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【書評】『自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界』

ASD女子の世界へようこそ!


【基本情報】

  • 著者:サラ・ヘンドリックス

  • 役者:堀越英美

  • 出版年:2021年10月30日初版発行/2023年3月30日3刷発行

  • 出版社:株式会社河出書房新社

  • ページ数:全349ページ

【読書のきっかけ】

本書とは

「ASD女子の特徴に特化して
書かれた本は無いだろうか?」

と探していた時に出会いました。

私自身もASD女子なので
ASD女子の特徴や生きづらさがどんなものか
普段Xで言語化して発信しています。

私もまた
ASDに由来した生きづらさを感じながら
日々を送っており

普段ASDの解説書や専門書を読んでいますが
ASD女子に限定した専門書や解説書は少ないと感じます。

著者のサラ・ヘンドリックスさんも
ASD女性の一人。

彼女もASDの診察を受けた当初
医師から「発達障害に見えない」
と言われた過去を持っています。

本書はサラ・ヘンドリックスさんが

様々なASD当事者の女性達に取材して
そこから見えたASD女子の複雑さ
解説したものです。

【気づいたこと・感じたこと】

ASD女子は見過ごされやすい!

ASD女子の特徴は一見して
「ASDと分からない」が挙げられます。

その理由としてASDが
男性だけの障害と見なされてきたこと

特性の複雑さカモフラージュが得意
といった特徴が起因しています。

歴史的にASDを含む発達障害は
長らく「男性」だけの障害
見なされてきました。

女性の発達障害の報告もありましたが
知的障害も伴うケースがほとんど

発達障害の特性を持っていても
言語能力や知的能力がASD男性よりも高いため
ASD女子は見過ごされてきたのです。

さらに診察基準や
ASDの基本行動パターンは主に男性基準です。

ASDの診察基準が男性向けなため
ASD女子の行動に
当てはまらないパターンも結構多く

ASD女性を取りこぼしやすい
結果になっているのです。

ASD女子の研究は男子の基準に当てはまった
数少ないASD女子のサンプルから
結論を出されているケースがほとんどです。

ASDの基準が男性基準であることを
私も本書を通して初めて知りました…

またASD女子とASD男子は

行動パターンは多少共通していても
向けられる興味や関心が違う
という特徴があります。

例えばASDの特性の一つである
「限定的な反復行動」だと

  • 時刻表を読み込んで暗記する

  • 電車などの名前を全て暗記する

  • 同じものをずーっと眺め続ける

などが挙げられますが
ASD女子の場合

  • 特定のものをコレクションする

  • 人形を集めても遊ばずただ並べる

  • 同じテレビ番組やDVDを繰り返し観る

  • 同じ本や漫画を繰り返し観る

コレクションを集めたりセリフを覚えたり等
「限定的な反復行動」を見せる傾向が
あるそうです。

ASD女子だって生きづらい!

自分のことを男の子とも女の子とも思っていませんでした(頭では、自分が女性であることは知っていましたが)。どちらかといえば、自分はアンドロイドかエイリアンだと認識していきました。みんなには見えないものや人生の真実が見える自分は、同級生とあまりにも違いすぎていて、自分が人間であるはずがないと思ったのです。

本書第3章「この子は何かが違う」p95より抜粋

本書はASD女子の特徴について
書かれていますが

私にとっても身に覚えがあったり
親から聞いた小さい頃の私の特徴に
一致したりするものが多かった
ので

「分かる分かる!」と読みながら
何度も頷きました。

例えば…

  • 同じ本を繰り返し読んで文章を丸々暗記する

  • アイコンタクトが苦手だった

  • 空想の世界に入り浸るのが好きだった

  • 読書ばかりする

  • 友達を独占しがち

  • 周囲に乱暴なふるまいをしてしまう

本書は著者のサラ・ヘンドリックスさんが
取材した様々なASD女性やASD女子の証言
紹介されています。

彼女達の抱える苦悩や生きづらさには
共感するものが多い
です。

小さかったころは、社会の規範に無関心すぎて、自分がどれだけ変わっているかも、自分が「正しく」やれていないことにも気づいていなかったと思います。でも、大きくなるにつれて、自分は人と違っていると感づくようになり、なんとしても好かれたいと思うようになりました。

本書第5章「変わっていく身体と複雑な友人関係」p115より抜粋

その中には
私自身も覚えのある経験談
ありました。

ASD女子の生きづらさは
ASD男子と比べると

  • 発達障害と気づかれにくい模倣の高さ

  • 大半が大人しく物静かで問題行動が目立ちにくい

  • 「女性」という性のレッテルを貼られやすい

  • 礼儀正しさと他人を思いやる優しさを求められる

ことも大きいんじゃないかなと感じました。

【まとめ】ASD女子の生き方

回答してくれた人の多くが早くから高度な発話があったことを考えると、少なくとも私のサンプルでは、女の子たちは幼少期からコミュニケーションや言語、言葉を求めていると思われる。(中略)ASDの女性は男性よりも著しく少ないと報告されているにもかかわらず、ASD分野での著作の多い有名な著述家(特に自身の体験を語る著述家)の多くが女性であることは、決して偶然ではない。おそらくASDの女性には、生まれながらにして人に伝えたいという気持ちがあるのだろう。

本書第3章「この子は何かが違う」p75より抜粋

本書は海外で出版された本なので
日本の文化や環境とは違っている部分も
多少あるなと読みながら感じました。

しかし海外の発達障害女子の悩みも
一環して共通しています。

発達障害女子は日常生活を送る中
様々なライフイベントで躓くことも多いですが

それでも

自分なりに工夫しながら
発達障害の特性と向き合いながら

生きています。

最後にこれは一番大切だなと感じた箇所を
引用してしめくくります。

女の子にASDはないという思い込みのレンズではなく、ASDのレンズを通して、これまで示してきた証言を見てほしい。本書の証言によって、女の子の特性がASDの診断において明確な証拠になりうるという考えが広まることを望む。

本書第3章「この子は何かが違う」p96より抜粋

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