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超短編小説

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ショートショートを随時まとめています。※作品は全てフィクションです。
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2023年4月の記事一覧

【超短編小説】 置き忘れたもの

【超短編小説】 置き忘れたもの

「よくここが分かったな」

山下がベンチに座っていた。

「缶チューハイ飲みながら、夜に公園にいる奴なんてお前ぐらいだからな」

「お前も飲むか」と山下が酒を勧めてくる。

「悪いな、有難くいただく」

「ここに来るとさ、ムカついたことも消えていく気がするんだよ」

「どうだろう、俺はあんまり変わらないな」

「なあ、あのビルの灯りは、いつになったら消えると思う?」

「さあ、まだ働いてるんだろう

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【超短編小説】 割り算は苦手です

【超短編小説】 割り算は苦手です

「ねぇ、神様なんているのかしら」

コーヒーを片手に彼女は話しかけて来た。

「どうだろう。居るのかもしれないし、居ないのかもしれない」

「あなたは、どこか分かったようなふりをしている気がするわ」

「そうだろうか」

「そうよ、もっとはっきり言って欲しい」と彼女は答えを求める。

「うーん、そんなに単純ではないんだよ、きっと。物事が分かりやす過ぎない方が良いような気がするな」

「どういうこと

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【超短編小説】 雪だるまさんが連れて来た

【超短編小説】 雪だるまさんが連れて来た

「こんなところで何をしてるの?」

「待ってるの」

「もう遅いから、家に入りなさい」

「嫌だ!もうすぐだもん。昨日、雪だるま坊主、作ったもん」

「天気は変えられないのよ」とママは呆れていた。

すると、急に風が冷たくなった。

「あっ、降ってきた。やったー!雪だ雪だ」

「この季節に雪が降るなんて」

街は季節外れの雪に見舞われた。

四月の寒さに人々は困惑していた。

しかし、この少女だけ

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