【詩】知らずに歩いて

知らない町で知らない道を
目的もなく歩いていると
思うのです

この道を右へ行くべきか左へ行くべきか
そんなことに正解はないのだと

おもしろそうな道を選べばいい
楽しそうな道を選べばいい
なんとなく心惹かれる道を選べばいい

知らない町で知らない道を
目的もなく歩いていると
思うのです

それでもなお、正解などなくても
人はどちらかを選び歩いていく
選ぼうとせずとも選んでいる

左に行けば出会えた人
左に行けば見られた景色
そんな可能性を知ることもなく
人は右の道を歩く

選ばずに選んだ道に足跡をつけ
それは思い出となり人生となっていく

重要そうに思える人生という分岐を
人は選ばずに選んでいる

選ばずに選んだその選択さえ
選択の一部であると見なすのならば
生きているということそのものが
選択の一部であるように思えます

人知の及ばない選択の連続を生きる時
人はどう生きるべきでしょうか

善く生きるとは、
善い選択をすることでも
自らの選択を善いものにしようとすることでもないように思います

選ばずに選んだ無数の選択が
自分にとって後ろめたさや悔いのない
堂々と天の陽を浴びられるような
そんな生き方が善いのではないかと思うのです

知らない町で知らない道を
目的もなく歩いていると
思うのです

目的もなく歩いていたはずが
なにかに導かれるように
目的に巡り合うことがあるのです

喉が渇いた時に飲む水が美味しいように
疲れた時に入るベッドが心地よいように

必要とする何かに、そして
必要とされる何かに導かれ
巡り合うことがあるのです

知らない町で知らない道を
目的もなく歩いていると
思うのです

知らない道を恐れなければ
迷うことさえ恐れなければ
そこに道は続いているのだと
すでに道は開けているのだと


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