ベンチャー vs 大企業 論争の着地点

こんにちは、髙橋新平です。
ourlyという組織コミュニケーション活性のITツールの会社を経営しています。

巷でよく話題の「大企業 vs ベンチャー」のキャリア論争をよく耳にします。僕自身キャリアの中で両方とも経験し、コンサルタントとして関わった経験もあるので僕なりの考えをまとめておきたいと思います。

僕のキャリアのまとめは下記です。

  • 【大企業】ダイキン工業に新卒入社

  • 【ベンチャー社員】当時14名のENERGIZE入社

  • 【フリーランス】個人コンサルタント

  • 【経営】ourly株式会社 取締役COO

なぜ不毛なキャリア論争に巻き込まれるのか?

大企業かベンチャーかという話題を聞くたびに、
大企業にいる人は「ベンチャーに行かないとダメなのかも?」
新卒でベンチャーに入った人は「やっぱり大企業の方が良かったかも?」
とか思考が振り回されているんじゃないかなと思います。

そもそも、なぜこんな無益な論争に左右されてしまうかというと、
”自分の人生をどうしていきたいか?”が決まっていない
からにつきるんじゃないかなと思います。

僕は必ず採用面接で「自分自身の人生をどうしていきたいですか?」と聴くようにしています。スタートアップという不確実性の高い、ある種特殊な環境で一緒に仕事をしようと思ったら、人生の価値観や将来像を共有できないと会社(法人)と個人が相互に貢献することはできないと考えているからです。

では、人生どうしたいか?と聞いたときにざっくり
「稼ぎたいです!」
「家族を大切にできるようになりたいです!」
みたいな話はよく聞くんですが、この目的意識があること自体は悪くないのですが、解像度が劇的に低いのが特徴で、これが”自分の人生が決まっていない状態”だとしています。

僕のメンター経営者が提唱している問題に
「年収1,000万円 ベンツゲレンデ問題」
というものがあり、

20代で稼ぐ意欲や成長意欲の一定高い方に見られる
「30歳までに年収1,000万円稼げるようになりたいです!」
「ベンツのゲレンデに乗れるようになりたいです!」という話
だそうです。笑

この話の面白いところは、
「年収999万円じゃダメなの?」と聞くと、「999万円でも良い」となるそうです。
1万円ずつ下げて言っても900~950万円くらいまでは良しとされるのが特徴だそうです。笑
またゲレンデ問題も同様に、「乗れる」というのはレンタカーだとダメだが、リースだと良いらしいです。
(リースだと所有権は本人に無いんですがw)

何が言いたいかというと、
ようは「年収1000万円 ベンツゲレンデ問題」は自分の人生について考えきれていないということの現れだということです。

  • 自分の人生において最も大切にしたいことは何なのか?

  • なぜそうなのか?なぜそうでなければならないのか?

  • なぜ1000万円なのか?なぜ30歳なのか?35歳ではダメなのか?

  • ゲレンデがなぜ大事なのか?ベンツの他の車種ではなぜダメなのか?

などなど自分の人生について考えて、決める。
これができないことが論争に巻き込まれて、他人の意見や強い言葉に影響を受け、右往左往してしまう根本かなと思います。
なので、まずは自分の人生をどうしていきたいか?の解像度をきっちりあげて自分の中で言語化する。そうしたら「大企業 vs ベンチャー」みたいな不毛な論争に人生を左右されることも無いのではないかなと思います。

とはいえ、大企業かベンチャーかの意見を聞きたいと思う方もいると思うので、どちらも経験した立場から僕の考えを述べていきたいと思います。

大企業キャリア

大企業というのは、集団として社会に大きな付加価値を生み出す装置だと思っています。なので、一人ひとりの社員に求められるのは、その装置の枠組のなかでうまく動く能力
周囲の社員と適切に協力しながら、世の中に対して大きな付加価値を出していく能力が求められます。

なので、装置から逸脱するような行動は求められない傾向にありますし、装置の中の一要素として会社の要求通りに効率的に動くことが求められます。

大企業における終身雇用制度が崩壊するとか、その会社でしか必要とされないスキルしか身につかない的な話は、もちろんあるとは思うんですが、それよりも同じ会社で、同じ場所に、同じような人と仕事キャリアの40年近くを変わり映えのしないところで過ごすことの方に問題があるんじゃないかなと思っています。
(問題があるというのは前述した人生で大切にしたいことに照らし合わせてそこに居続けることは適切なのか?ということ)

