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コンサルティングセールスに関する文献があまりにも無いので、言語化してみた

コンサルティングセールスを言語化した背景


「コンサルティングセールス」という言葉があちこちで聞かれるようになって、ずいぶんと経つように感じます。

僕自身が「コンサルティングセールス」という言葉を聞いたのは新卒で入社したダイキン工業でした。
入社式で「顧客のニーズを作り出して販売するコンサルティングセールスが必要である!」と社長が言っていたのを記憶しています。
とはいえ、配属されてやることと言えば空調シェア圧倒的No.1のダイキン工業の営業は常に「プロダクトセールス」でした。※ プロダクトセールスについては後述

私が本格的に「コンサルティングセールス」をする必要に迫られたのは転職してベンチャーのコンサルティング会社であるENERGIZE-GROUPに入社してからでした。コンサルティングなので、当然と言えば当然ですが、目に見える商品が無いため会話によってニーズ解決イメージを作り出し、提案書に起こして販売する。まさしく「コンサルティングセールス」に触れ始めたタイミングでした。

セールスの才能が無かった僕は、2人の社長のセールスを見ながら「なぜこういう進め方なのだろう?」「なぜこういう言い回しなのだろう?」という疑問を持ち、それに答えを自分なりに出しながら、セールスで少しずつ成果が出せるようになりました。
今では複数の会社のセールスコンサルティングを実行させていただいており、ourly株式会社ではセールスの執行役員として営業マネジメントにも当たらせていただいています。

コンサルティングセールスは今では、ほとんどのBtoB、BtoCの営業にとって必要なスキルであるのにも関わらず、文献として体系的にまとまっているものがほとんどありません。
なので、今回は「コンサルティングセールス」とは何か?ということを体系的に言語化することに挑戦してみたいと思います。


本記事を読んでほしい人


  • 営業と名のつく職業についている人

  • 特に高額商品を扱っている営業

  • PMF前のSaaSプロダクトの営業に携わっている人

  • 無形商材を販売する営業をしている人


本記事で得られること


  • コンサルティングセールスとは何か?

  • コンサルティングセールスの体系的な知識

  • コンサルティングセールスのプロセスの設計、改善方法

  • コンサルティングセールスをするために必要な要素


そもそも、コンサルティングセールスとは何か?


そもそも、こんなにも「コンサルティングセールス」という言葉があちこちで使われているのにも関わらず、自分なりの確固たる定義をもってコンサルティングセールスを捉えている人はどこまでいるでしょうか?

コンサルティングとは?

コンサルティングの語源をたどってみると
コンサルタントの語源はラテン語の “consiliarius” 「共に座る」という単語が語源になっており、ここから「協議する」「意見を交わし合う」という意味に発展したようです。

コンサルティングの意味はWEBで調べてみると

専門家の立場から相談にのったり指導したりすること。また、企画・立案を手伝うこと。

weblio辞書

ある分野についての豊富な経験と深い知識をもとに、クライアントの課題を解決するための解決策を示し、企画の立案や実行などを手伝う業務のことを示します。

マイナビニュース

コンサルティングセールスとは?

上記のコンサルティングにセールス(営業/販売)が組み合わさることになるので、「コンサルティングセールス」とは

ある分野について豊富な経験と深い知識をもとに、顧客の課題解決のための解決策を提案し販売すること

となりそうなんですが、ちょっとしっくりきません。理由はコンサルティングセールスする際の顧客は ”自分の課題を正しく把握できているとは限らない”と思うからです。ちょうどヘンリー・フォードが下記のように言い残したと言われていることに近いかもしれません。

要するに、顧客は常に自分の改善された理想状態を把握しているわけではない、なので、顧客に「あなたのビジネス(人生)における理想ってこうではないですか?」と共に理想を創り出す必要もあると思ったからです。

この要素を追加するとしたら

ある分野について豊富な経験と深い知識をもとに、顧客と共に理想状態を描き、その理想を実現するために解決するべき問題を解決する手段を販売すること

と言えそうです。
これはかなり、良い定義ではないかと個人的には考えており、後述しますが、コンサルティングセールスの「理想 → 問題 → 手段」というステップを端的に表すことができています。

