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Bounty Dog【清稜風月】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2023年3月の記事一覧

Bounty Dog 【清稜風月】35-37

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 相手は”あの人間”より少しだけ歳上だった。44歳の櫻國人の男、槭樹(かえで)・イヌナキは、己が産まれ暮らしている東の島国の外からやってきた人間と殆ど同じ見た目をしている狼の亜人に、遠くの影から観察されている事に全く勘付いていない。
 彼が猛鳥類のような威圧感を纏っている小さめの焦茶眼で見つめている先は、山道の一角に置かれている葛篭と、葛篭に隠されていた異様に深く掘られている穴だった。
 

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Bounty Dog 【清稜風月】33-34

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 勝手に屋根に登って走り去っていった狼の亜人を追い掛けて、道の角で人にぶつかってしまった睦月は盛大に転んだ。同じく相手も盛大に転ぶ。相手から高い音量で悲鳴が上がった。
 睦月も若干悲鳴を上げる。ヒュウラの視線を頭上から一瞬感じたが、傍迷惑な馬鹿犬はサッサと己を見捨てて、屋根伝いに何処かへ走り去って行ってしまった。

 化け狼に見捨てられた人間の青年は、愚痴を溢しながら身を起こそうとする。相

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Bounty Dog 【清稜風月】31-32

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 睦月とヒュウラが”問題”の和菓子屋に向かっている最中、櫻國の町に居る4人の人間が、其々動きながら独り言を呟いていた。
 1人目は、北西大陸産まれの外国人で、ヒュウラと睦月が通った桜並木の通りを歩いていた。花弁が散り舞う桜の木々を見上げながらぼやく。
「まあまあ綺麗な花だ、散り方がニエベ(雪)みたい。でもニエベみたいに溶けないから、この木の枝を幾つか切り取って持って帰ってあの人に見せ……い

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Bounty Dog 【清稜風月】29-30

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「昨日来た”アイツら”の狙いは、確実に日雨。あの密猟者達は麗音蜻蛉の殺し方を熟知してた」
 虫の亜人である日雨が暮らしている清浄な山と人間達が暮らしている大きな町を繋いでいる野道を、櫻國の外から来た狼の亜人を引き連れて歩いている人間の猟師・睦月は独り言のように呟き始めた。
 睦月の真横で一緒に歩いているヒュウラは、何時もの黒いライダースーツのような服の上に短い西洋鎧を付けて、腰に万能使いが

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Bounty Dog 【清稜風月】27-28

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 ヒュウラは、”何となく面白そうだから言われる事を手伝ってやる”から始まり、己が主人だと認識した人間が出来てからは”主人が指示してくるから”・”主人が望んでいた事だから”・”準主人を守りたいから”・”準主人の暴走を止めたいから”と様々な理由で特別保護官として任務に参加している、人間達が作った国際組織『世界生物保護連合』3班・亜人課の現場部隊長に、昨日この東の島国『櫻國』で”1ヶ月間休暇を取

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Bounty Dog 【清稜風月】26

古のモノを守り過ぎると未来が喪失する。だが未来のモノにしか目を向けずにいると、歴史を喪失して過去と同じ悲劇を繰り返す。

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 ーー日雨(ひさめ)は、俺と一緒で俺と全然違う。ーー
 最重要保護対象であるSランク『超希少種』の虫の亜人『麗音蜻蛉(れねかげろう)』の日雨を密猟者から救う緊急保護任務を完了させたヒュウラは、人間のように生きて暮らしている保護対象(ターゲット)の日雨に強い興味を持ってい

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Bounty Dog 【清稜風月】25

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 その女の腰の一部は、去年の年末に上司の実家がある北東大陸を南部にある別国以外掌握している連邦国家の巨大イベント会場で行われた、ファンによる追っかけが多い故にライブをする度にファン達が何かしら狂った事をして次の日に発行される北東大陸の新聞に1面か2面で事件として載る、支援者がエゴイストだらけで非常に有名な某超人気男性アイドル歌手グループによる、鑑賞チケット争奪戦で死者が何十人も出たという風

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Bounty Dog 【清稜風月】22-23

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 遥か過去には一大娯楽として東の島国にもあった。だが此の国だけにしか無い独自文化を復活させる為に完全に喪失させた西洋文化の1つが、妖(あやかし)として突然化け出てきて、真夜中の山の中で暴れているのかと思った。
 現在の櫻國で聞く事は有り得ない超大音量で響き渡る西洋音楽の祭典は、山の外にある町や人間達が住んでいる家々にまで流れてきていた。櫻國に滞在している外国人旅行者達や現地人達が次々と起き

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Bounty Dog 【清稜風月】20-21

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 木々の枝を踏み台にして、跳ね飛びながら高速で一軒家まで辿り着いた。ずっと日雨を横抱えしていたので腕が少し痺れているが、今は何も抱えていないので腕の休憩もついでに出来ていた。
 ヒュウラは一軒家まで単独で戻ってくると、家の床が酷く汚れている事に気付いて警戒する。持ってきていたクビキリギス軍団入りの風呂敷袋を1つ家の中に投げ入れてから、家の中に侵入して居間に置いていた煎餅入り葛篭を回収する。

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Bounty Dog 【清稜風月】18-19

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 睦月は己が”捌いた”訳では無い、狼煙の近くにも居ない謎の外国人の死体を2体見付けた。相手はやはり旅行者を装って此の国の民族衣装を着ているが、何方の死体も日雨を狙う密猟者がほぼ毎回持ってくる狙撃銃では無く、オートマチック式の小さな拳銃を掴んでいた。
 喉に開けられている死因となった銃跡も、強力な拳銃から放たれた弾丸が作り出したモノのようだった。睦月はますます今回の”捕り物”の異常さに困惑す

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Bounty Dog 【清稜風月】14-15

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 今回ヒュウラが関わる保護任務は、保護対象”ターゲット”が1。喪失対象”ロストターゲット”の密猟者は10人だとヒュウラは思っていた。だが事実は、保護対象は日雨と同じく『超希少種』である己を含めて2体。喪失対象は亜人の密猟者と共に、別の存在に対する狩人を加えて15人居る。
 保護任務担当は、近接”アタッカー”がヒュウラ。後衛”サポーター”は睦月・スミヨシで、遠隔から通信機器を用いて目的地や移

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Bounty Dog 【清稜風月】12-13

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 ヒュウラの予想は的中していた。あの癖が余りにも強過ぎる人間の黒髪ツインテール女、コノハ・スーヴェリア・E・サクラダ保護官は、突然山の彼方此方から上った何かが腐敗したような臭いがする煙を見つめながら、通信機で『世界生物保護連合』3班・亜人課支部にミト達と無事に到着している、上司のシルフィ・コルクラート保護官と連絡をしていた。
 シルフィが機械越しに、ヒュウラ護衛の為に櫻國に派遣させている保

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