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「適度な運動とは?」
一日24kmを歩き周り動物を狩る事とパソコンに向かって一日仕事をする事、
あなたにとってどちらが大変だろうか。また、消費カロリーはどちらが多いだろうか。
おそらくどちらも前者と答える人が多いだろう。
しかし、驚くべきことにこのどちらの活動も消費カロリーも同じなのである。
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例えば、東アフリカにある「ハヅァ族」は現在も狩猟生活を行っており、
絶えず動き続けている数少ない民族である。
この民族の研究において、現代人と消費エネルギー総量が変わらない事が判明した。
ハヅァ族(Hadza or Hadzabe)[3]はタンザニア中北部の先住民族であり、大地溝帯中央部のエヤシ湖周辺と隣接するセレンゲティ(英語版)平原に住んでいる。2015年の時点で、タンザニアには1,200人から1,300人のハヅァ族が住んでいるが、伝統的な採食方法だけで生き残っているのは約400人のみである
また、「The Biggest Loser」というアメリカの番組があったが、
ここでは肥満者に体重を落とす様競わせる内容であった。
だが、結果をみると(運動量によるカロリー消費量を考慮すると)
本来20kgは体重が落ちていなければならない程の運動量であっても、
男性では5kgの減少、女性では体重の変化が見られなかった。
さらに継続していくと最終的に体重の減少はどちらの場合も見られなくなったのである。
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なぜ体重の減少が見られなくなったのか。
それは「総エネルギー量を維持する様(ホメオスタシス)に体がコントロールする」からに他ならない。
この「総エネルギー」とは大きく以下の3つに大別される。
①基礎代謝:体温維持・心臓や呼吸など生命維持のための最低限必要とされるエネルギーであり、60%を占める。
②食事誘発性熱産生:栄養素が分解される際に一部が体熱となって消費されるエネルギーであり、10%を占める。
③身体活動による消費エネルギー:運動と姿勢を保持することなどの日常生活活動に消費されるエネルギーであり、30%を占める。
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一日総エネルギー消費量の多くは安静時基礎代謝量(約60%)ですが、それに加えて食事誘発性熱産生(約10%)・NEAT(家事などの日常生活活動などの非運動性活動non-exercise activity thermogenesis)ならびに運動消費量(合わせて約30%)などが加わります。NEATは肥満との関連性が指摘されています。
例えば、運動量(③)を増やした場合一時的に全体の消費カロリーは増加し、痩せる事はあるかもしれない。
しかし、継続して行うとホメオタシスにより「総エネルギー量」を維持しようと基礎代謝(①)を下げてしまう為、消費カロリーは変わらず結果として痩せる事には繋がらないのである。
「厳格なカロリー制限+激しい運動」によって体重を急激に落とすと、
消費エネルギーを抑えカロリーを維持しようとする為、逆効果となるのである。
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もちろん、運動は私たちの体に必要である。
気分転換の役割やストレスの軽減、炎症や病気の抑制など、さまざまなメリットが存在する。
しかし、できる限り消費カロリーを抑え、ため込む事をしてきた600万年の狩猟の歴史を考えれば、現在の環境はほんの1万年以内に過ぎず「運動をしたく無い」と考える人が多いのもごくごく自然な事であると言える。
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今の我々には近距離でも遠距離でもない、適度な距離感を保った運動が求められているのではないだろうか。