大谷津紗和

詩、散文、ひとり言

大谷津紗和

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最近の記事

ところてん

皿や バターや 照明 ところてん 塩こしょう 合い挽き 休憩所で 待っています 好みのひとを 教室に忘れてきた 私は ワタシ 秘密の部屋は あなたの部屋 休憩所で 待っています ひとつの形は 押し出され 数えられる数へ それは嬉しいことと思う 少し 私の鞄はちいさい 休憩所で 待っています 母の鞄は 私を 産むまえから ぱんぱん ひとつの形が ひとつのままなら 好みで 愛しやすい 増えてないけど 増えたみたい

    • 知らない人

      私は誰のことも知りません 知ったつもりで そこにある若葉の名前を叫んでいました 誰のことも知らないうちに 湿度と 触れそうな よわい光を頼りに その名を呼んでいました 盲目なのでしょう やさしいものを頼りに 姿を探していました ある記号と 顔を見ればあなただ けれどもあなたを探します 一瞬香ったなにかのようなあなたの背筋を 皮膚の下で何度も探します

      • みんな未亡人

        わたしたち生まれる前に 伴侶を海に流されたんです あなた それはもう海の底 もう鯨の体のいちぶ 馬鹿馬鹿しいでしょ それがいのち

        • ねぇ

          ねぇこの影が、ここから反対に向かうまで、 キスをしようよ

          誰かが書いた元素記号

          共感されやすい幸福を求める気持ちと、共感されにくい幸福を求める気持ちが両方ある、空腹のとき私はいつも饒舌になる、隣にくる黒色のために真っ白を用意したり、汚い色をわざわざ持ってきたり、そんなこといつまでやっているのと私の友人は笑っている、気がする、けれども彼らは変わらずにうつくしい、時間が経つのはとても早い、坂道は下るほうが大変なのに、これ以上テクノロジーは発展しなくてもいいのにね?と思うけれど、私たちは進むしかないみたい 悲観も夢のうちのひとつ、1人に2つ眼球が与えられるのと

          誰かが書いた元素記号

          文学フリマ東京38 5/19に出展いたします。

          詩集「トゥルーの立体」 5/19(日)文学フリマにて販売します。 1冊 500円です。 【東京流通センター 5/19 12:00~17:00】 ボンレスジャム/ せ-57 (第二展示場 Fホール) 入場料 1,000円 入場料がいやな方や当日行けない方で、もしご興味があれば、連絡を頂ければ直接郵送をいたします。 よろしくお願いします。

          文学フリマ東京38 5/19に出展いたします。

          悲しみのあとに…

          悲しみのあとに選ぶものが パイナップルの缶詰でも、いいんじゃない?

          悲しみのあとに…

          赤い科学

          花が綺麗だと思うわたしが綺麗だと 思う正午 魔法瓶は魔法じゃなく 科学 知ったあの日から 私は真実を求めた けれど小さく あなたは小さく 小さくて 遠くへ 血に似た何かは仕方ないほど温まらない まま 厚い皮膚を残す 守っているのか 諦めたのか 彼方で知ろう 遠くへ 行きなさい 少し急いで遠くまで 行きなさいもっと 遠くへ

          この星

          いつかこの星は滅びるから 僕たちはさっき消えた 街灯の光とおんなじ でも僕はその光を見た 見ていた 覚えている いまも覚えている 反転した明暗 残像を覚えている 覚えていると言い切れないことを 覚えている もちろんあなたのことも 忘れてしまったけど 覚えている 僕の言葉? 僕の怒り? 僕の網膜? 大丈夫 ここにいる 僕はこの星にいる 依るべない夢の上に

          攻撃と防御

          刃物を振るわれたら 必ず防御をしなきゃいけない というのは 一体どこの誰が決めたんだろう 武術であれば防御も礼儀だけど 僕たちは素人で プロレスをしている人はいない 対話をしているんだ 君が刃を振り上げたときに 僕は攻撃だと思わなかった それは言葉だった 君の言葉だった 君からすれば 僕が攻撃だったんだろう 僕じゃなくても 誰にでも 君の刃は 僕には 眩しい告白に思えた はじめて君が口を開い瞬間だ 誰かが守れと言う 生き物なら守り生き延びろと けれども僕は 人間だっ

          激しい運動会のあと 全てのセットが消え去って 演者の誰も居なくなった風の吹く午後 目を閉じるとなぜか 混沌と静寂が矛盾なく成り立つ景色があった 少ない言葉しか持たない私は それを表す術を知らない 調べても仕方ないことは分かっていたから じっとして旗が倒れるのを待った 記号が落ち着くのを待った そのうち夜は 生者たちと添い寝する支度をして 皺をつけたまま乾いたシャツにまごころを思い出す ある真実は自分だけのものだと言い切るために買った切花が 小さくなってゆく 全部に土を混ぜたよ

          わたしは赤い、あなたは青い

          わたしは赤い あなたは青い 愛というものが天国の代物だとすれば みんな落ちぶれた天使で わたしたちはただ家に帰りたい 愛を手に入れるための法則を 丁寧に読む 本物の天使がわらっている ような気がする わたしはただ 地図を読んでいるだけだ 晴れた日のあなたの額の 素知らぬ肌色 の上を踊る繊維 あなたは赤い わたしも赤い 太陽のおかげで赤い 何かのおかげで青くなることはない わたしがそのとき 青かったというだけ あなたも青い わたしも青い プラスチック製で

          わたしは赤い、あなたは青い

          ふやけた飛行機雲

          時間の経ってふやけた飛行機雲は 下手くそなパイロットのせいだと思っていた やれやれ 下手くそのくせに空なんか飛びやがって ため息が出る 校庭で 途方もなく感じられる時間を走った 男の子の大きい声 女の子の小さい声 生まれてはじめての恋心は 砂ぼこりに隠れて静か でもだいたいは あいつが持っていく いいけど これだけはあげない その他はあまり怒らないけど これだけは お前にあげない

          ふやけた飛行機雲

          いいよね

          遣る瀬無い日が、続きますね もうノートに書かなくても、忘れないことが、たくさん、それが、魔法じゃないといいよね、それが、本当だといいよね そんなに急いで、大人にならないでね 待ち合わせの時間に、遅れないでね 格好悪くても、いいよね 格好つけていたいひと、もういないから、いいよね 行き止まりがある方が安心できること、あなたは気がついた、それが、道の途中だったらいいよね、それが、悲しかっただけなら、いいよね パジャマで出掛けても、いいよね 少し遠くても、いいよね

          人間のための街

          人間の用意してきたところの中に、鯛が泳いでいる筈がない、僕は人間のことが嫌いではない、信頼をしていないのだ、都市には昼寝をする場所などなく、立ち上がって歩き回るか、じっと座っている他にない、人間のための街に、葉脈の輝きは要らない、あったとしたら、人は正確に狂えなくなってしまう、人間のための街に、やさしい光は要らない、目が覚めてしまう、人間のための街に、蒼い香りは要らない、死臭に気が付いてしまう、人間のための街に、帰りたい家は要らない、僕が、僕になってしまう、この街で、僕が僕で

          人間のための街

          愛撫

          愚かであることを誰かと確かめたい 哀れであることを貴方とはしゃぎたい 静かであることを教室でも感じたい 幸せであることを帰路で知りたい ひとりであることを黙ったまま寝たい 欲しいものを隠さずに伝えたい 恥ずかしいことを1人だけに教えたい 寒がりであることを気づかれたい 無知であることを見守られたい 好きであることを許して乱れたい 嫌いであることを許して騒ぎたい 落とし物と死後で待ち合わせたい