見出し画像

自分が大切にしたい願いは「自分で選ぶこと」と「イキイキさ」|沖縄の親子向けワークショップ

世界の児童労働をなくす活動をしているNPO法人ACE。
沖縄で貧困や不登校、引きこもりなどの子どもや若者の居場所支援をしている沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい。

この2つの団体がタッグを組んで取り組んでいる、子どもの権利を広く知ってもらうプロジェクト「沖縄うまんちゅ子どもの権利推進プロジェクト

このプロジェクトの一環で、昨年は支援者向けのワークショップを担当したが、今年は利用者である親子向けにワークショップを実施。過去に、他の事業で何度か沖縄の貧困問題に関わってきたが、他の地域と比べて沖縄の状況は特に切実で過酷だ。


沖縄の貧困問題に意識を向ける

日本全体でも貧困率は年々増加し経済格差が広がっているが、子どもの貧困率全国平均が16.3%のところ、沖縄は29.9%。約2倍という深刻さ。
ちゅらゆい代表の金城さんがある記事でおっしゃっていた言葉「沖縄で子どもたちと向き合って思うのは、他の地域と比べて貧困の闇が深いこと。それはあの戦争で受けた傷が今も沖縄に重く深く残っているからではないか。」に、激しく同感。

この問題は、個人の課題ではない。日本の戦争の痛みを、丸ごと引き受けざるを得なかった沖縄。それは過去の話では全くなく、今もなおその流れが脈々と息づいている。

目の前の課題ももちろん大切だが、何が今の現状を引き起こしたのか、私たち日本人全体が意識を向けて、その構造を理解し、自分ごととして向き合っていく重要なテーマだと強く感じる。

大人も子どももみんなで一緒に耳を傾ける

これまで壮絶な状況の中で生きてきて、ちゅらゆいさんの覚悟ある愛のサポートを受け、少しずつ笑顔を取り戻してきている参加者の親と子どもたち。
スタッフ、そして親子一緒にこのような場を持つことは初めてとのことで、最初は何をやるのか不安そうな表情の大人たちと裏腹に、ワクワクした表情でやってきた子どもたち。

自分を知るという「自分研究」

自分の感情が教えてくれること。前向きな気持ちも、後ろ向きな気持ちも、どんな感情があってもいい。その奥には必ず、自分が欲しかった大切な願いがある。大人も子どもも、これまで誰にも聞いてもらえず一人でのみこんできた「命の声」にみんなで一緒に耳を傾ける。

お母さんの、心の奥にある願いを見つけようとする子

デモンストレーションとして、自分の感情が動いたできごとを話してくれた母親、Sさん。そして、Sさんの願いを一緒に探してくれる人を募集したところ、真っ先に「はい!」と手を挙げた末っ子Yさん。ニーズカードを1枚1枚ゆっくり丁寧に噛み締めて、母親の奥にある願いを探していく。みんなが一通り出し終えてもなお、粘り強く集中して真剣に真剣に探し続ける。Yさんのお母さんへの愛がひしひしと伝わってくる。

Yさんがお母さんに渡したニーズの1つが「愛」。理由は「いろいろ嫌な気持ちになることもあると思うけど、誰かに愛されているって思えたらやっていけるから。」

参加者みんなも、それぞれのペアになって大人と子ども、それぞれの願いを探していく。

内省を深めて涙を流したお母さんと、寄り添う子

Sさん親子のデモを、食い入るようにじーっと見つめ「これ、おもしろい。。」と話していた母親、Aさん。今度はAさん自身のニーズを探究していく。

Aさんが選んだのは、「自立」「支え・助け」「希望」

「私はダメな母親でまだ自立できていないから、、自立できるようになりたい。そのためには支えが必要。」と話すAさん。

「Aさんの理想通りに自立できたら、何が満たされますか?」と聞き、一緒に内省して、たどり着いたのが「自己価値の承認」

「そうか。。私、自分にもっと自信が持ちたかったんだ。自己価値の承認、これが欲しかったんだ」。はっとした表情でカードを見つめるAさんに、Aさんがいかにこれまでがんばって生き延びてきたか、今親子共々生きていることがいかにすごいことか、諦めずに希望を持ち続けてここまでやってきた自分を承認してほしいと伝えると、振り絞るようにぽろぽろと涙が溢れ出てくる。

その横で娘のAちゃんが嬉しそうにお母さんを見つめている。お母さんの涙が、悲しい涙ではないことをわかっている。小3のAちゃんにはちょっと難しめの内容なのに、飽きることなくその場にい続け、お母さんから離れず、お母さんに次々とニーズカードを選んで渡していた姿が印象的だった。

