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虎という名の焼き菓子

ティグレの名を冠したものが、ファミマにあって驚いた。

新発売だとか

ティグレ、いつの間にコンビニに並ぶほどの市民権を。

アールグレイティーの隠語っぽいし、古代文明が発展した川の支流っぽいし、くまのプーさんの仲間たちが合体した新キャラっぽい名前。

ちまたでは、カヌレが名を馳せ始めたばかりではないだろうか。

専門店も続々できるカヌレ

見えざる手はもう次のターゲットに息を吹きかけ始めたのか、と思い検索したら、いちばんに出てきたのは堅そうなコンサル集団だった。

百貨店の洋菓子売場でも、ティグレを大々的に扱うメーカーは数えるほどしか見かけない。

他のコンビニでは数年前からひかえめに並べていたようだが、忍びすぎていて、目にも耳にもまったく入ってきていなかった。

やはり、それそのもの、としてはまだ一般的ではないのだろう。

いらすとやさんにも、カヌレのイラストはあるが、ティグレのイラストはなかった。

いらすとやさんのカヌレ

正直、既視感のある見た目だし、なにをもってティグレと呼んだらいいのかわからない。

そんな疑問は想定済み、と言わんばかりに、限られたスペースで「チョコチップとチョコレートクリームのフィナンシェ」と大きめに補足説明されていた。

みずからの知名度を心得ているかのような、ていねいな自己紹介が健気。

一方で、フィナンシェは市民権を得たものとして扱われている。

それもそのはず、全部説明しようとしたら

ティグレ
(チョコチップとチョコクリームをあしらった、アーモンドパウダー、卵白、ブール・ノワゼット、砂糖を混ぜて型に入れて焼いた菓子)

66文字

となってしまうから、パッケージが耳なし芳一状態になる。

フィナンシェは永住権を獲得したのだ。

フィナンシェより名前短いのにな

フィナンシェの生地にチョコチップを入れ、天面のくぼみにチョコレートクリームを流し込んだもの、が一般的なティグレだという。

本人、もとい本菓子の自己紹介に、一片のいつわりなし。

ティグレ、はフランス語で「虎」を意味する。

生地に織り込まれたチョコレートチップの模様が、虎の毛皮のようにみえることがその名前の由来だそうだ。

フィナンシェも、そのかたちから「金塊」が由来と言われている。

菓子の名前の起源は、往々にして全然甘くないし、ときどき猛々しい。

そういえば2023年は、虎が金星をあげた年だった。

このタイミングでファミマがティグレを投入してきたのは、それもうっすら関係しているのだろうか。

たぶんちがう

天面のチョコレート部分は、逃げ出さないように透明フィルムで守られている。ちょっと安心した。

ここに穴が空いてしまうと、クグロフという別の菓子が存在を主張し始めて、もうなにがなんだか分からなくなってしまう。

ファミマのティグレは、マーガレットのようなかたちをしている。

フィナンシェ生地の天面になにかが流し込まれていれば、それはティグレと呼べるらしい。

楕円形の生地にチョコレートが流し込まれたものは、さらに既視感がある。

虎というよりは、上空から見た国立競技場。

天面のチョコレートがちょっと溶け始めたので、さっそく開封した。

てのひらサイズ、厚みは3㎝ほど

フィナンシェ生地は、外側が思いのほかカリッとしているので、手に油がつきにくい。

中はふかふかしっとりしていて、アーモンドプードルが香ばしく広がる。

散りばめられたチョコレートチップのカリカリつぶつぶの存在感と、甘みが心地よい。

天面のチョコレートクリームは、フィルムをはずしたら意外とマットでしっかりしていた。
ねっとり系かと思いきや、口の中の熱でなめらかに溶けていく。

これだけふんだんにチョコレートがつかわれていると、味がチョコレートに支配されそうなものだが、アーモンドプードルの香ばしさは負けていない。

まるまった虎に見え…?

ちゃんとフィナンシェ、ちゃんとチョコレート。

チョコレートフィナンシェ、とはまた異なり、フィナンシェとチョコレートがそれぞれの自我を残したまま、手を組んでいる。

これが、虎に翼というやつか。

新発売の赤丸は、印刷ではなくシールである。きっと、長く売るつもりだ。

虎視眈々とポストカヌレをねらっているのは、その名の通り、ティグレかもしれない。

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