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【超短編小説】 割り算は苦手です


「ねぇ、神様なんているのかしら」

コーヒーを片手に彼女は話しかけて来た。

「どうだろう。居るのかもしれないし、居ないのかもしれない」

「あなたは、どこか分かったようなふりをしている気がするわ」

「そうだろうか」

「そうよ、もっとはっきり言って欲しい」と彼女は答えを求める。

「うーん、そんなに単純ではないんだよ、きっと。物事が分かりやす過ぎない方が良いような気がするな」

「どういうこと?」彼女は尋ねる。

「つまり、分からないこともどこかにあるってことさ。いつまでも割り切れない割り算を解き続ける感じ」

「割り切れない割り算ね。いつまでも余りが出てしまう」と彼女はつまらなそうな顔をした。

「そう言うものなんかじゃないかな。神様だって、割り算は苦手だろう」

「それは、あなたの推測ね」(完)