渡邉哲也著(2022)『安倍晋三が目指した世界 日本人に託した未来』株式会社徳間書店
わかりやすい人物評
衝撃的な事件の後、直ぐに登場した本で、当時はアマゾンで直ぐにポチッと購入したものです。最近になって読んでみたのですが、新書サイズの割にはしっかりとまとまっている内容でした。
本書では特別資料として、安倍元総理の関係した法律や内閣の閣僚名簿などが本全体の1/3を占めていて、野党やマスコミ、はたまた財務省関係で邪魔が多かった政権運営の中でも、法案含め歩みは止まっていなかったのだと、これらの資料から理解しました。
著者もどちらかといえば保守系の論者であるかと思いますが、本書に関しては中立的な俯瞰した観点からの記述のように感じられました。
安倍元総理時代が、世界の中で日本が外交に関してはリードしていたように感じます。東京五輪の誘致の際のプレゼンテーションで福島は完全にコントロール下のもとにあるという主旨の発言は、当時わたしも懐疑的でした。しかし、プレゼンの手法や演説でのスピーチライターの秀逸な文章など、この時期に試みられたいくつかの内容は、良い手法だと思った次第でした。その意味では、欧米のプレゼン手法に合致した内容で、世界から理解される日本の主張というところに気を使った総理だったのかも知れません。
特に、荒ぶるトランプ大統領との関係を早期に築き、韓国や中国に対しても毅然とした外交を展開した手腕は高く評価されるべきかと思っています。その動きに合わせて菅政権も続いたけれど、岸田総理になって、特に当時の林外相あたりが、それらの築かれた外交を消し去ってしまい、今や中国や韓国忖度の程度もひどくなった感がする。
自民党も現在は党内左派ばかりで、もはや保守政党なのかも疑わしい事態になってきているが、そのような現状と比較すると、近年で一番安定した政権だったのかも知れない。
「自由で開かれたインド太平洋」という言葉は、今でも日本にとっては生命線だと思うし、アジアとの高い関係性を維持し続けるためにも重要な観点かと思うが、この点も現政権は無視に近く、それと同時に日本の外交でのイニシアチブも廃れてしまった感がする。
日本は当分の間、新たなリーダー不足な政治と、責任を取らない議員で国会での新喜劇を繰り返すのだろう。
安倍元総理が去ったことが、古き良き自民党時代の終焉の始まりとして語り継がれるのかも知れない。
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