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国内エフェクター(楽器):トンデモ製品を高値で売る人、買う人

みなさん、こんにちは!
FSL(Fats Sound Laboratory)の厚木ファッツです。
お読みいただきまして、ありがとうございます!
今日は国内ハンドメイドエフェクターメーカー製品の価格の高さや、僕の理解し難い製品を法外な値段で売っている、そしてそれが買われているという現状について書いてみたいと思います。

国内ハンドメイドエフェクターメーカー(または、すでにハンドメイドではなく準大手になったメーカーも含む)のエフェクターは総じて価格が高いです。
¥5万以上のものもザラで、¥3万台でもかなり良心的な値段だと思います。
一方、国内外の量産メーカーの価格帯はと言いますと、¥1〜2万円台です。
性能なんてほぼ変わらないのに、なぜこんなに価格が違うのでしょうか??
ざっと2倍から3倍違いますし、モノによってはもっと差があります。
不思議ですよね。。。
(大手量産メーカーの部品、部材の購買力はちょっと置いておきますね)

価格は基本的にその製品が持つ付加価値を表すと思います。
また、マーケティングを勉強しますと、価格はメッセージを持つとも言われています。
安かろう悪かろうという言葉があるように、高いなと思う価格はその値段から強烈なメッセージを発することは確かです。高いんだから悪いはずはない、と。
良いものを安く、はマーケティング的には間違いで、良いものは高く売るというのが基本、悪戯に安く売るとせっかくの付加価値を自ら毀損することになるとも説かれています。
また、消費者側の目線では、こういう心理的な効果もあるでしょう。
ちょっと無理して高い製品を買った。
しかし、実際のところ期待してたほどではなかった。
そのとき、消費者はその製品のなんらかの良いところを探し出して、大枚をはたいた自身への正当化を図る。
みなさん、経験ないでしょうか?
実は僕はあります。。。
と言いふうに、高い値段というのはある種の魔力のようなものもあると思います。

ということで、高い値付けはマーケティングの手法の一つではありますが、こと国内ハンドメイドエフェクターメーカーに関してはそれだけではないと僕は思っています。
前回言いましたように、回路設計をゼロからスクラッチでできるメーカーは僕は少ない、またはほとんどないと見ています。
その場合、斬新な機能やシステムをエフェクターという製品に盛り込んで、それを付加価値にすることはまず不可能でしょう。
では彼らは何を付加価値として高い価格設定をしているのか。
ズバリ、部品です。
この風潮は凄いです。。。
(外国のメーカーでそういうことをしているというのは聞いたことがありません)
この製品は選りすぐりの部品で作っています、このエフェクターは全て最高級の部品を使ってできています、このペダルには1960年代に製造されたヴィンテージワイヤーが使われています、この製品はアルミの削り出しケースを使っています、etc。。。
このように、製品を組み上げるのに使う部品を高級品や希少品で固めることによって、それを付加価値としています(しようとしています)。
そういう製品を実際に買う人たちが、それが好きで、納得しているのなら仕方がないです。価値観は千差万別ですので、なんの問題もないと思います。
しかし、そのように部品代にコストが嵩んだ結果、製品の値段はもちろん高くなってしまいます。。。
そこで僕が疑問に思うのは、その価格の上昇の仕方に果たして意味、意義があるのか?ということなんです。
いくらそこに付加価値を感じで買うとしても、僕はその高価な価格に一度疑問を持ってみるべきだと思っています。
エフェクターの主な性能である”音”に対する付加価値に見合う価格(上昇)なのか、平ったくいうと、その高い部品、音に関係あんの?ということなんですね。

部品を付加価値としているメーカーの中には同種の部品をたくさん仕入れて、その中から作り手が納得する音が出る1個を選別して製品に組み込んでいるというメーカーも多いです。
この場合、例えば1個¥10の部品があるとします。
それをそのまま使うと、部品コストはもちろん¥10です。
しかし部品を選別した結果、10個に1個しか使わないとしたら、¥10の部品が¥100として製品価格に乗ることになります。
この時、本当に10個に1個という部品を使う必要があるのか、という疑問が湧いてきますよね?

