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橋本左内著・夏川賀央翻訳(2016)『啓発録』致知出版社

混沌とした現代に通用する教え

5年も前に購入していたにも関わらず、読まずに積んでいた本である。
何故か気になりつつ、読み始めると、うなずける内容が多々あり感動を覚えた次第である。

吉田松陰や西郷隆盛に関する本は色々と読んではいたが、それらの人物に影響を与えたとされる橋本左内に関しては、現代ではあまり耳にしない名前ではないだろうか。

本書は、現代語訳で理解しやすい文章としてまとめられており、啓発録に関しても時間をかけずに読むことが出来る。

特に「勉学」に関しては、単に読み書きや読書だけでは「道具を揃えること」に過ぎないと説いているところ。優れた考えを学べば直ぐにその行動の背景となった思想や精神を慕って、模倣する、これが学びの第一歩という点。

その上で「主君に忠誠を尽くし、親に孝行を尽くすまっすぐな心を持って、文武両方に心血を注いで究めるのだ。そうすれば平和な時代に召し抱えられた際は、主君の誤りを補い、その徳がますます民衆に降り注ぐよう、家臣として手助けする事ができる。あるいは役人になった場合は、その役どころの業務を首尾よく努め、えこひいきをすることなく、賄賂を受け取ることなく、公平に仕事をするのだ。そうすれば周囲の人間は皆、あなたの徳を慕い、あなたの威厳を敬うようになる。」少々長い引用ではあるけど、今の自分にはグッとささる内容だった。

何故かと言えば、わたしが警告したにも関わらず、わたしの同僚と上司が結託してインシデント情報をトップに上げないという不正を働いたため…
しかも他の部署のインシデントは鬼の首をとったかの如く速報し、自分たちの部署のインシデントは隠蔽している。それが昨今の地方公務員であり、わたしは告発の上、このような組織は信頼されないとスパッと辞めることにした。橋本左内の言葉は、現代の公務員にもそっくり当てはまっている。

左内の言葉は教育する者にも向けられる。自ら優れた行動を示す者のみが、正しい道を教えられると説く。そして良き人材を得る基本的要素は、人材を知り、これを育て、完成させ、活用するという方法に尽きるという。

これらの見解を、きちんと上の者に対しても言い放った橋本左内という人物は、確かに吉田松陰や西郷隆盛の精神の中にも宿っているように感じた。

自分の決断をサポートしてくれる本に丁度よいタイミングで出会った感じがした。
本書に心を救われた。

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