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問いと対話から「本音」を探る。プロマネが語るDXの成否

「『世の中、もっと本音で会話しようぜ』って、すごく思います」

企業の事業変革を支援するFabeeeの中核事業「バンソウDX」で、冨塚辰さんは、コンサルティングとプロジェクトマネジメントを担当しています。

前身となるプロジェクトから参画し、問いと対話を重視するという、バンソウDXの強みを、自らの実践とともに作り上げてきました。DXの実現には、職場の「本音」が重要。そう語る冨塚さんに聞きました。

本音から、どんなものが生まれてきますかーー?

「問い」が引き出す本音

ー 冨塚さんは、バンソウDXのプロジェクトマネジャーです。企業の変革に向けたシステム構築をコンサルティングしたり、新しいシステムの導入サポートをしたりしています。

冨塚:
システム開発といえば、まず顧客の要件を伺う「要件定義」から始めるものですが、バンソウDXでは、あえてやりません。

未来はこうありたい、という姿と、現状のギャップを埋めるのがDX本来のあり方ですが、人は慣れ親しんだ習慣をなかなか手放せないものです。ゆえに、DXといっても、現在の業務の形態を新しいシステムに落とし込んだだけのものになってしまいがちです。

顧客の思考に沿う「要件定義」のアプローチでは、現状の課題を解消するという域を超えるものを生み出すことは難しい。しかし、グローバルスタンダードを目指すなら、システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるという思考が必要です。

だからバンソウDXのメンバーは、ひたすら「問いかけ」を重ねていきます。専門的な領域でも「素人質問ですがーー」を枕詞に、分け入っていきます。

「業務プロセスはこれでいいと思っていますか」
「素人な質問ですが、なぜこうなっているんですか」
「将来、どういうことをされたいと思っていますか」

問いかけから働く方々の思いや言葉を探り、本当はこうしたい、という本音まで掘り下げていく。とても非効率に見えますが、業界の慣習や障壁、打開策を見つける上で非常にうまく働くし、顧客の視野を広げ、企業が内側から変わるきっかけになると実感しています。

ー バンソウDXで顧客に問いを投げかけ、対話を続ける冨塚さんは、自身も本音がベースのコミュニケーションをとってきたといいます。

冨塚:「世の中、もっと本音で会話しようぜ」って、すごく思います。

誰からも意見や指摘がないまま、どんどんプロジェクトが進んでいること、よくありませんか? みんな、本当に納得して進めているのかな、と思うんです。誰しも持ってるんですよ、本当は分からないことって。でも、周りの様子を見て、あえて質問せずにいるだけじゃないか、と。

分からないことや気になることを放っておけない性分で、小学校の時から手を挙げて、率先して質問していました。単純に自分のモヤモヤを解消したいから。周りにどう思われるかなんて、全然気になりません。

バンソウDXで担当した事例でも、自分の特性と問いかけが本音を引き出し、変革につながったことがあります。

国際物流企業のDX支援だったんですが、パソコンで作った書類をわざわざ印刷して、各部署に承認を回す仕組みが長年続いてきたと聞いて、「素人な質問ですが、連絡手段に紙やFAXを今も使っているのはなぜですか? ウェブではできないんですか? システムで共有できないんですか?」と質問しました。

問いかけを重ねるうち、担当者も徐々に本音を語るようになってきました。「業界全体が古い体質で、DXにはアレルギーがあるんですよ」という言葉が出てきました。僕は、こういう、ものすごく人間くさい本音を聞くのが大好きです。

ここからなんです。「じゃあ、その制約を踏まえた上で、どう進めますか?」と次のステップを一緒に考えられるから。

とはいえ、こちらの提案をすぐに受け入れてくださらないこともあります。この時も、担当の方は「そうですね」と同意しつつも、しばらく導入をためらっていました。慣れ親しんだ方法を変えることへの不安も当然あったと思います。

この時は「いったんやってみませんか。デジタル化されても仕事が回らなくなることは絶対にありませんから」と粘り強く説得し、導入していただきました。だいぶ効率化されて、経理担当の方に「紙のままがよいと思っていたが、導入したほうが仕事しやすくなりました」とおっしゃっていただけました。

