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月と森のサブマリン ⑤       5トンユンボ         

(森でひとり潜水艦)

…。
重さ500キロの丸太。
これを運搬できる怪物を探して数カ月。
ネットの中古市場では、
その値は百を越える。
手も足もでない。
ジタバタ。
どうする?。
アカマツ林での伐採作業は、
キコリに変身した俺が、
毎週末コツコツと切り倒し、
アカマツ林のあちこちに丸太がころがる。
この累々(るいるい)と横たわる丸太達をどうするのか?。
それが問題だ。
なんとか運搬手段を考えなければならない。
…。
だが、
電撃の時が近づいていた。
それは車で田舎道を走っていた時の事。
視界に何かが入った。
ん?。
あアAァ阿アぁ~~~。
途端に、
脳天に数万ボルトの電撃が突き刺さった。
グサ-。
…。
道脇のオンボロ作業小屋の後方の畑に、
なにやらゴロンと転がるでかい金属の固まり。
あれは…。
…。
車は惰性で通過してゆく。
そのコンマ数秒の中、
俺の頭の中を様々なデーターが処理されてゆく。
ブ-ン。
あの金属のでかい固まりと、
ネットで見た多数の写真が、
カタカタと照合され。
そして閃いた。
あ、あれは、
…。
バックホ-。
数百メートル走り抜け、
そして、再び考えた。
あれは、
5トンクラスの腕が油圧で左右に平行移動する、
後方丸形バックホー…。
…。
ところで、
世の中には、
あちこちの建築屋の敷地や、
工事現場にゴロゴロバックホーは存在する。
なのに、
なぜ、
俺は、
その時、
バックホーらしき鉄の固まりに強烈に反応したのか?。
それは、
その風体が、
塗装がハゲ、
片側のキャタピラが外れ、
斜めに畑に横たわり、
サビつき、
長い年月野ざらしとなり、
放置されている、
といった、
寂しい風情がかもし出されていたからだ。
…。
これが、
新しく調子良さそうなバックホーであれば、
脳天にイナヅマなんぞ突き刺さる訳もない。
そんなバックホーが手に入るわけないのだ。
が、
そのオンボロに見えるバックホーは、
もう、使わないかから、放置されているように見えた。
…。
可能性かある。
…。
ど、
どうする?。
聞くか?。
安く売っていただけませんか~?、と。
そうだ、
聞くのはタダだ。
ノックしなければ戸は開かない。
コンコン。
ギ-。
…。
バックホーがあった当たりまで車を降りて歩いて行くと。
道脇に看板。
○×上下水道工事業者。
なるほど水道屋さんのようだ。
その看板の横にプレハブの事務所。
敷地に入ると声をかけた。
あの~。
いますか~?。
返事が無い。
…。
事務所のドアが見える。
ドアにはいろいろな張り紙が風でヒラヒラ。
…。
そのドアに、
ゆっくりと近づき、
コンコン。
返事が無い。
意を決してドアのノブを回し、
声をかけた。
あの~…
部屋の奥のにオヤジさん。
意を決して聞いた。
裏にあるバックホー使ってますか?。
ん?欲しいか?。
ハイ?、動けば…、安ければと…。
動くけど、ゴムキャタ切れとるで~。
…。
キャタピラが切れているのは見て知っていた。
そして、キャタピラはつなげれば使えると思ったのだ。
いくらでゆずっていただけますか…?。
ん~、15でどうだ。
十五万?。
そうだ。
買った。
15万で。
…。
さらに話していると、
5トンバックホーを松林まで運んでくれるというのだ。
そして、
1週間後、
赤松林の片隅に、
片側のキャタピラが切れた、
5トンバックホーが届いていた。
エンジンもかかった。
動かすと問題なく動いた。
切れたゴムキャタを外し、
業者に運んで接続してもらった。
値段はなかなかの値であった。
…。
それでも、
これで、
心強い怪力仲間ができたのだ。
…。

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