社会から身を守るためにつくられた「ロール」と向き合う

そして後半。社会から身を守るために作っていった自分の「ロール(role)」と向き合う。

「ロール」は、とても大切なもの。だけど「ロール=自分そのもの」ではない。必要な時は使えばいい。でも「ありたい自分」は自分が決める。周囲から貼られた「ラベル」や身につけた「ロール」で、自分の価値を決めない。自分の価値は、自分が決める。

ただ生きるのではなく、意図を持って生きる。
自分がこの人生で満たしたい大切な願い。
その願いを自分の内側にしっかりと持ち、「ありたい自分」を意図して生きることで、パワーが出てくる。

最後に、大人も子どもも「こうありたい」という願いを選び、その願いを意図として持ち続けられるようにお守りを作成した。

晴れやかなチェックアウト

3時間。
小学生にとってはかなり長時間、誰一人飽きる様子を見せず、みんながずっと集中して場にのぞんでいた。みんな晴れやかな表情で、一人ずつチェックアウト。

母親のデモに参加した小6のYさんは、自分が気にしていたロールを自分から破り捨て、ありたい自分として「自分で選ぶこと」と「イキイキさ」を選んだ。そんなYさんのチェックアウトの言葉は「自分の気持ちを知ることができてよかった」

自分がこの人生で満たしたいニーズとして「挑戦」と「支え・助け」を選んだ小4男子のS。終了後、私のところに自分からやってきてハグ。「挑戦し続ける人生を自分で創っていこう!Sなら絶対できる!!」と伝えたら、力強い表情で強く頷いていた。

チェックインで「昨夜ほとんど眠れなくて…」と話していたSのお母さんが、涙を浮かべながら最後に選んだニーズは「気楽さ」と「祝福する」。どんな時も、Sの成長と挑戦を祝福できる自分でいたい、と話していた。

会場を出て、車で空港へ向かうまでずっと手を振ってお見送りしてくれたAさん親子。娘のAちゃんは、まるで「お母さんに寄り添ってくれてありがとう!!」と言っているかのようだった。

沖縄に後ろ髪を引かれて・・・

自分に正直にとてもまっすぐに生きている皆さんと出会い、私も全身全霊で魂込めてつながり、心揺さぶられ続けた今回の沖縄。

あるがままの自分を受容してもらえる安心安全な居場所がある。
だからこそ、未知なるものへ挑戦していける。
新しいものを創造していく意欲が湧いてくる。

子どもの権利を守るとは、どういうことか。
いや、子どもだけではなく、
すべての命の権利を守るとは、どういうことか。

このプロジェクトに関わってからずっと、自分に問い続けている。

他者の「LOVE(あるがままが受容される)」と「POWER(自己実現)」を奪わないこと。
そして、
自分自身の「LOVE(受容)」と「POWER(自己表現)」を高めること。

尊い命が安心安全に守られること。
その上で、自分自身もまた、自分の命を愛し、自分のパワーを「願い」から生きるために使っていけるように。

大人も子どもも誰もが、「安心」があるから「チャレンジ」できる社会へ。

感謝の言葉

過酷で難しい環境にある命を守り、育むために活動されているちゅらゆいさん

1つ1つの大切な命が尊重されるようにと願いが込められた安全な居場所と温かい食事、昼夜問わずいつどんな時も共にいてくれる愛溢れるスタッフ。生活困窮世帯にはそれを無料で提供しているちゅらゆいさんに、ただただ頭が下がる想いでいっぱいだ。

今回も、こちらが学ばせていただくことばかりだった。
これからも自分に何ができるかを問い続け、この尊く愛おしい親子たちとの出会いを深く胸に刻んで、望ましい未来へ向けて一歩ずつ進んでいきたい。

興味・関心を持たれた方は、こちらから寄付ができます。

活動を漫画にした書籍はこちら。
居場所をください 沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち


最後に、ACEのみなさん

今回は、一緒に場を提供するチームとして動いたACEメンバーの進化っぷりがもう、すごかった!!
7年ほど前から組織開発に関わり続け、勝手に仮社員?みたいな仲間の気持ちでいるACEだが、最初の頃に出会ったメンバーが、今では愛とパワー全開にどんな命とも真っ正面から向き合っていく姿が最高にステキだった。

ACEの活動に興味がある方は、こちらからぜひ。






この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?