当然、大企業とベンチャーの両方に所属した身として感じるのは、大企業では確かに自分自身に稼ぐスキルは身につきにくい。なので大企業で給与が上がってきてしまっている人が転職市場で同じ額の給与で評価され、転職できるかというとそうではないです。

とはいえ、大企業であればオフィス環境や福利厚生や給与が一定水準で上がっていくことなどは魅力で、また知名度もある。
それが自分の人生にとって本当に価値あるものなのであれば、そこにいるべきです。
大事なことは、ベンチャーが良いと短絡的に言う人のキャッチーでアホな言説に振り回される必要はないということ。
とはいえ、大企業も潰れる可能性はゼロではないので、万が一つぶれたときに替えがきくように、仕事の能力や転職の際に評価されるスキル、実績は身につけておくにこしたことはないと思います。

ベンチャーキャリア

では、ベンチャーはどうか?
ベンチャー企業は仕組みが整っていないことやヒト・モノ・カネの経営資源が乏しいことから、人に任される仕事の範囲が広いのはあると思います。
なので、ベンチャー企業に入るとビジネスの全体感を学べるというのは一定あります。
(学ぶ意欲がないと環境だけでは学べないですが…)

ただ、大企業以上にリスクがあるのが”会社選びガチャ”です。
もっと言うと業界やそのベンチャーがいる市場ドメインのガチャがあります。

キャリアを積んでいく上では
業界の生産性、業界の成長率はとっても大事です。
年収を上げていこうと思ったら業界の生産性(ざっくり利益率)が大事ですし、マネジメントなどの経験を積もうと思ったら業界の成長率(市場が成長しているとマネジメントポストが生まれやすい)が大事です。

そもそも市場選び、業界選びをミスすると自分の人生軸と合わない仕事を業界内でやり続けざるを得ない可能性もあります。
筋の良い業界を選べたとしても会社選びガチャが存在します。これは大企業の配属ガチャとは比べ物にならないくらいリスクが大きく、当然リターンも大きいものだと思います。

若干33歳ですが、色々なベンチャー企業、ベンチャー経営者とお仕事をさせていただいてきましたが、
なんだか何のために会社をやっているのかよく分からない経営者も沢山います。
また私利私欲、私腹を肥やすために会社をやっている人もいたりするので、そういうところに入ってしまったが最後、安い賃金で猛烈に働かさせられる可能性だってあります。

実際に僕の友人は31歳で大企業からベンチャー転職にチャレンジしたのですが、とっても残念な会社に入ってしまったため、毎日役員からの激詰めにあい続け、精神が壊れる前にという形で9ヶ月で退職してしまった友人もいます。

一方で筋の良いベンチャー企業を選べば、社会貢献実感や自己成長実感、そしてキャリアと給与のステップアップが手に入ります。
(自分が携わっている会社をこういう会社にしていかなければという自戒もこめて)

結論、ベンチャーであっても自分自身で考える力が無ければ選択を間違う可能性があるし、選択を間違った際のリスクは大企業と比べ物にならないということだと思います。
ベンチャー企業は経営資源の無い中で成果を出すことが求められるので、思考力、情報収集力、行動力の求められるレベルが大企業より高いかもしれません。
なので、大企業からベンチャー企業にヘッドハンティングっぽく見せている人材紹介エージェントさんにお任せして、自分でよく考えもせず転職なんかしようもんならリスクしかないので、全くオススメできません。

フリーランス

昨今はSNSでも「フリーランスになって自由な働き方を」的なPRをされている方が多いので、20代の方と話しているとフリーランスという選択肢を持っている方はまぁまぁいるなと思います。

フリーランスは確かに時間あたりの提供価値が大きければ働き方も生き方も自由になります。
ただし、ここでも業界選定とフリーランス特有の職種選定(何を仕事にするか?)がとっても大事になります。

SNSで話題になっているフリーランスの方々はプラットフォーム(YouTubeやInstagram)に依存する仕事になっていたり、動画編集やライティングなど言い方は雑で失礼かもしれないですが下請け仕事になっている場合が多いです。
今はそのプラットフォームが盛り上がっているので、時流として動画編集ニーズが多いので食べていけるかもしれませんが、当然市場ニーズは変わっていきますので、動画編集が誰でもできるようになってしまってニーズが縮小したときに気がつけずにジリ貧になるという可能性は否めないと思います。