業務に慣れすぎて、見失っていることは僕自身にもあります。顧客と対峙する時、僕が見えている範囲だけで議論してものを作っても何も変わらないと自戒するようにしています

外部のコンサルティングで変わるというより、対話と問いかけから気づきを得て、顧客自身が中から変わっていくのが一番いいです。そのために本音ベースの問いを重ね、「こんな風に改善できます」と提案し、僕たちが試作して、変わったときのイメージを示して納得していただくプロセスを大事にしています。この積み重ねで顧客の発言量も増え、変化を前向きにとらえ始めてくれる。その表情を見られるのが、バンソウDXの大きな価値だと思っています。

広告制作からデータサイエンティストへの越境

ー 大学で数学とコンピュータサイエンスを専攻。同級生の大半が大学院に進学する中、広告代理店に就職しました。

したいことがはっきりしていたわけではなかったけれど、早く働きたい気持ちが強かったんですね。で、広告代理店に就職しました。大学で学んだこととは違う分野でしたけど、父が働いていたこともあって、関心があったんです。

クライアントとクリエイターを橋渡しして、制作を進める仕事で、いくつものプロジェクトを同時に進行させていました。忙しかったけれど、多様なクリエイティビティに触れられたのはよかった。

転職を考え始めたのは、新型コロナウイルスの流行が始まって、人との触れ合いが急に減ってから。明確な転職先のイメージはなかったけれど、今までの仕事はやりつくした、環境を変えたい、今までと違うことがしたいーーと。コテコテの理系だったし、広告制作の「顧客」だった事業会社で働いてみたい、という好奇心もあって、マーケッター、アナリスト、データサイエンティストなどの採用面接を受けました。

1か月ほど経った頃、Fabeeeの「データサイエンスグループ」でのDX事業への採用を勧められ、2021年に入社しました。

データサイエンティストの仕事は、半分エンジニアみたいなものですし、周りを巻き込んでプロジェクトを進めるという今の仕事も、前職とつながっています。

「本音の会話」から生まれる感情がこみ上げる仕事

冨塚:
メンバーには恵まれています。バンソウDXのメンバーは皆前向きに議論するし、理解力や解決能力も高い。そして圧倒的に作業が早い。濃い密度で仕事ができています。

マネージャーの僕が旗を振った方にみんなが進むのではなく、「この方がいいよね」「こっちのほうが良くないですか」とたくさん本音で語り合って、みんなで納得して青写真を描きながら、作業を進めます。その分、作業量や頭を使う量は圧倒的に多いんですが、本音の議論から生まれたこれまでの変革実績を振り返ると、このスタイル抜きに僕らの価値を語ることはできない、というくらい大事なものだと思っています。

顧客への問いかけや対話も、時には最初から納得や合意を得られない状況からスタートすることも少なくありません。でも、積極的に対話を進めていくという姿勢は失いません。

こうして関わってきたプロジェクトは、プロセスも含めて自分たちの「作品」だと思っています。プロジェクトがもたらす成果ももちろん大事だけど、どちらかというとそこに至るまでのプロセスの方が、DXに取り組んだ企業の自信につながると思っています。

バンソウDXのチームには、議論に積極的に向き合える人が向いています。「よし、やろう」と積極的に進められる人。顧客を巻き込み、一緒に未来を作るために 前向きな思考を持っている人。「議論よりもコードを書きたい」というタイプは厳しいです。エンジニアっぽくないエンジニアがバンソウDXのチームには合っているのかもしれません。
若い頃はやるべきことをスムーズにすすめなければいけないという気持ちで仕事をしていましたが、今はむしろ感情もプロセスもグチャグチャになることがあったっていい、いわゆる「タスクをこなす」の対義語みたいな、そんな仕事をしたいものだと思っています。後で振り返った時に、何かしらの感情がこみ上げるような。

【略歴】
冨塚辰 北海道大学 理学部数学科卒業。広告代理店で制作管理を担当し、2021年8月にFabeeeにデータサイエンティストとして転職。現在は、「バンソウDX」のチームマネージャーとして、全体の統括と顧客企業へのコンサルティングを中心に担当。

★屋内撮影場所:SPACES新宿





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