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[火熾し/基礎知識]火熾しにまつわる定番技術

様々な火熾しの中でも、まずは簡単に定番と呼ばれる技術をクローズアップする。各種サバイバルブックで紹介されている技法から、日本のフィールドでも手軽にできるものを選んでいる。

◼︎解説
火口:いわゆる着火剤。マッチやライターなどの道具を使う際は問題とならないが、メタルマッチといった火花の熱を用いた火熾しでは、火口の性能が物を言う。
焚き付け:火口で熾た小さな炎では薪から可燃ガスを引き出す熱量がないため、その繋ぎとして用いる二次的な着火剤。短期間でも大きな炎をあげる小枝などがその代表格だ(市販の着火剤は火口と焚き付けを兼ねる)。

01.現代的な火熾し技法

化学反応や光~熱エネルギー変換、電気エネルギーを駆使して行う現代的火熾し。これらに関しては技法そのもののテクニックよりも備えや機転が重要になってくる。身近なものから火を熾す知識があれば災害時も心強い。

マッチ

防水容器に入れて持ち運ぶ。場合により、火口を飛び越えて焚き付けに直接着火させることもできる。雨風に対応したタイプや側薬不要でどこでも擦ったら着火するタイプなど、多様なラインナップがある。

メタルマッチ

フェロセリウムを主成分とした棒状のマッチ。ナイフの背でメタルマッチを急速に削り取ると、摩擦熱からフェロセリウムが燃焼し、激しい火花を散らせることができる。保存性に優れた火熾しの定番道具。

凸レンズ

双眼鏡やカメラから取ったレンズ、コンパスの拡大鏡、水を入れたペットボトルやコンドーム(サバイバルキットに入れておくと防水容器や水筒としても役立つ)の凸面を使い、火口に太陽光線を焦点させる。

バッテリー

電池の種類にもよるが、12Vの高電圧タイプならワイヤーを両極にそれぞれ接続し、火口付近でショートさせると着火できる。9Vの乾電池ならスチールウール、1.5Vの乾電池ならガムの包み紙に着火できる。

【コラム】 "電池" による火熾し3選

防災にも使える知識として、ここでは多くの環境で手に入れやすいエネルギー「電力」を用いた着火法を紹介したい。いずれもキーポイントになるのは、各種電源に合わせた適度な抵抗を作ること。ここを電気が通過する際にエネルギーが熱として放出され、確実な火種となってくれるのだ。

・乾電池(1.5V)とガムの包み紙

電力を使った着火法としては最もポピュラーな手法。アルミ箔を用いたガムなどの包装に電気を流し、意図的に作り出した抵抗部で発熱。アルミ箔の内側に貼り合わされた紙部が発火して良き火種となってくれる。

[着火方法]

STEP.01
ガムの包装紙を開き、砂時計状の形に切り出す。
STEP.02
中心部が太いと熱が出ず、細すぎるとすぐに焼き切れてしまうので注意。
STEP.03
これを折り曲げるようにして両端に乾電池の+-極をあてがえば、細くなった中心部が発火する。


・乾電池(1.5V)とペンのバネ

こちらはガムの包装紙の代わりに、比較的手に入れやすいノック式ボールペンのバネを用いた着火法。ポイントは導線の太さにあり、クリップなどに使われる針金では電気を簡単に通してしまうため発熱しにくく、火を熾せるほど熱くならないのだ。

[着火方法]

STEP.01
ノック式ボールペンの先端キャップを取り外して、内部のバネを取り出す。
コイル状のままでは通電させにくいので、適当に引き伸ばしておくと良い。ちなみに、この手法は一回通電させるとその部分が脆くなって折れてしまうため、バネ末端から大切に使いたい。
STEP.02
続いて乾電池の胴部はすべて+極という構造を用い、-極側の外装ラベルを一部切り取って両極を極端に近づける加工を施す。
→この際、両極を隔てているパッキンも取り除く。
STEP.03
最後に先ほど伸ばしておいたバネで乾電池胴部(+極)と-極を繋げれば、ごく短い距離の細い針金に許容以上の電気が流れることで赤熱。
→火口を添えれば着火させることができる。