セールスにおいて超えるべき5つの心理ステップ


セールスは顧客に商品やサービスを購入してもらうことを指していますが、顧客が”買う”という行動変容、態度変容を起こすためには超えるべき心理的なステップが5つあると考えています。
本ステップは様々な文献をもとにこうではないかな?と現状考えているもので、世の中に沢山の心理ステップがあるので、色々と調べてみると面白いなと思います。

セールスにおける5つの心理ステップ

  • 法人に対する信頼が醸成されている

  • 営業個人に対する信頼が醸成されている

  • ニーズ(理想/問題)が喚起されている

  • ニーズの解決イメージが醸成されている

  • 実施、実行に関する懸念が払拭されている

基本的には上記の5つが満たせていれば人(顧客)はモノやサービスを購入するという意思決定ができると考えています。


法人に対する信頼が醸成されている

法人が信用に足る存在であるか?取引や契約をスタートするに相応しい法人か?将来的に一緒に取り組みをするとして、安心して任せることができるか?などが顧客の中で確固たる自信になっている必要がある。

営業個人に対する信頼が醸成されている

営業個人が信用に足る存在であるか?取引や契約が法人相手であったとしてもやり通してくれそうか?実績は十分にありそうか?安心して様々なことを任せられそうか?

(参考)信用と信頼の違い

ニーズ(理想/問題)が喚起されている

上記の2つの信頼が顧客との間に十分に醸成されている状態で、共に理想を描き出す。その理想が大きくて、重要度が高く、緊急度が高いと顧客が思えている状態が理想的。
多くの場合、ニーズ喚起はできているが「今じゃない」と断られる場合は「今買う理由が作られていない」という点もありますが、何よりニーズが増大化して緊急度が顧客の中で大きくなっていない状態であると考えられます。

上記の図でイメージしてみると、もともと顧客の中で重要度も緊急度も低かったものを理想を共に描くことにより、①が②に移行して、重要度は上がることが多い。(例えば人材育成って大事ですよね!的な)ただし、経営における緊急度が十分に醸成されていないので、「今買う!」が起きにくい。
この場合は①から③に移行したいので、顧客にとって今買う理由を作り出す必要がある。例えば「人材育成しながら、コストも下げて、売上も上げられちゃいます!」などがそれに当たる。(もしそんなことが可能なら是非とも私もそのサービスを買ってみたい)

ここで、顧客と共に理想を描き、その理想は緊急度も重要度も高く、「今すぐ理想を手に入れるために着手する必要がある!」と強く思わせられるかがとても大事です。

ニーズの解決イメージが醸成されている

上記までの部分で、十分に顧客と理想的な未来が描けて、現状とのGAPが作り出せたとすると、あとはそれを手に入れるための手段としてあなたの商品やサービスを売り込めば良い状態になっています。
特にその手段としての商品やサービスがなぜ、理想を手に入れることを実現するのか?という部分が論理的に構築できると相手は納得感を持って、あなたの商品やサービスを受け入れられると考えられます。

実施、実行に関する懸念が払拭されている

上記ができたところで、あともう一息です。新しい商品やサービスの購入は常に懸念や不安がつきものです。初めて買う商品であれば「すぐ壊れたりしないかな?」「使い勝手が本当は悪かったりしないかな?」サービスであれば「本当にこの人はやりきってくれるかな?」「自分たちに必要な工数があって、忙しくなってしまわないかな?」などです。
こういった懸念を顧客は持つものなので、実施、実行に際しての懸念を必ずヒアリングして、その対策方法を示しておく必要があります。


上記の5つの心理ステップを完璧に満たして初めて顧客は「購入する」という行動変容、態度変容を起こすことができます。
セールスとは5つの心理ステップをクリアするために顧客をサポートしていく行為とも言いかえられると思います。


