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三石巌の絶版書籍

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絶版になった書籍の抜粋です。
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記事一覧

科学との出会いをもとめて 第一章 人間

科学との出会いをもとめて 第一章 人間


1 夏は想い出を生む季節 夏は想い出を生む季節であるようだ。少なくとも私にとって、ことしの夏はそうだった。

 まず、心温まる想い出を語ろう。

 七月一五日、私は北海道にむかった。函館発の特急の車中、ノーベル賞受賞者と共同で細胞社会学をやっていたという少壮学者にめぐりあった。仲介者となったのは同行の早大生O嬢であった。私はここで細胞膜表面の模様、細胞の菌毒に対する反応などの知識をうることができ

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健康と医療を考える

健康と医療を考える

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容をご紹介させていただきます。

 健康とは何ぞやと問われたら誰でもがその定義にとまどいつつも、一応は答えることができる。快食・快眠・快便をあげる人がいるかと思うと、病気のないことがそれだという人もあり、生き甲斐をもつことがそれだという人もある。これらのいずれにも一面の理が認められるとはいえ、若干の物足りなさが感じられる。結局、ありき

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-14

三石巌全業績-17 老化への挑戦-14

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

からだが硬くなる

 結合組織とコラーゲンとの関係について、もう少したち入っておく。そうしないと、コラーゲンのクロスリンクの増加が、いかに老化にかかわっているかがはっきりしてこないのである。
 まず、結合組織の成り立ちを見ると、コラーゲンのほかに、<エラスチン>と<プロテオグリカン

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-13

三石巌全業績-17 老化への挑戦-13

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

クロスリンク老化説

 老化といういまわしい現象をすべての人に押しつける悪役として活性酸素が指名手配されることになったのは、ごく新しいことである。
1969年に、フリドビッチとマッコードの両人によって活性酸素除去酵素SODが発見されて以来のことなのだからだ。老化に関する本はいくつも

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-12

三石巌全業績-17 老化への挑戦-12

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

活性酸素の発生源

 活性酸素が死神だとすると、それがどこからやってくるかは、大いに気になるところだ。その微量は大気にもある。しかし、これはどうにもならない。ただ、光化学スモッグの実体であるいわゆる<オキシダント>は、肺に入って活性酸素を発生する。光化学スモッグにかこまれたら、呼吸

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-11

三石巌全業績-17 老化への挑戦-11

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

時限爆弾の小包

「獅子身中(しししんちゅう)の虫」という古い言葉がある。これは、身内のなかの敵というほどの意味だ。活性酸素はまがいもなく獅子身中の虫に違いないが、それが引き金となって発生する色々なラジカルも、まがいもなく獅子身中の虫である。活性酸素のうちでも、スーパーオキサイドと

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-10

三石巌全業績-17 老化への挑戦-10

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

死神は活性酸素

 ラジカルという名の、不安定なために活性の高い物質が、生体の合目的性を阻害し、寿命を縮める元凶だとすると、これについての情報をもとめたくなるのが人情だろう。そのラジカルのうち、いちばん問題になるのが例の酸素ラジカルであり、別名を活性酸素という酸素分子種である。活性

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-9

三石巌全業績-17 老化への挑戦-9

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過酸化水素

 活性酸素が4種あること、それが、一重項酸素・スーパーオキサイド・過酸化水素・ヒドロキシルラジカルであることを頭にたたきこんで頂きたい。
 ここまでにスーパーオキサイド除去酵素SODについてさまざまなご託が述べられてきた。しかし、いちばん大切な現象が扱われていない。

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-8

三石巌全業績-17 老化への挑戦-8

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酸素は活性化する

 読者諸君はここまできて、活性酸素ということばを覚えられただろう。そのこわさもおわかりだろう。その恐怖の実体が、相手分子から電子を奪う結果であることもおわかりだろう。だがしかし、われわれの生命を保障する酸素が活性化するメカニズムについてはまだ何も説明されていない

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-7

三石巌全業績-17 老化への挑戦-7

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シミは長寿のしるしか

 私の顔や手の甲には大小さまざまなシミがある。そして私は日本人の平均寿命をかなり越えている。とすれば長寿者ということになるだろう。むろん、若くして死ぬ人にシミなどありはしない。そこで、シミは長寿のしるしではないか、というアイディアが出てくるとしたら、こんな荒

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-6

三石巌全業績-17 老化への挑戦-6

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脳の栄養学

 われわれの体内には、脳もあり、胃もあり、心臓もあり、肺もある。それらの器官のなかで重要性のトップにくるのが脳だ。だからこそ、生死の判別に、また老化問題の中心に、脳の状態がおかれることになる。
 一方、われわれ生物は、死を約束されている。その原則がなかったなら、地球は

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-5

三石巌全業績-17 老化への挑戦-5

三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。

認知症は病気か

 本書の初めの部分に、ブラテインの死を扱った。そこでは、死因をアルツハイマー型認知症としたが、新聞には、ただアルツハイマー病と記されていた。それを私がアルツハイマー型認知症とした理由は次の通りである。
 まず、アルツハイマー病は、遺伝子の異常からくる病気であって、

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-4

三石巌全業績-17 老化への挑戦-4

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三人の迷子の話

 転の段階のたけなわになる頃、老いを気にする人がふえてくる。われわれ高齢者ともなれば、それは脅威というよりは恐怖である。
足腰の不自由も哀れだが、脳の機能低下も哀れだ。
 頭を使う人はボケない、と私にいった人がいる。私を、頭を使う人とみて慰めてくれたのだろう。はた

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三石巌全業績-17 老化への挑戦-3

三石巌全業績-17 老化への挑戦-3

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生物時計とは?

 赤ん坊が生まれるのは、受胎から約40週後だと、われわれは聞かされている。これがきちんときまっているのはなぜだろうか。
体内に日数を数える時計があるのだろうか。このような考えから、<生物時計>という概念が生まれた。
これを<体内時計>ということもある。生物の体内に

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