例えば電気的に本当に1/10個の特性を持つ部品しか使えないのであれば仕方がないでしょう。
また高級部品でしか実現できない性能であれば、それも仕方がないと思います。
ではその性能とは何なのか、ということ。
エフェクターという製品の性質上、性能とはやはり音質です。
上記のようなメーカーはその音質をとあるギターとアンプを用いて決めるでしょう。
この時、例えばひと組のギターとアンプで部品を取っ替え引っ替えして音をチューニングしている場合、ひとたびお客様のところへ製品が行けば、お客様がメーカーと同じギターとアンプを使う保証は全くないので、違う楽器が使われることの方が多いと思います。
そして、それはその時点でメーカーにおける厳密なチューニングの意味、意義が崩れ去ることを意味しています。

ある程度幅を持った複数の組み合わせで音をチューニングしているとした場合でも、複数のギター/アンプの組み合わせの全ての妥協点を探すのは難しいですし(その時点で厳密な部品選別の意味、意義が薄まる)、その場合でも結局お客様のところへ行けば、前提は簡単に崩れるでしょう。
メーカーの中には、当社製品は高級ギターでないと性能が出ませんと謳っているメーカーもあるようですが、高級ギターと言っても千差万別、色々あります。。。
さらに、もし人間の耳でもって部品選定をしているとすれば、おそらくチューニングが完了した製品の音を次の日に再度聞いてみると。。。またチューニングのやり直しとなるでしょう。
このように人間が聴く音、感じる音という曖昧なものに対する厳密な部品選定なんて僕は意味がないと思っています。
以上のように、部品を厳選するということは、時間とコストをかける意味や意義があまりないですし、それを考えると、部品選定の結果である高価な価格というのにも意味がないと僕は思っています。
まぁ、TVの”格付け”みたいなもんで、ブラインドテストをやってみれば良いんです。

また、それ以前に、今の電子部品ってそんなにバラツキがあるの?という疑問もあります。
そして、それは部品のデータシートを見れば一目瞭然です。
例えば電解コンデンサの場合、OSコンという高級品があってエフェクターメーカーもこぞってそれを使います。
しかし、価格が格段に安い一般品とデータシートを見比べてみると、値段ほどの差はないと僕は判断しています。
少なくとも、それほど厳しい環境で使われることのないエフェクターに限っては、部品の性能の差は効いてこないでしょう。
部品選定をしてるメーカーは部品のデータシートを見ているかどうかも怪しいですし、またデータシートを理解できるかも怪しいのではないでしょうか?
(データシートを読み解くにはそれなりの電気的知識が必要です)

そして、部品を選別してエフェクターを作る場合、当然時間とコストがかかります。
そうなると月産代数はもちろん少なくなります。
月産代数が少なくなると、売り上げ、利益も下がります。
そこへきて部品コストがかかってくる。。。
こうなると製品価格を上げざるを得ないんですね。。。
これがハンドメイドエフェクターの価格が高い理由の一つでしょう。

さらに、部品選定による高価な価格設定はまだ理解できる部分もなくはないですが、僕がトンデモと思うのは、いわゆるヴィンテージ部品というものです。
例えば1960年代に製造された部品やワイヤー(銅線)を使うことによって、それを付加価値として製品価格に乗せるというやり方です。
特にワイヤーは電気的、物理的に音質には影響しないことがわかっています。
(個体物理や電磁気学の教科書を読めばわかると思います)
音質を変えるには、エネルギー保存則から、それに必要なエネルギーを注ぎ込む必要がありますが、ワイヤーのどこに電源端子があるのでしょうか?
にもかかわらず、このワイヤーは中音域が出るとか、高域が伸びるなんてよく聞きます。。。
これはトンデモと言われても仕方ないでしょう。。。
物理学を根底から否定し、新説を唱えているわけですから、もし本当であれば、科学的根拠を示すべきです。
しかしそういうアプローチをしているメーカーはついぞみたことがありません。
加えて、部品に付加価値を見出そうとするならまだしも、有名製品の丸コピー品を¥10万円近い値段で売っているメーカーもあるようです。
そしてそれが。。。売れるそうです。。。
このように物理的に意味のない製品はトンデモ製品と言われても仕方がないですし、部品選定で作られたモノも部品選定を付加価値だと謳うなら、その前提条件がいとも簡単に崩れることから、僕はトンデモの部類に入ると思っています。

ということで、僕はエフェクターという製品の付加価値を部品選定に理由づけするのは無意味だと思っています。
微妙な音質調整を1個1個時間とお金をかけてするより、トーンやボリュームなど調整回路の可変範囲を広く取ったほうがよっぽど合理的です。
実際、世の電機メーカー、半導体メーカーは製造バラツキが発生しても決められたスペックを満足するよう回路設計しています。
これが通常であり、健全なやり方です。
昨日聴いた音と印象が違っても、トーンツマミを回してその音が再現できれば、それでOKじゃないですか。
そこに高価な部品は必要ありません。

FSLも部品選定はもちろんしていますよ。
極力安い部品を選んでいます!
それが電機メーカーのスタンダードですしね!
何の変哲もない部品でいい音を作り、どんなギターとアンプでもいい音を出す、というのがFSLのポリシーです。

ファッツサウンドラボラトリー(FSL)
 代表:厚木ファッツ


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