noteのVI刷新から考えるデザインの変遷
こんにちは。
建築写真や都市写真を撮っております、
フォトグラファーのゴトウ リョウスケです。
今回は、写真を撮る傍ら趣味の延長でグラフィックデザインをしたり、実は大学で経済や経営について学んでいたりする僕が気になったニュース「note上場とVI刷新」から、色々と調べたことをまとめつつ考えを巡らせていきたいと思います。
書きながらまとまりが無くなって不時着する可能性もあるなあと思いながら書き始めております。どうかお手柔らかに。
noteの上場とVI刷新
noteが2022年12月21日、東京証券取引所グロース市場に上場を果たし、それにあわせてVI(ヴィジュアル・アイデンティ)を刷新した。
今回のVI刷新企画は数々の企業ブランドを手掛けてきた日本デザインセンター代表の原研哉氏が担当し、ロゴデザインから、アプリアイコン、モーショングラフィックス、オリジナルフォントに至るまで新たに提案されている。
データファイルについてはnoteが公式で公開しているプレスキットを参照されたい。
VIとは
VIはVisual Identityの略で企業(商品やサービス、ブランド等を含む)の理念・ビジョンを視覚要素に落とし込み、何者であるかを一目で理解させるグラフィックスである。
グラフィックスにはロゴや商標、カラーコード、フォント、グラフィックパターンなどが含まれ、それらの設定に至るコンセプトや使用時の規定が定められている。
VIによって企業の理念・ビジョンを効果的にターゲットに周知し、信頼関係の構築や差別化に繋げることが主な狙いとなる。
VIの位置付けと変遷
そもそもVIはそれのみでは存在し得ない概念である。VIは前述の通り企業の理念・ビジョンといった概念の視覚化のフェーズであり、理念・ビジョンの存在を前提に成り立っている。
そして企業の理念・ビジョンを策定するフェーズにあたる概念をCorporate Identity、略してCIと呼ぶ。よってVIはCIから産まれた産物の一つであると言っていい。
CIの土台には企業理念や経営戦略などのビジョンが含まれる。おそらく大半の企業のHPを覗けば、経営者の言葉や企業情報とともに企業理念のスローガンやキャッチコピー的なものが掲載されていることを確認できるはずだ。
CIはもともと1950年代のアメリカで生まれたもので、マスメディアの発展によってマスメディアを通して社会に向けて企業を宣伝するという選択肢が生まれたことから重要視され始めた概念である。
日本で初めての本格的なCI計画を仕掛けたのは自動車メーカーのマツダだと言われており、1980〜1990年代にかけてのバブル経済の影響も受ける形で、数々の企業で取り入れられていくことになる。
そして2000年代になるとBRANDING(ブランディング)というマーケティング戦略として取り込まれ昇華されていくこととなる。
モバイルファーストデザインの流れ
マスメディアの発展によって勃興したCI計画とその後のブランディング戦略であったが、それによって数々のVIが、つまりグラフィックスが生み出されていった。
そして、コンピューター技術の発達に伴いデザインは自由度が増し、画像やロゴへはドロップシャドウ、立体加工、グラデーションなど様々な視覚効果が施され、差別化が図られていた。
しかし現在、その流れには変化が訪れている。きっかけはスマートフォンを基点とするモバイルメディアの発展だ。
これはBloombergが今年の4月に公開したブランディングに関する動画だが、ここでは、インテルやトヨタ、ファイザーといった大企業が次々にロゴを簡素化しているというロゴの簡素化トレンド=DEBRANDING(デ・ブランディング)について語られている。
そして、この背景には”モバイルファーストデザイン”の圧力があったと結論づけている。
コンピューターやディスプレイの発達に伴い、グラフィックスを加工し複雑化することが容易になっていた。しかし裏を返せばデザインに過剰なインフレーションが起こっていたとも捉えられる。
近年、スマートフォン等のモバイル端末に表示することの優先順位が相対的に高まったことで、
小さな画面上に収まりつつ視認性を保つこと
インターネット上での読み込み時間とデータ量の圧縮をすること
これらの工夫としてロゴデザインのミニマル化、シンプル化が進められている。
このように”モバイルファーストデザイン”を目的に、デザインの簡素化を行いつつブランディングを行う、デ・ブランディングが直近のトレンドの一つだと考えられる。
デジタル庁のデ・ブランディング戦略
このデ・ブランディングの概念は日本行政のDXをすすめる司令塔であるデジタル庁でも取り入れられているように見受けられる。
デジタル庁のHPに飛ぶと前述のCI及びVIがきちんと設定されていることが確認できる。
そして注目してほしいのがデジタル庁のロゴである。ロゴは「デジタル庁」(英語では「Digital Agency」)の文字が書かれているだけで、そのフォントもオープンソースの”Noto Sans”が用いられているというミニマルっぷりである。
カラーも基本的には白(#ffffff)を基調として黒(#252020)を用いるのみで、あとは最低限のアクセントカラーとしてのRGBが用意されているに過ぎない。
これには
と書かれており、デジタル庁のスローガンである”Government as a Startup”を体現したVIが設定されていると言えるだろう。
このようにデジタル庁においてもVIのグラフィックにおいて、デ・ブランディングの概念が取り入れられていると捉えられる。
別件ですが、デジタル庁がマイナポータルのアップデートに向け、実験版を公開しているので今後の便利な世の中のためにも是非見てみてください。
UIもミニマル化
デ・ブランディングに見受けられたデザインのミニマル化は、グラフィックの領域に限らず、スマートフォンのOSやアプリ、webサイトなどのUIデザインにも見受けられる。
例えば、iPhoneのiOS。
一昔前はSkeumophism(スキューモフィズム)と呼ばれるリアルに近いテクスチャを基調としたUIだったものが、その後はFlat Design(フラットデザイン)という立体感や質感を排したUIを基調としつつも直感性を高めるような工夫がなされている。
アプリにおいても、Notion / Spark / Google Calendar / Slack / Spotify / NETFLIX / Instagram など僕がよく使うこれらのアプリも、フラットデザインを採用したものが前提になっている。
さらにそれらのアプリはVIとしてのカラーを持ちつつも、アプリ内でその色を多用することはなく、基本的には白ベース(ダークモード設定時は黒ベース)で構成されており、違うアプリを開いていても統一感を感じられるようになっている。
デザインと経営
今回はnoteのVI刷新のニュースから派生してデザイン周りで色々と調べたことや考えたことを自分なりにまとめてみた。
メディアの変遷によって求められるデザインというものは今後も変わるだろうし、その波をうまく乗りこなして経営戦略とフィットさせる役割を担う人はどんな企業においても重要だと思う。
そしてそれを理解している人がきちんと組織内にいて、なおかつ影響力を行使できるレイヤーにいるか、ということがこの変化の激しい時代において求められている気がする。
そしてそれは、時代の変化によっていままで関係ないと思っていたBtoB企業や中小企業、もっと言えば地方自治体なんかも問答無用で対象になると思う。というかもうすでになっている気がする。
将来自分も順番が回って来たらそんな領域をカバーできるように頑張りたいと思う。
ということで、いろいろと横断的に調べ回った様子が伺えるnoteとなりましたが、最終的にデザインと経営の関係に軟着陸することで、あと3ヶ月程で社会人になる自分の糧となった気がします。ということにしておきます。