文化がどっと流れ込んできたことと無関係ではないと思いますが…、そのあたりはまた考えるとして…

線路沿いを歩いて駅へ。あ、奥にチラリと電車が見えます。


阿里山森林鉄道の駅に着きました


レトロかっこいい!!

他のスタッフさん達も待っていてくれました。口々に夫の体調を気遣ってくれます。ありがとう、あなたたちは100パーセントの女の子と男の子。
わいわいと電車に乗り込みます。

満席
みんなお疲れ、当然ですね…

夫は立っている方がいいというので、かなり揺れますが、柱につかまって外を見ることに…。
風が入ってきて、風景がどんどん変わって電車は楽しい!
高度が変わると植物の種類も変わりますね。
あっという間に駅につきました。
酔い止めの薬を買い、さて、台南に帰りましょう。
Bくんよろしくお願いします。

来た時は暗くて(そして苦しくて)見えなかったけれど、立派な駅でした

台南への道の途中で朝ごはんをテイクアウトすることにしました。
人気店だそうで、行列しています。

行列は外まで続いていました
最期に卵焼きをつける

夫は作業をのぞき込んで
「同じようなのはよくあるけど、ここは卵を割り入れたり、ひと手間かけてるんだな。だから美味しそう…」
ひと手間、大事ですね。

「えーっと、結局これは何なの?」
と聞くと、具入りの粥みたいなもので、スープのだしが美味しく、具材(肉と卵と小麦粉の団子)も沢山あるのでそこそこ腹持ちするよ、とのこと。

大事に抱えて、もうろうとして帰宅。
Bくんは疲れているのにその足で車を返しに行き、他の若者たちはテイクアウトを食べて、これからひと眠り。

私達は今日チェックアウトですから本当なら午前中に出て行かなければいけないのですが、次のお客様が入っていないからと少し長めに休ませてもらうことになりました。夫を心配してくれたのでしょう。

ここは有難くそうさせてもらいます(もちろん、チェックアウト時にその分は支払いました)。

体調が体調なので、テイクアウトは起きてから食べることにし、私達はすぐ部屋に。

「俺は自分の体力の限界を思い知ったよ…」
私もですよ。
夫は倒れるようにベッドに入り、爆睡。
とにかく…ここに戻ってくることが出来て、良かった。
今日はこれから高雄に移動しないといけないし、今はとにかく寝ましょう。

(つづく)

おまけ
阿里山森林鉄道。阿里山登山鉄道と呼ばれることもあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E9%87%8C%E5%B1%B1%E6%A3%AE%E6%9E%97%E9%89%84%E8%B7%AF
風景を楽しむなら昼間がいいですね。
台湾に行ったらぜひ本屋さんに行ってみてください。
一番有名なのは日本の蔦屋書店からインスパイアされたという誠品書店。あちこちに支店があります。
台湾の若者の就職したい会社NO.1という話も聞きましたが、今もそうなのかな?
https://www.eslitecorp.com/eslite/index.jsp?site_id=eslite_jp

誠品は日本にもあります。
誠品生活 日本橋
https://mitsui-shopping-park.com/urban/muromachi/store/1386112.html

独立系の本屋さん・古本屋さんもかなり面白いです。
今回の旅では訪ねませんでしたが、私の印象に残っている台南の古本屋さん。
広い店内に様々なジャンルの本が並べられており、本のセレクトや並べ方に店主の本への半端ない愛情が感じられます。
夫はここで「金城武の昔のCDありますか?」と、店主さんと楽しそうにCDを選んでいました(CDやグッズもあるのです)。
また行きたい!!
林檎二手書室(日本語記事)
https://books-match.com/blog/1537/
お店のfacebook(中国語)
https://www.facebook.com/lingobooks.tainan


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青柳寧子
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