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いつ行けるのか菓子店

試験前に、部屋の掃除がはかどってしまう経験は、多くの人がお持ちだと思う。

時を経て、わたしは仕事が繁忙期になると、行きたい店のリストアップがはかどるようになった。

行きたすぎて「お席いていればご予約なしでも」を「お腹いていればご予約なしでも」と読んでしまい、ぬかよろこんだ。

「具合の悪い方は予約なしでも診療します」みたいな心遣いかと思ったのだ。

そんな寛容な、いや甘容なシステムを導入している洋菓子店やカフェがあれば、いますぐ飛んで行きたい。

甘容なんて恣意的な言葉はない。

行きたい店、まずはここだ。

鎌倉のフレンチ&イタリアンレストランが期間限定で運営する《パフェテリア リリア》

いちごとホワイトチョコのパフェや、ラフランスとミルクティーのパフェなど、文字の並びがすでに魅惑的である。

わたしなりに言い換えれば、椎名林檎と宮本浩次くらい沸き立つ。

スノードームのようなグラス内だけでなく、グラスのうえにもクッキーや果物があしらわれていて、アクロバティックで芸術的だ。

しばらく眺めていたい。

でも、食べるときにどこから手をつけていいのか分からなくなりそうだ。
師走の仕事とおなじだ。

期間限定なうえに、営業日は週におよそ2回。しかも平日限定というのも、近そうで遠い鎌倉である。

つぎはここだ。

北鎌倉駅から、鎌倉方面に少しすすんだところにある洋菓子店《シトロン》

有機野菜の果物やナッツなど、厳選した原材料で伝統的なフランス菓子と、ヴィーガンスイーツをつくっているという。

くしくも、こちらも基本的に毎週金曜日のみの営業。

2年前の情報では、店先には店名どおりのレモンの鉢植えや、ケーキにつかうブルーベリーやクランベリーが植えられている、とある。

ハト混み、もとい人混みの鎌倉とは打って変わって、北鎌倉の山ノ内エリアはゆったりした空気が流れていて好きだ。

かぎられた営業日、ロケーションといい、小説に出てきそうなたたずまいの洋菓子店。

小説『真夜中のパン屋さん』あらため、『金曜日のシトロン』という作品があれば、ぜひ読みたい。

まだある。
今度は横浜元町の《カフェ・ド・レント》

こちらはテイクアウトもできるカフェ。水曜以外は毎日営業している。

カリグラフィーっぽい店名デザインと、アンティーク調の家具をそろえた店内、季節のタルトがとにかくおしゃれ。

焼きいちごのタルト、というフレーズにノックアウトだった。はじける生のいちごより、くたくたの焼きいちごが恋しい舌と歯になった。

高校時代は毎日JRの石川町駅で乗り降りしていたが、校則があずきバーくらい堅かったため、寄り道など言語道断だった。

すすけた高校時代を過ごした街に、こんな洗練された店があったとは。

モノクロの記憶を塗り替えるためにも、ぜひカフェを利用したい店である。

最後は飛んで神戸。
芦屋のおとなり、甲南山手の《パティスリーこすず》

店構えは今風なのに、店名ロゴが老舗喫茶店のようなフォントでグッとくる。

いかにも街のケーキ屋さん、という愛らしいたたずまい。季節によっては洋梨のショートケーキもあるではないか。

ケースの写真を見る限り、ケーキはすべて一点モノ?という雰囲気で、そのあたりを確かめたい。

裏にストックしているのだろうか。

あとこの店、昔わたしが住んでいた場所から徒歩数分の場所なので、大変気になっている。

お店の前の道、見覚えがありすぎる。

住んでいたときにはまだなかったお店だし、あっても「ひとりで食べてもな~」と思っていたと思う。

ひとりで食べてもおいしいものはおいしいんだぞ、製造者に失礼だぞ、と当時の自分に言ってやりたい。

繁忙期うんぬんの前に、営業日が限られていたり、自宅から遠かったりでなかなかハードルが高い店ばかりだが、来年の到達目標地点としたい。

2024年も、甘い記憶(舌と胃袋を)で埋め尽くすのだ。

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