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どこにも行けない上海旅行③虹色の海上橋を渡る

どこにも行けない上海旅行、唯一の長時間移動はバスだった。
マレーシア人の集団と一緒にバスにぎゅうぅぅぅぅ、と詰め込まれ、みっちみちの4時間の旅。同行している集団はすべて仕事がらみの関係者ばかり、マレーシアの皆さんはチームで来ているのか皆顔見知り。座席に関係なく縦横無尽に爆音の会話が飛び交う。かと思えば急に爆音で陽気な中国語の歌や動画を流す。バスに乗った日本人は私一人、残りは若干の中国人(私のボス)。まさか中国人が静かだと思う日が来るとは想像もしていなかった。ちなみに我がボスはもともと超がつくシャイガイで物静か。この時彼はマレー人の騒々しさにややイラついた様子で、キッと後方をひとにらみすると愛用のearpodsを耳にぶっ刺し、Duoringoで一生懸命日本語を学んでいた…えらい。ちなみにボスのひとにらみは、マレー人の集団には全く効果をなさなかった。そんな道中、急にボスがくるり、と振り返るとニコニコしながら話しかけてきた(超レア)。

ボス 「nicoさん、この橋は中国で一番長い橋ですよ(適当)」
私 「あ、そうなんですか?すごいですね~!」
ボス 「はい。この橋は36キロもあるんです。ずっと海の上ですよ」
私 「へぇぇ~そうなんですか。すっごいですねぇ。ぅわぁぁ~」

正直そんなに驚かなかったのだが、ボスが話しかけてくること自体が珍しいので、全力の頷きと驚きで対応した。ちなみにこの杭州湾跨海大橋は、杭州湾を南北につなぐ約36㎞の海上橋。真ん中あたりにうみほたるのようなベースがある。

車内から一瞬だけ見えた海ほたる的な場所の先端。造作が中国っぽさ全開

海上に架かる橋としては世界3位なのだそう。まあ、十分にすごい。橋は確かに長く、海上特有の薄い靄に包まれていて何も見えない幻想的だ。少し行くと靄も晴れ、徐々に海の景色が見えてくる。海は波ひとつなくまるで大きな河のよう。はるかかなたの向こう岸もまだ見えず、ただひたすら何もない浮かんでいるような気分になる。

橋のスタート付近。靄で何も見えない
靄が晴れてきて前方の橋がうっすら見える。対岸ははるか彼方

中国・香港間を結ぶ港珠澳大橋は鳴り物入りで建設されたものの利用者が少なく閑散としているらしいが、こちらの橋は片側3車線、全6車線すべてに車がたくさん走っている。どうやらこの橋は大いに人々の役に立っているらしい。ところで、橋を鑑賞するにあたって最も重要なルールがある。それは、

『橋の上からではなく、橋が見渡せる場所から鑑賞せよ』だ。

橋の美しさは(あたりまえだが)橋の上からは大きすぎて眺められない。橋の形や造形ををめでるにはやはり橋が見える陸地から鑑賞するのがおすすめだ。ちなみに、橋の全景はこんな感じに美しいらしい。

中国政府HPより。
真ん中にある海ほたる的なやつ。素敵なページからお借りした画像。

この橋、往路復路を分ける真ん中に柵があり、この柵が(多分)一定の距離ごとに色分けされている。私は上海側からスタートしたのでまずは紫、次いで青、緑、黄色、オレンジ色、赤色…と6色まではカウントした。途中謎のマレー人に執拗に話しかけられ注意を削がれ(あとは寝落ちした)、もしかしたら1色見落としているかもしれない。だってどう考えても虹色っぽい設定だもの。帰りも同じルートをたどったのだが、帰路は諸事情により橋を通過していることすら気づいておらず、つまり再カウントはしていない。
この話好きの不思議なマレーボーイ、私が隣の席のマレーおじさん(初対面。通路側に座る私のためにカーテンを開けたりエアコンを調整したり、絶景を指さしたりと、とても親切に世話をやいてくれた)と談笑していると、会話に参加したかったのか、なんの前触れもなく会話に参加…いや会話を奪取した。そのままだいぶ食い気味にあらゆるテーマを投げかけてくるのだけれど、ウエストランドの漫才よろしく全部否定で始まり、否定を否定してはまた否定する…という、終盤はもう何を言いたいのか全く理解できない感じの会話を1時間続けた。途中まではいちいち合いの手を入れたり軽く反論したりしていたけれど、終盤は返事をするのも億劫になり、緩慢な相槌でやり過ごし、話が途切れた隙をついてすかさずイヤホンを耳に押し込んで終了アピールをすることになった。持論が明らかに事実と異なることも多々あったのだけれど、彼はいったいどんなソースから情報収集しているのだろう…情報のウラはしっかり取ろうね…と心の中でアドバイスしておいた。

36㎞の海上散歩の終盤、橋の両側に超巨大な工業地帯、杭州湾紹興工業新城区が見えてくる。距離感がおかしくなるような巨大な重機やコンテナの数々に圧倒される。何気にこの景色がこの海上ショートトリップ(無理やり)のハイライトでした。夜景もきっと美しいだろうな…写真を撮りたかった。さすがはコンテナ貨物量世界1位の上海と3位の寧波に挟まれたエリアだなぁ、とスケールの壮大さに圧倒されたのでした。






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