Bounty Dog 【清稜風月】22-23

22

 遥か過去には一大娯楽として東の島国にもあった。だが此の国だけにしか無い独自文化を復活させる為に完全に喪失させた西洋文化の1つが、妖(あやかし)として突然化け出てきて、真夜中の山の中で暴れているのかと思った。
 現在の櫻國で聞く事は有り得ない超大音量で響き渡る西洋音楽の祭典は、山の外にある町や人間達が住んでいる家々にまで流れてきていた。櫻國に滞在している外国人旅行者達や現地人達が次々と起きてきて、何事かとガヤガヤ騒ぎ始める。
 騒ぎはしなかったが、同じく就寝中に無理矢理起こされて、戸惑っている人間が2人いた。片方は山から非常に近い場所にある川の麓の建物の中で、敷き布団から上半身だけ起きた状態で、飛び起きて慌てて寝室にやってきた女官(にょかん)達と会話をしている。もう片方は山から少し遠い場所にある別の大きな建物の中に居た。此方は1人で寝床から起き出てきて、障子(しょうじ)を開けて月明かりに照らされた外界の様子を眺めている。
 手に、睦月が日雨から持たされた刃物を非常に長く伸ばしたような形をしている、大太刀(おおたち)が鞘に収まった状態で握られている。外の様子を1人で眺めている人間は40代中頃の男、女官達と話し合っている人間は10代後半の女だった。
 もう1人、山から漏れ出てくる北東大陸のアイドル歌手グループによるライブ音楽祭りを聞いている人間がいた。だがその人間は数十分前まで己も居た山が極めてカオス状態になっていても全く興味を示さずに、町で適当な宿を探していた。

ここから先は

1,947字

¥ 100