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ソフトウェアにおけるUIサウンドをデザインする時に考えるべきこと

アプリやWebサービスのUIデザインを行っていると、サウンドが必要になることがしばしばあります。
多くの場合、外部のサウンドデザイナーに発注することになるかと思いますが、その際どのように発注すべきかを抑えておいて損はないと思い、ここに書き留めます。

※ここで言うUIデザイナーは、主にアプリやWebサービスなどのソフトウェア開発に関わるUIデザイナーを指しており、ゲーム制作や機械製品に関わるUIデザイナーではありません。

UIサウンドとは

UIサウンドは聴覚を使った非言語型のため、
認識速度が早いことと万国共通であることが特徴です。
例えば、仕事中にslackでメッセージが届いたとして、通知音を聞けば「slackにメッセージが届いた。」ことが瞬時に理解出来ます。
また、ユーザー以外の周囲の人にも同時に知らせることが出来ます。これは、目で見るUIにはない特徴だと言える反面、ユーザーの置かれている環境や状況などに左右されやすいため、一歩間違えると不快感や不安感を与えてしまう恐れがあります。

UIサウンドで得られる効果

UIサウンドを有効的に活用することで、以下の効果が期待できます。

・ブランド価値の向上
Macの「ッゾーーーン..」など、音だけでプロダクトやブランドを認知させることが出来ます。これらはサウンドロゴと呼ばれ、会社名や商品名などにメロディやサウンドを付けることで宣伝効果を高めるブランド手法です。

・利用体験の価値向上
重要な瞬間を強調したり、感情的な状態を呼び起こしたり、お祝いを表現したりすることで、単なるタップという操作をより価値のあるものにする効果があります。ユーザーが操作することによって得られた嬉しい瞬間を演出する際に効果を発揮します。

・使いやすさの向上
フィードバックや状態変化を音で提供することにより、操作のわかりやすさや、安心感を与えることが出来ます。

しかし、これらの効果を発揮させるためには、しっかりとした調査や発音設計を行う必要があります。

UIサウンドを使用する際の原則

Material Designでは、UIサウンドの原則は「有益性」「誠実性」「快適性」と定義されています。

・有益性
直感的で、機能的で、理解しやすいものでなければなりません。
・誠実性
製品のブランドアイデンティティと美学を忠実に表現するものでなければなりません。
・快適性
快適さと安心感を生み出すべき- 必要な時だけ行動を呼びかけます。

この原則に従うことで、前述の効果を得ることが出来ます。

サウンドデザインのプロセス

ソフトウェアにおけるサウンドデザインのプロセスは、以下の機械製品におけるユーザーインターフェイスのプロセスを参考にすることが出来ます。「製品開発者」の担当となっている部分は、UIデザイナーが担当するべきでしょう。

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引用元:操作系機器におけるユーザーインターフェイスの快音設計 - UIサウンドデザインのプロセス

対象調査

対象調査は、音をつける対象となるサービスを理解するために非常に重要です。
・ターゲットユーザーの把握
・ユースケースから想定する周辺環境と間接聴取者の状態の把握
・現状UIの調査
・課題の把握
・機器の調査

UIデザイナーであれば上記の大半は、サウンドデザインを考える段階では完了しているはずなので「ユースケースから想定する周辺環境と間接聴取者の状態の把握」を中心に行うべきでしょう。

発音設計

まず、想定するターゲットのユースケースにおいて音が本当に必要であるかを考え、音を利用するかしないかを決定します。
ソフトウェアでは、多くの場合サウンドは不必要(ディスプレイに表示されるUIで事足りる)であることが多いため、ここでしっかりとユーザーにとって本当に必要かどうかを考えるべきです。

その上で必要と判断した場合は、発音目的と発音頻度に沿ってサウンドに明示レベルを定めていきます。以下は、機械製品における明示レベルですが、ソフトウェアにおいても参考に出来ると考えます。

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引用元:操作系機器におけるユーザーインターフェイスの快音設計 - UIサウンドの明示レベル

また、Material Designでは、ヒエラルキーという呼び方でサウンドの重要度が定義されています。

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引用元:MATERIAL DESIGN - Sound choreography

アプリやWebサービスなどのソフトウェアでは、これらを組み合わせることで、最適な明示レベルが定義出来るのではないかと考えます。
以下は、自分なりに両者を組み合わせた図になります。明示レベル5は基本的に存在せず、明示レベル1〜3、4に偏る形になります。
これは、ソフトウェアはハードウェアに内包され、その中で1つの機能を担う存在であるからです。

また、使用を想定されるデバイスによっても聞こえ方を変える必要があります。PCであれば基本的に屋内で集中して使用されるケースが多いですが、スマートフォンの場合、公共の場所で使用されるケースを考慮する必要があり、PCよりも明示レベルは低く設定すべきです。

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ソフトウェアの発音設計では、想定デバイスやユーザーの環境、使用目的などを考えた上で、適切に明示レベルを調整する必要がありそうです。

イメージコンセプトの構築

これは、サービスのコンセプトを元にトンマナを決める方法とほぼ同じだと考えます。
通常、ビジュアルデザインでは「クール」「プリティ」「高級感」「ナチュラル」などの形容詞や感性ワードからコンセプトを定めることが多いと思いますが、サウンドデザインにおいても同じです。
むしろデザイントンマナを定める際に使用したワードや、コミュニケーションコンセプトを元に、サウンドコンセプトを定めるフローが良さそうです。

サウンドデザイン

サウンドデザイナーに発注するために、サウンドコンセプトと作成するサウンド一覧を提供することで、スムーズに発注することが出来るでしょう。

評価

実際にプロトタイプなどに組み込み、操作した上で評価するのが良いと考えます。
以下について特に注意し、評価することでサウンドの効果を発揮することができます。逆に少しでも違和感を感じたり、デメリットを感じた場合は、即座に修正または音の削除を行うべきです。

・操作時、発音時に違和感がないか
・周辺環境や間接聴取者へ悪影響を及ぼさないか
・ユーザーへのデメリットにならないか

まとめ

実は、私自身UIデザイナーになる前にコンポーザーをやっていたということもあり、今回UIサウンドという題材について取り上げてみました。

UIサウンドは、有効活用すればUXを格段に向上させる反面、一歩間違えると逆効果となってしまいます。使用するかしないかの判断を慎重に行うべきであり、調査・発音設計にしっかりと時間をかけるべきです。
また、Hapticsについても考慮に入れる必要があるでしょう。周囲の人に知らせることなく操作のフィードバックをユーザーに伝えるだけならば、Hapticsで十分だからです。しかし、サウンドには機能的な面の他に、感情や意味を表現する力があります。
昨今、モバイルアプリではUIサウンドの実装が減ってきていますが、VUIの登場で再度注目されています。UIサウンドの重要性は、今後様々な新しいインターフェースの登場によって、どんどん増していくはずです。

参考

操作系機器におけるユーザーインターフェイスの快音設計
Material Design - Sound
進化するUIのサウンドデザイン、その静かながらも際立つ存在感
プロダクトのUIサウンドデザイン入門
アプリのUI/UXのためのSoundとHaptics Design

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