Bounty Dog 【清稜風月】31-32

31

 睦月とヒュウラが”問題”の和菓子屋に向かっている最中、櫻國の町に居る4人の人間が、其々動きながら独り言を呟いていた。
 1人目は、北西大陸産まれの外国人で、ヒュウラと睦月が通った桜並木の通りを歩いていた。花弁が散り舞う桜の木々を見上げながらぼやく。
「まあまあ綺麗な花だ、散り方がニエベ(雪)みたい。でもニエベみたいに溶けないから、この木の枝を幾つか切り取って持って帰ってあの人に見せ……いや、辞めよう。捜索放棄がバレて責められて、報酬が全く貰えなくなる」
 2人目も、少し離れた場所で桜を見ていた。1人目の人間と同じような感想を抱いていたが、担っている業務的な理由で、1人目とは違う独り言を心の中で呟いた。
(ソメイヨシノか。純種じゃ無くて雑種だから、本当は1本残らず伐採しないといけない木なんだっけ。『進化的理由で無いなら純血種以外の生き物は全て残さず此の星から抹消しろ』っていうのがウチの組織の方針だけど……ならクォーターの私も対象じゃん。オウ、NO。オーマイガー、私のお爺ちゃんは櫻國人です)

 残り2人は、此の国で一族が代々産まれ育っている純血種に分類された人間だった。1人は単独で、もう1人は部下の人間達を引き連れて別々の場所を歩きながら、片方は実際に口で言い、もう1人は誰にも聞かれないように心の中だけで呟いた。
(これ以上あの者達が余計な事をせぬよう、私が何とかせねば。此の国は粗方本来の姿を取り戻せておりますが、未だ”ゆらぎ”から抜け出ておらぬ。いと(非常に)不安定なのです)
「昨夜の騒動は潮合いと思え!幾百年もゆらぎ続ける生半可な此の国を一気に進展させる大波を立てた者を、何としてでも探し出すぞ!!」

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