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Bounty Dog【アグダード戦争】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2022年2月の記事一覧

Bounty Dog 【アグダード戦争】26-27

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 アグダードの”ゴミ人間掃除部隊”にヒュウラが連れて行かれて、保護官達と一緒に彼らのアジトで一夜を過ごす直前まで、其の場に居る存在の誰1人として脅威に晒される事無く平和に過ごした。
 シルフィとミトは絶滅危惧種の亜人ヒュウラを保護する為、同じ亜人だが『超過剰種』と人間達に位置付けられているリングと横並びになって寝ている相手を、交代で見張っていた。くの字になって寝ているヒュウラは小さな寝息を

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Bounty Dog 【アグダード戦争】23-25

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 武装集団の隊長らしきアグダード人の男がした己の部隊の紹介を聞いて、シルフィは首を傾けた。合点がいかないと吊り上げた目の形で相手に伝えながら、眼前に座っているヒュウラを見下ろす。狼の亜人は中東の代表的な食べ物である、豆料理のフムスから立ち上る湯気を顔に浴びていた。
 独特であるが食欲がそそられる、とても良い匂いがしていた。だがヒュウラは料理の香りを嗅ぐなり、鼻を摘んで目を激しく吊り上げる。

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Bounty Dog 【アグダード戦争】21-22

1つ失うと1つ以上新しいモノが手に入る。何であっても、損でも得でも。

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「そうか、お前はヒュウラっていうのか!良い名前だな!お前にピッタリだ!!」
 此の星で生きているあらゆる絶滅危惧種を保護する事を目的に活動している国際組織『世界生物保護連合』3班・亜人課の現場部隊長シルフィ・コルクラートが人間の保護官1人と亜人の特別保護官2体を連れて実行している、南西大陸中東部『紛争地帯アグダード』で

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Bounty Dog 【アグダード戦争】19-20

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 ミトはアグダード地帯に来てから、今現在が最も混乱していた。ただし今現在メンタルに受けているショックは破壊的なモノでは無い。希望だった。
 壊れている筈のヒュウラが、己を”また”助けてくれた。片腕に己、もう片腕にシルフィを抱えて、脅威から”正常に”逃げてくれている。地雷を求めていた死にたがりが、死を与えようとしてくるモノに背を向けて逃げている。
(彼はパラシュートが焼けた時も助けてくれた。

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Bounty Dog 【アグダード戦争】17-18

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 其の建物の内部は、人間の”野生”が充満していた。叩き割られた酒瓶が中身を撒き散らして土床に幾つも幾つも転がっており、乾燥大麻(マリファナ)だろう燻された麻薬の臭いが空気中に漂っている。
 触れたく無い部類の汚物とゴミ達と一緒に、女物の服と下着らしき布達が、千切り破れて酒と半透明の白い液体が混ざった水溜りの中に沈んでいる。何かが何かを幾多に殴って飛び散ったような赤黒い染み汚れと窪みが壁の至

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Bounty Dog 【アグダード戦争】15-16

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「ヒュウラ、気が落ち着いたようで良かった。取り敢えず街から出ましょうね」
 ミトはヒュウラの首輪に手錠の片側を掛け、自分の左手首にもう片側を掛けた状態で相手を引っ張りながら街路を歩いていた。鎖が非常に長い保護組織特注品の亜人捕獲用手錠を使うのは久々だったが、ヒュウラに使うのは2回目だった。
 リードのように使うのは初めてだった。同じく保護組織が作った特注品である首輪型発信機に手錠を取り付け

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 13-14

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 茶色い岩と土で作られている2階建ての建物は、長方形の石の箱を積み上げたような形をしており、格子も硝子の板も無い四角形の大きな窓と出入り口が壁に空けられている。
 穴のような窓を覗くと建物の内部が見えた。人間らしき生き物が複数座っている。生き物は皆、黒色に近い暗い色の布を頭から被っており、浅黒い肌をした手足が布から飛び出ている。
 布の塊のような人間達は、皆が身を震わせていた。背後に立って

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 9-12

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 アグダードの街には、人間が作った死と破壊の雨が降り注がれていた。夜闇を照らす業火と黒煙があらゆる場所から吹き荒れており、空を飛んでいく無数の爆弾が延々と地に落ちて爆発している。
 ミトは身に受ければ必ず死ぬ脅威的な人間の道具が踊り舞う地獄の街を歩こうとするヒュウラを止める為に動いた。相手の進行方向に先回りして、両手を大きく広げてヒュウラを妨害する。足止めさせられた相手は無表情でミトの顔を見

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 6-8

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 ヒュウラの思考は完全に停止していた。己が生まれ付き持っている強靭的な脚力を使えば、落下し尽くして地面にぶつかって潰れ死ぬまでに崖か人間が作った『箱』の壁を見付け次第、利用して跳ねながら降りたら無傷で着地出来るとか、正常な思考が動いていれば、この無謀なスカイダイビングを生存出来る結果になるように考えて実行しただろう。例えパラシュートを身に付けていても行動は変わらなかっただろう。ヒュウラはパラ

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 3-5

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 紛争地帯アグダードで行う保護任務は、シルフィの独断だった。絶滅種と扱われている鼠の亜人の救命に手一杯になっている上層部の隙を突いて、組織を信用していない彼女が己のエゴで実行する極秘任務だった。
 亜人課現場部隊の支部から丘を上った先にある広場を通って辿り着いた輸送場には、部隊が普段使っている大型の輸送機の隣に、何時の間にか見知らぬ小さな飛行機が停まっていた。
 強引に座席を取り払って作られ

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 1-2

アグダード戦争

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 ミトと9人の保護官は、全員が同じ反応を示した。スクリーンに映し出された画像を見るなり、全身から血の気が引いた。
 シルフィは部下達の顔を見るなり憫笑した。亜人の青年は画像に興味を持たず、見ようともせずに胡坐を掻いて座ったまま何の反応もしない。だが1人の人間と1体の亜人以外の全員が画像に目を釘付けにされていた。
 ミトと9人の人間達が同じ事を想う。ーー自分達にこんなモノを見

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Bounty Dog 【アグダード戦争】 0

 “彼ら”が生きている、今我々が覗いている此の異世界は、我々が生きている世界に酷似している。そして我々が生きている世界で時期に訪れる可能性がある未来の、数百年先を走っている。
 此の世界に存在している殆どのモノは、我々の世界にあるモノと同じである。しかし我々の世界と全く同じではなく、此の世界だけにしか存在しない特有のモノも幾つかある。
 その1つが『亜人』。人間のような見た目をしており、人間と同じ

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