コンサルティングセールスのニーズ喚起


コンサルティングセールス vs プロダクトセールス


「コンサルティングセールス」の対義語があるとしたら何でしょうか?それは「プロダクトセールス」では無いかなと思います。
理由はプロダクトセールスの場合は機能や他社との相違点を的確に伝えることに主眼が置かれているからです。
無形商材を販売する「サービスセールス」があるとすると、無形であるが故に機能や他社との違いを示しにくく、サービスを販売する際には「コンサルティングセールス」せざるを得ないと考えています。

コンサルティングセールスの特徴であるニーズ喚起

前述の比較表からも分かるように、プロダクトセールスの場合はニーズ喚起は必要ありませんが、コンサルティングセールスには明確にニーズ喚起が必要となります。
このニーズ喚起が上手にできるかどうか?が特に成果の出せるセールスとそうでないセールスの違いになると考えています。

ニーズ喚起の方法は下記のようになると考えています。

  1. 理想(ゴール)を共に描く

  2. 理想に対する現状を明確化する

  3. 理想と現状のGAP = 問題を創り出す

上記の図は営業コンサルの現場でよく使う図で、コンサルティングセールスにおけるニーズ喚起を分かりやすく表しています。
とにかく顧客にとって”手に入れたくてしょうがない理想の未来”を共に描くことができれば、あとは現状とのGAPが大きくなるので、それを解決する手段を提案するだけになります。
一流の営業というのは、この”手に入れたくてしょうがない理想の未来”を描く力が圧倒的で、なのでGAPが大きくなり提案単価も大きくなる傾向があると考えています。

コンサルティングセールスのプロセス設計


ここまでで、かなりコンサルティングセールスの全体像が見えてきたと思うので、どのようにしてそれをセールスプロセスに組み込むか?を示したいと思います。

前述の通り、5つの心理ステップを越えられれば、顧客は購入するという行動変容(態度変容)を起こすことができます。
セールスプロセスはこの5つの心理ステップを効果的、効率的に越えていくためのプロセスになります。
THE MODELに代表されるセールスの分業化の流れも基本的に心理ステップの担当を細分化して、セールス全体の生産性を向上させることが目的だと考えられます。

例えば下記はリードからリピートまでとても簡略化したセールスプロセスの図ですが、各プロセスでフォーカスするべき心理ステップが違っており、それぞれに目的と必要となる体験の設計、そのために必要なアジェンダが想定されています。

WEBページ上で購買が完了するD2Cのビジネスなども本質的には同じだと思っており、法人や販売サイトへの信頼があり、顧客がニーズをLPやメディア記事を通じて増幅させ、それを解決する手段としての商品があり、リピート率やクチコミ、有名人が使っているなどの情報で安心感と懸念の払拭を起こして「購買する」という態度変容を起こしています。

昨今はWEBマーケティングの手法がかなり一般化したこともありますし、コロナによってリモートワーク前提でのセールスプロセスの設計が必要とされていますが、原理原則は変わらず、WEBとリモート商談などの各プロセスで心理ステップのどこをクリアさせるのか?という設計から各プロセスが設計されます。

コンサルティングセールスをするために必要なこと


最後に、「コンサルティングセールス」というものを自分自身も実践する立場であり、営業コンサルの立場では様々な企業や個人に「コンサルティングセールス」を教える立場でもある私から実行する上で必要な要素を列挙して終わりにしたいと思います。

  • 顧客から信頼される人格者であること

  • 顧客の業界、業種、におけるプレーヤーや商慣習、業務プロセスなどの幅広い知識(実経験もあるとなお良い)

  • 顧客の業界が今後どのようになっていくか?という先見性

  • 顧客のニーズを喚起できるヒアリング力、提案力

上げだしたらきりがないですが、上記は特に重要だと考えています。
特徴は、コンサルティングセールスにおいて本当に重要なことに「自社商品の知識」というものは含まれないという点です。
もちろん最終的に解決策の提示の段階で必要といえば必要なのですが、それよりも顧客の信頼を得て、共に理想を描き、ニーズを創り出す。そこにコンサルティングセールスの真骨頂があると考えています。

私も自身のセールスと向き合いながら、営業コンサルをさせていただきながら、言語化を更に進めていますので、皆様の考えやアイデアをお聞かせいただけたら幸せです。


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