なので、常に市場の変化やトレンドを先取りする勤勉さやストイックさがないとフリーランスとして個人で生き続けるのは難しいと思います。
逆にそういったトレンドを追求するのが好きで好きでしょうがない人にとってはフリーランスという仕事の仕方は天職になり得ます。
自分自身で常に新しことを学び、それを活用して世の中に価値提供して報酬をいただく。会社のルールも無いので働く時間、場所を自由に選べる。

なので、動画編集で副業!とかインスタの記事作成で副業!とかフリーランス化!とかそういうのは筋の悪い選択になってしまうかもしれないということを肝に命じるべきです。
フリーランスになって豊かになると思ったら、税金も社会保障のことも考慮に入れてなかったし、案件を獲得するので精一杯だし、なんか会社勤めのときよりしんどいみたいなことになるリスクはあると思います。

じゃあキャリアどうやって積んだら良いんだよ!!
に答えてみる。

ここまで長い僕の意見にお付き合いいただきありがとうございます。
ここでやっと結論とまとめになりますので、もう少しお付き合いください。
僕なりのここまでのことを踏まえてキャリアについてこう考えたら良いのではないかということをまとめてみます。

  1. 人生の価値観、人生の軸を決める(もちろん変わっていっても良い)

  2. 筋の良い業界を選ぶ

  3. 筋の良い会社を選ぶ

  4. 自身のスキルと評判が高まるよう適切な場所で努力する

  5. 自身のスキルと評判でキャリアアップして稼げるようになる

  6. 時間あたり稼げるようになることで人生の選択肢を増やす


1. 人生の価値観、人生の軸を決める(もちろん変わっていっても良い)

変わってもいいから自分の人生を今の時点でどうしていきたいのか?をちゃんと言語化しましょう。いつまでにいくら必要なのか?どこに住むのか?パートナーはどうするのか?どんな仕事でどんな人と付き合うのか?などなど具体の具体の具体まで言語化することです。
前述の通り「30歳までに1000万円」も悪くはないですが、この意味合いを自分で思考して考えること、なぜそれが自分にとって大事なのか?なぜ999万円ではダメななのか?を徹底的に考えること、だと思っています。
よく、20代で自分探しの旅に出かける方がいますが、自分の人生を考えるのに海外に行く必要はないはずなんです。
(経験として積むのは超オススメです。)
自分探しの旅に出ても見つからないので、自分と向き合い考えることが大事だなと思います。


2. 筋の良い業界を選ぶ

自分の人生軸が決まったら、色々な業界の人や仕事をしている人とお話してみるのが良いと思います。学生や20代では世の中の仕事のほ〜〜〜〜〜んの一部しか知らないわけなので、色々な人と話して業界の話や仕事のやりがいを聞いて業界の特徴を生の情報として仕入れることが大事です。

その中でできれば”業界生産性が高い業界”と”業界成長率が高い業界”を選べるとキャリアの選択肢は広げやすくなります。

同じ人事という仕事であっても飲食業の人事とコンサル業の人事は給与水準が全然違います。これは業界の生産性が起因しています。

また、成長率が高い会社は当然報酬も高くなる傾向があること。
企業が普通にやっていれば市場成長率と同等では伸びるので、ポストや社内でマネジメント経験のチャンスが生まれやすいです。

ここに付随して、”人に対してスキルや評判がつきやすい業界”を選べたら最高です。
例えばコンサルやマーケティングを仕事にしている代理店は業界で有名人になる人が生まれやすいです。
それはなぜなら人にスキルが帰着しやすい仕事だからです。

人生の軸は大事なのですが、やはり資本主義社会に私たちは生きているので、時間単位で稼げる資本を大きくしておくことは、将来の選択肢を増やすことにつながります。

と社会的な構造からキャリアを論じてみましたが、それでも大事なことは自分の人生軸を主軸にした意思決定なので、このときに自分の人生軸からブレていないか?は常にチェックすると良いでしょう。

3. 筋の良い会社を選ぶ

業界が選べたら、会社選びです。
前述の通り、特にベンチャーやスタートアップの場合は会社選びガチャがあるので注意が必要です。

できれば今後伸びる可能性を見極め、嗅ぎ分けられると本当に良い選択になると思います。

例えば、メルカリの1人目人事だった人は多分いまも
「メルカリの一人目人事で立ち上げからずっとやっていました」
で仕事があったりすると思うんですよね。

なので、伸びる可能性のある伸びている会社に入ることができればとても良いですし、伸びている会社は経営者が優秀である確率が高いのでそういう意味でもオススメです。(全部がそうではないので注意)

