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連載6 聖像の頂点? 

第6話Pick Up!
「あの生命力と死ぬ力強さのコントラストはモデルありきやな…もう仏像は進歩してないけど、進歩著しがった運慶さんは、モデルさん立ててはった」
 
〈前回までのあらすじ〉
仏像修理の相方はフランス人
秋葉原でフィギュア眺めながら親睦会
親方がもどるまでの暇つぶし


謙信さんか景勝さんかわからんけど
エラいセクシーなフィギュアになりはって、
見てみぃ、この太もも!
大腿骨のカーブここまで、やる?
すごいなー 芸術やな
 
「だけど、リアリティ感じない。360度全方向からは楽しめない。破綻してる角度あるよ。それは立体造形として失敗でしょ」

そやな〜
上半身が幼児体型やけど
下半身が熟女
実現したら運動能力ゼロの助さんやな
二足歩行も無理やろ
動けない立体さんや。
 
「頭蓋骨がとても小さいというか、なんというか」
無いな、、、頭の骨ない。脳みそが納まらんサイズやし
鎖骨はしっかり表現されてんのになぁ。
 
昔な、百歳近いおばあちゃんが飛行機乗ったんやわ
そしたらな
客室乗務員さん指さして仰るんわ
「こんなに頭が小さいのに難しい試験突破してスゴい」

「ちょっとわかんない」
おばあちゃんが若いころ、飛行機の客室乗務員さんは難関突破のスーパーエリートさんやったんや。
加えてな、頭が大きいほうが脳が大きい→賢い
そう思い込んではったんよ。
かわいいやろ。
 
「そういえば、仏像の頭には、大きいタンコブある」
アハハ
タンコブって、
菩薩はな、お地蔵さん以外、頭が2つあんねん。
賢いから。
「そんな人間いないでしょ。飛行機のおばあちゃんは菩薩見たの?」
まあ、おらんらわな。
ただエジプトの王族の墓から長頭骨がでてきたり、
中国なんかでは仙人骨なんて言うてな
なんやった?
脊椎がひとつ多くてー頭蓋骨が長くてー
というお人がたまに生まれると奇跡おこす聖人さまにお成りあそばされるー
なんて言い伝えあってな
「エジプトの長頭骨はネットでみたけど、自然じゃないでしょう。赤ちゃんの頃からムリヤリ矯正したって記事よんだよ」
まあ、そうかもしれへんけど。
それでもな、
王族たるもの長頭骨がふさわしいって考え方はあったんちゃう?
「なるほど、今、検索したらカトリック教会もエジプトも長頭骨ファッションが伝統的にあるって」
日本にもあるよ、烏帽子いうて、縦に長いカブリモン
あれしたら、だれでも、長頭骨に見えるな。

ついでに言っとくと、仏像も坐像は破綻しがちぃや。
「僕も不思議に思ってた。
足が短すぎる、腕が長すぎる」
 
そやな、さっきの仙人骨と同じで菩薩は極端に腕が長くて足が短くて、腕が膝下までくる、やら、耳たぶが肩までくるとか
なんかの経典に書いてあるんや。
三国志の劉玄徳さんが、そういう体型やったらしいが
真偽はともかく吉祥あつかいフォルムやな。
お陰様で彫刻家は楽さしてもろてる。

「人間をモデルに仏像彫れないじゃない?」
 そやな、、、高村光雲さん以降が訂正しようとな、
仏像を人間体型に設定して造形してるけど
苦労してはるな
 
「わかった。だから仏像はポーズがバラエティ少ないのか?」
痛いとこつく外人さんやな、、、
「だってバレリーナをモデルにできないでしょ。伸びやかさが与えられない」
だから、自分と今、ラジオ会館回って、セクシーポーズのフィギュア見て回ってるやないの、、、って冗談や。
 
仏像もチベットのほうまで源流をたどっていくと
伸びやかさ豊かなポーズの仏像たくさんや。
ヨガの要素つよなってくる
「ヨガと禅はなにが違うの?」
さあ、わからへんけど仏像の変遷から察するに
中国で漢字訳されるときにヨガの要素はたいがい失伝したみたいやな。
スクラップ アンド ビルドやな、ヨガ→禅は。
「仏像の役割が中国より西では違う?」
違うなー。東にいくほど偶像崇拝が強くなるし、西に行くほどなんつーか、
型や印を伝える媒体って感じやな。
芸術性よりも記録が大事って感じや
ヨガのポーズ集みたいや、仏像
十一面観音さんがトーテムポールみたいやし
 
「生きてる人間をモデルにコラボしないと進歩しないでしょ」

そやな。
ミケランジェロさんのピエタが、あらゆる聖像のてっぺん
と言うんは、日本でもよく聞く。
あの生命力と死ぬ力強さのコントラストはモデルありきやな。
 
たしかに、生命力のあるモデルさん見据えてないとアカンやろ、か?
進歩著しがった運慶さん慶派は、モデルさん立ててはったやろ、し
(お尻の慶派)なんてな。
顔より尻が立体の要いうからには、ムキムキの力士みながら金剛力士彫ったんちゃうか。 画角(やキャンパス)からはみ出る造形は、岡本太郎さんも言ってはったな、爆発を実際に目の当たりにせんと及び腰に終わる
平櫛田中さんも、有名な歌舞伎役者さんモデルにしてはったし、、、
裸にひんむいてな、筋肉の動き調べはったなぁ
日本の旅芸人をわざわざヨーロッパまで連れ帰って専属モデルにしたロダンさん、まあ、ロダンさんに衝撃を受けた仏師は少なくなかったやろ
ロダンさんの扱うテーマは地獄門もそうやけど、わりかし仏教的なの多いな。
 
「ギリシャ神話は仏像に影響ないの?」
影響っていうか似たようなモチーフがあるから、どうしても比較していまう。孔雀と女神いうたらヘラと孔雀明王さんやし、フクロウと女神いうたらミネルヴァと妙見菩薩。
キリスト教のモチーフだと獅子と聖者でヒエロニムスと文殊さんや。
天下のダビンチさんも描いてるな、ヒエロニムス。
ダビンチさんのモナリザは全ての仏像に影響しがちや、間違いないな。
アルカイックスマイルのお手本や。
「モナリザはフランスではジョコンダと言うけど2枚あるよ。有名なのは暗い喪服の。明るいモナリザが別にある」
うそ! ほんま?
都市伝説ではなく?
「フランスではわりと有名。ただ、ダビンチ作の公式認定はとても時間がかかる」
なるほど、鑑定中の掘り出し物か。見てみたいな。
「ネットに上がってると思う、これ」
 おー、説得力あるなー
またまた、仏教的なカラーリングですこと。
まあ、とにかくーや
 
立体造形は建物と同じでムツカシイからな
質量や素材のじん性、硬度と加工しにくさ、テクスチャやら
経年劣化予想いろいろや
多少の誤魔化し必要悪ゥー
オヤクソクっていうんやで
 
「ミケランジェロのピエタはスゴいけど、ちょっとおかしい。、マリアが大きすぎる。男性体型。キリストよりマリアが大きい。頭だけが女性。変」
おー自分、きっついな
炯眼や。末おそろしいわ
師匠と同じこと言うてるで、キミ。
 
「ミケランジェロはピエタを4つ作った」
!!
なんやってー
 
→立体として破綻してても失われない価値いろいろ

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