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第10号

 気づけば梅雨を迎え、あっという間に紫陽花の色もピークを終えて、疲れ果てた色へと変わっていく。

 僕のバイト先には38歳の先輩がいる。つい最近、その人と長く話す機会があった。話しによると先輩は35歳にして自分の夢を諦めたらしい。自分に限界を感じて、貯金額の35万を見た時に潮時を悟ったのだとか。しかし、先輩にはまだその夢が亡霊として居続けていると語って居た。亡霊、なんとかっこいい響きなんだろう。どんな趣味でもつまみ食いで終わる僕、亡霊を見るほど何かに没頭し続けた事など一度もない。ふと、夢について考えた。何号か前の話しで、好きなことについて語っていた。その時僕は好きなことについて「好きなことは、一つを選ぶ為の通過点に過ぎないという事、選ぶことは、悔いのない人生を歩むのが難しいから、少しでも自信を持って生きれる様にする為の行為である事」なのだと解釈をしていた。しかし、彼は自信を持つ為にその一つを大事に育てた結果、芽が出なかったのだった。それが、やがて亡霊になって彼の前に現れる。夢や好きなことを追う事が物凄く苦しいと先輩に教わったような気がした。

 話は変わるのだが、最近スカイダイビングをしに行ってきた。上空3900mから落ちる様はまるで隕石の様だった。意外にフワッという、あのジェットコースターなどの感覚(落ちていく感覚)は飛び降りた後10秒ほどしかなく、そこから飛び降りている1分ほどは空気圧に打つかりに行っている様な感覚だった。物凄く刺激的な体験ができた。自分には、亡霊が出るほど夢中になり、人生までも狂わせるような好きとはまだ巡り会えて居ない。だからこそ果てのある時間を使って、自分の好きなものをとことん探していくのだなと考えたのだった。

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