なので、今すでに制度やビジネスプロセスが出来上がってしまっている会社に入ってしまうと、「自分で創った」という経験ができないため、スキルや実績がつきにくい。
例えば、人事としてGoogleに入ったとしても、できあがった制度をチューニングする人事になるだけで、正直スキルと評判は身につきにくい可能性だってあるってことです。
(Googleが嫌いなわけではないです。Googleは大好きです。)


4. 自身のスキルと評判が高まるよう適切な場所で努力する

本当に元も子もないのですが、適切な環境にいてもそこで努力できないと当然ですが、自分の市場価値を高めることや人生の豊かさは手に入りません。
強豪校の部活にいてもサボってたりマインドが微妙だったら試合に出れないのと同じで、良い環境にいても自分で思考し、工夫し、行動することでしか自分のスキルや実績、そしてやりがいは得られないのでそこでちゃんと努力することが大事です。

要注意なのが”簡単な努力に逃げない”というのはあるかなと思います。本当に自分の実績やスキルになるような努力って自分自身のこれまでのやり方や考え方を根本的に覆すようなもので、精神的なカオスがあったりするものだと思います。
ただ、”本を読んでいる”は全く努力にならないので、本を読むこと自体は素晴らしいですが、それを実行に移す。
そういうスタンスが大事になると思います。

5. 自身のスキルと評判でキャリアアップして稼げるようになる

良い環境で良い努力ができると当然スキルと実績が積み上がります。
そうなると、時間あたりに提供できる付加価値が増え、当然報酬があがるようになりますし、面白い仕事が集まってくるようになります。
このサイクルに入ってしまえばこちらのものです。
その後も実績やスキルが身についたり、自分がやりがいを感じる仕事を選び、報酬を上げていくということができれば最高って感じですね。

やはり面白い仕事は優秀な人に集まってくるのは当然のことだと思います。
なので、自分で努力してスキルと実績をつけ、評判になれば面白い仕事が舞い込んでくるようになるでしょう。


6. 時間あたり稼げるようになることで人生の選択肢を増やす

時間あたりに社会に提供できる付加価値が増えると、当然短時間で多くのお金を稼げるようになります。
そうなると労働時間を圧縮して生活することもできるかもしれないし、労働時間は変えずにお金を増やして投資に回すこともできるようになるかもしれない。
大事なことは”選択肢を持てるようになる”ことだということです。

資本主義社会においては選択肢を持つこと自体が価値です。
難関大学出身の人は大企業も中小企業もベンチャーも選択肢に入れられます。
一方で偏差値の低い大学出身だと大企業という選択肢は難しくなります。
これが選択肢が多いということの分かりやすい価値です。

人生の価値観にあわせて選択できるオプションが多い状態を手に入れるということが大事です。
昨今の「ベンチャー vs 大企業論争」についても今のキャリアに不安感を覚える方は「この会社でしか評価されない自分になってしまっている」という選択肢(オプション)の無さがそれを引き起こしていると思います。

自分のスキル、実績、評判を高めれば選択肢は当然増えます。
仕事を選ぶこともできるようになります。
そのステージに行くことができれば、自分のキャリアを自分でコントロールできている実感も得られるでしょう。


補足:できれば20代で上記のスパイラルに入ること

チャレンジするのに遅すぎることは無いですが、できれば若いうちに上記のスパイラルに入っておくことが望ましいと考えています。

若いうちから自分の人生についてきちんと考え、思考しておくこと自体が豊かな人生をつくります。
またキャリア形成上も20代は未経験でも面白い仕事を任せてもらえる可能性が高いです。
ベンチャーやスタートアップが20代の未経験を採用するのは、成長角度が高いことや新しいコンセプトを学んでビジネスに活かす能力を買ってのことだと思います。
一方で年齢で採用で割を食うということは残念ながらあり得るのが残酷な採用市場における判断だと思います。
採用する企業側からすると20代努力できなかった人が30代で努力できる保証はないですし、20代で努力してきた人は30代も努力してくれるかもと企業は考えます。

ですから20代のうちに良い環境を選び、良い環境で努力をして30代でまた面白いステージにステップアップするというのが大事なのかなと

まとめ

こんな長いnoteにお付き合いいただきありがとうございます。
自分なりの経験をもとにキャリア論を書いてみました。
繰り返しになりますが、いちばん大事なのは
「自分の人生についてとことん考える」
だと思っていますので、この言語化をどれだけできるかだけでも人生をどうしていくか?が見えてくると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?