夏目漱石の『こころ』をレースで紡いで。ふたりの物語を語るハンカチタオル
夏目漱石が綴った名著『こころ』に登場する、「私と先生」「先生とK」「私と父」。彼らの間に存在した象徴的なモチーフを、まるで物語を紡ぐようにオリジナルレースに仕立て、別れを想起させる白いタオルハンカチを縁どりました。
みなさま、こんにちは! 歴史と読書が好きなフェリシモ「ミュージアム部」プランナー・ささのはです。
みなさまは学生時代、国語・現代文の教科書や問題集に載っていたおはなしで、好きだった作品はありますか?
私は新美南吉の「ごん狐」、あまんきみこの「白いぼうし」、有島武郎の「一房の葡萄」、室生犀星の「幼年時代」、川端康成の「雨傘」など……教科書と問題集のおかげで様々な名作に出会い恋に落ちたのですが、その中でも夏目漱石の『こころ』は、大人になっても時々読み返してしまう、非常に印象に残った作品です。
夏目漱石が綴った『こころ』は、明治時代を舞台に描かれた長編小説です。「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の上中下三部の構成で書かれた作品で、発表されてから100年以上が経過する現代になっても、新たな解釈が生まれる謎多き名作でもあります。
『こころ』にはさまざまな魅力があれど、登場人物たちの間に流れる一言では言い表せないような感情や関係性も、本作が持つ絶大な魅力のひとつではないでしょうか?
そして何より、魅力的な登場人物たちの葛藤や精神のあり方は「物語の中で彼らに訪れる別れ」をより印象的なものに見せているように思えます。
読む人の心にいつまでも刻まれる『こころ』の登場人物たちの魅力を、新しい形状に出力してみたい……。
そんなことを考えたプランナーが、試行錯誤の末に「私と先生」「私と父」「先生とK」の間に存在した象徴的なモチーフを、まるで物語を紡ぐようにオリジナルレースに仕立てあげました。
そして、物語とレースの魅力を最大限に味わうために作り上げたタオルハンカチを、どうぞご覧ください!
切ない読後感もやさしく拭いとれるタオルハンカチ。
ハンカチを縁どるオリジナルレースデザインの詳細を、ご紹介いたします。
【先生とKを隔てた襖】
学生時代の先生と、その友人・Kの下宿先の部屋を隔てていた「襖」をメインモチーフにオリジナルレースを作り、タオルハンカチを縁どりました。
〈先生とKを隔てた襖〉のレースは、襖に用いられる和紙の種類から着想を得た「鳥の子色」と、物語の舞台である明治時代に流行した「栗梅色」の糸で仕立てています。
せっかく選ぶからには、糸の色には出来るだけしっかりと意味を持たせたい……そう考えて、2色のうち片方の糸色は「色名にまつわる花言葉」も踏まえて吟味しました。
「栗梅色」……つまり栗と梅について調べたのですが、栗の花言葉には「私に対して公平であれ」、梅の花言葉には「高潔」「忍耐」「忠実」というものがあるそうです。
Kの生き様と精神のあり方を感じさせるような言葉に思えて、レースの糸色への採用を決めました。
【私と先生が交わした手紙】
主人公・私と、先生が交わした「手紙」をメインモチーフにオリジナルレースを作り、タオルハンカチを縁どりました。
〈私と先生が交わした手紙〉のレースは、漱石が執筆の際に好んで使っていたというインクの色から着想を得た「セピア色」と、物語の舞台である明治時代にはじめて日本に伝来した「わすれな草」の花の色の糸で仕立てています。
わすれな草の花言葉は「私を忘れないで」というのだそうです。なんだか「先生」が「私」に書き残した言葉そのままではありませんか。
【私と父がさした将棋】
主人公・私と、病床にある主人公の父親がコタツで指した「将棋」をメインモチーフにオリジナルレースを作り、タオルハンカチを縁どりました。
〈私と父がさした将棋〉のレースは、将棋の駒の材料として有名な「ツゲの木」に着想を得た色と、物語の舞台である明治時代に生まれた色名「紫紺色」の糸でレースに仕立てました。
「紫紺色」とは、天皇即位の礼の幡(旗やのぼり)にも使われた、紫草の根で染めた色のことを指します。
紫草の花言葉は「弱さを受け入れる勇気」だそうで……自らに静かに近づく最期を受け入れた、主人公の偉大なる父親に敬意を表してこの色を選んでみました。
綿100%のタオルハンカチ部分が、名作を読む際こぼれる涙をやさしく受け止めます。
もちろん外出先でも大活躍。
『こころ』のタオルハンカチは、本を愛する人たちにそっと寄り添ってくれるアイテムになること間違いありません。
みなさまの生活を、より素敵に彩ることができるのを楽しみにしております。
~もっと作家・作品に触れたい方へ~
実際にプランナーが訪れた、
作家ゆかりのミュージアムその他の紹介コーナー
・新宿区立漱石山房記念館(東京・新宿)
夏目漱石が晩年の9年間を過ごした跡地につくられた記念館。偉大なる文豪の人生、人柄や交友関係、彼が生み出した作品の魅力について学ぶことができます。
館内に再現された漱石が執筆活動をしていた書斎は、全国から集めた数枚の写真を元に完全再現したのだそう。
・博物館明治村 森鴎外・夏目漱石住宅(愛知・犬山)
明治時代の建築物を保存展示している野外博物館。大切に保存されている建物のひとつに、漱石の旧宅があります。
なんとこのお宅、漱石が借りる以前には『舞姫』『高瀬舟』などを執筆したことで知られる森鴎外が住んでいた時期もあったのだとか!
・道後温泉(愛媛・松山)
漱石の代表作のひとつ『坊ちゃん』の舞台となった、愛媛・松山にある温泉地。作中では主人公が道後温泉本館の湯壺の中をのびのびと泳ぎ回り、ある日「泳ぐべからず」の看板を貼りだされてしまうというシーンがあります。
ちなみに道後温泉本館・男湯の方には今も看板が貼り付けてあるとの噂も……。
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