人間のための街
人間の用意してきたところの中に、鯛が泳いでいる筈がない、僕は人間のことが嫌いではない、信頼をしていないのだ、都市には昼寝をする場所などなく、立ち上がって歩き回るか、じっと座っている他にない、人間のための街に、葉脈の輝きは要らない、あったとしたら、人は正確に狂えなくなってしまう、人間のための街に、やさしい光は要らない、目が覚めてしまう、人間のための街に、蒼い香りは要らない、死臭に気が付いてしまう、人間のための街に、帰りたい家は要らない、僕が、僕になってしまう、この街で、僕が僕ではないことで、僕はこの街では、葉脈であり、光であり、蒼さであり、家なのだ、この街に来て間もなく、それが僕の役割だと知る、大きなものの一部、大きなものの中のたった一つの静けさ、脆さのために、僕は在る
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