・車両用バッテリー(12V)と鉛筆

二~四輪に採用される12Vの車両用バッテリーなら、前述のアルミ箔や細い針金で作った抵抗を鉛筆の芯に置き換えられる。鉛筆は火種(芯)を焚き付け(木部)が囲んだ構造なので、着火剤としても有能だ。
※車両用バッテリーは乾電池とは比べものにならない強大な電源となるため取り扱いに注意。自己責任の上、非常時のみ行うこと。

[着火方法]

STEP.01
鉛筆をナイフで削いで中心部の芯を露出させる。この際、削りかすは良い焚き付けになるため、まとめて取っておくことをお勧めする。
STEP.02
バッテリー容量により丸々一本分の芯では発熱に至らないことがあるため、適当な長さに分割する(=この方が着火機会も増える)。
STEP.03
ジャンプスターターコードを介して露出した芯とバッテリーを+極側から接続。
→完了したら-極を同様に取り付ける。
→すると芯が赤熱して木部に着火する。作業時は厚手の手袋を着用して感電に注意すること。

02.原始的な火熾し技法

主に摩擦熱を利用する原始的火熾しは、摩擦が起きやすい素材、火花が散りやすい素材を把握することが重要。この技法を手の内にするためには、度重なる練習に加え、慣れてきても工程などを省かず、丁寧に行うのが成功の鍵だ。

火打ち

ナイフや金鋸の素材として使われる炭素鋼で河原に落ちているチャートなど、硬くて端が鋭利な石片を打つと、摩擦熱から炭素が燃焼して大きい火花が散る。手首を柔らかくして素早く打つのがコツだ。

ハンドドリル

板(ファイアーボード)に丸いくぼみを掘り、その上に木の棒(スピンドル)を押し付けて回転させることで生じる摩擦熱を利用した火熾し法。スピンドルは乾燥している真っ直ぐな杉などの枝が理想。

【コラム】 着火までの手順はどの火熾しも同じ

どんな火熾し技法でも、小さな火の元から焚火まで育てる手順は同じだ。火種を確実に火口へ移し、焚き付けを得て薪に点火させていく。

①確実に火花をキャッチする良質な火口を用意する(ここではナイフで薄く削いだ木片)。
②火花などの熱で火口から可燃ガスを引き出し着火させる。
③火種の熱を奪わない程度に酸素を送って燃焼を促し、焚き付け(ここでは杉の葉、火口としても使える)に炎を移していく。火口、焚き付けの性能により、 空気を送らずに待つことも多い。

03.火口・焚き付け早見表

下の記事で解説した「焚火の大原則」を理解すれば、いかに火口と焚き付けの役割が大きいかわかる。小さな熱でも酸化反応が連鎖する素材は、熱が通りやすい小さなサイズかつ可燃ガスを多く含んだもので、自然界にはそう多くない。


火口候補一覧

  • 細く裂いたスギなどの樹皮

  • 木の細かな削り屑

  • 草やコケ、キノコ類の枯れたもの

  • ワラ

  • おが屑

  • 木のヤニの削り屑

  • 枯れた針葉樹の葉

  • 倒木の完全に腐った部位

  • 鳥の綿毛

  • 種子の穂先

  • 竹の内側の薄膜

  • 竹の表面の削り屑

  • ポケットや縫い目から取れた糸屑 *

*は、装備として携行している可能性あり

日本の山で入手しやすい火口の代表格、杉の枯葉。
平野なら比較的手に入る種子の穂先も火のつきがいい。
木肌を薄く削いだものは落ち木から自分で生成可能だ。
松ぼっくりも油分を多く含む良質な火口。
白樺の剥がれた樹皮は極薄ですぐに燃焼してくれる。
衣服のポケットなどに溜まった糸屑も良い火口になる。

焚き付け候補一覧

  • 小さな木の枝

  • 細く裂いた木

  • 大きな木片の中側から取った木っ端

  • ワックス類(ワセリン等)*

*は、装備として携行している可能性あり

基本的に焚き付けは乾いた小枝でOK。大量に集めておきたい。

火口と焚き付けに関する一口アドバイス

(米陸軍サバイバル全書より抜粋)

火口と焚き付けは歩きながらでも目に付いたら拾っておく

火口と焚き付けは完全に乾燥させること

火口に防虫剤を加えるとよく燃える

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