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彼は親友

今日は高校の卒業式。

桜が咲くにはまだ早いが、
窓から見える裸の桜の木には
春を待ち望む蕾が膨らみ始めている。


窓側の1番後ろのこの席は、
僕のお気に入りの席だった。


ここから見渡す教室の風景も
窓から入ってくる心地よい風も
今日でお別れ。

教室でいつもふざけてばかりの猿渡も
物静かにいつも自分の世界にはいっている桐山も
噂好きの有田の姿も

明日から同じ景色はもうない。


そして、大好きなの君の横顔とも今日でお別れ。

あまり笑わない君でも、
彼氏の前では頬を赤らめ
口元を押さえながら声を弾まる。


僕は、君に気が付かれないように
いつもそっとその横顔を見てきた。


その笑顔は、僕に向けられたものじゃなくて、
いつも僕の親友を目の前にしていた。

正面の笑顔は彼氏に向けている笑顔なんでしょ?
じゃあ横顔は……?

横顔だけでも僕が好きでいいよね?


そう思って1年が過ぎ、
やっぱり告白できそうにない僕は、
君と僕の親友の幸せを祈るから

最後に言わせて。


耳にはいつも以上に
みんなの笑う声が聞こえていて、
誰もがこの瞬間を名残惜しんでいるかのようだ。


同じ春を待つ桜の木を見て呟いた。


「君の横顔が好き。」

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